第11話 自覚(悪)前編

変な夢を見た。

家族で食事をする夢だ。

そこでは何もおこらずにただただ平和な時間を過ごす。

しかしここから狂い始める。

瞬きした瞬間に目に飛び込んでくるのは燃える家、聞こえる悲鳴、あざ笑う親戚。

そして殺される俺の家族。

俺が殺されそうになるところでいつも目が覚める。

いつまでも忘れられない12年前の記憶。

最近またよく見るようになった。

そういえば今日は珍しくあいつらが俺に顔出せって言ってたな。

準備はできてるしいいだろう。

「さてと、行くか」

新幹線の車内。

少し休息を取ろうと思い目を瞑る。

蘇る記憶。

『尊、君は一族の中で最も先代に近いものなんだよ。だから大きくなったら本家の方に向かうのが正しいんだ』

『あの子は関わらせないという契約のはずよ!!』

『あんな何処の馬の骨ともわからんやつと婚姻するからこうなったのだ!』

『この疫病神!!』

今なお憎しみしか湧かない親戚のカスども。

それも今日で終わるかもしれない。

一族を全員殺す。

計画に三ヶ月を使った。

証拠を消すことには手慣れたものだ。

正直、カスとしか言いようのない親族とそいつらの顔ばかり気にしている京都府警の奴らに捕まる気は毛頭ない。

証拠といえばあの子供も面倒だな。

中2からしつこく俺を付き纏わしてくる。

あんなガキも今じゃ小六か…。

時間の流れは早いものだな。

思えば奇妙なガキだった。

初めて殺した男、誰でもよかったものの綿密に計画して自分ができる最大限を用いた犯行だった。

すぐに別のやつが捕まり俺の完全犯罪が確立したと思った。

あの日、俺は二駅先の友人と遊ぶために駅で待っていた。

そこで見つけた子供。

ただのミステリー好きのガキかと思っていたがその時いた場所を思い出しゾクリとした。

殺した場所にドンピシャだった。

しかも声をかけた瞬間にあいつは躊躇いもなく俺の名前を聞いてきた。

なぜなのかはわからないがあの時、本能が撤退を呼びかけてきた。

あのカスどもよりも早い段階で明確な殺意が湧いた。

あれはこの先何かに関わってくると直感した。

思えばこれが全ての始まりだったのかもしれない。

これがきっかけで俺は殺したあの男を、

[平井裕斗]を一度洗いざらい調べた。

もともと繋がりがあった裏の人間も使い調べられる全てを調べた。

その後明確な動きを見せずにそのまま四年の月日が流れることとなった。

その間、俺は裏社会とのつながりを拡大させ、裏でフリーの殺し屋としての地位を確立した。

その時、平井の事件が進展を見せた。

大方の予想はしていたものの、捜査線上に俺の名前もあったので依頼主に相談し、殺害対象だった人間を犯人に仕立て上げ、辻褄が合うよう供述するよう脅迫し、再度警察を騙す。

この作業をしている最中だった。

裏でこんな噂を聞くようになったのは。

『東京のサツと仲が良いガキがいるらしい』

少し調べるとすぐにわかった。

あのガキのことだった。

やはりというか何というか、まぁ噂が広がる一年前に既に手は打っているし、正直それ自体は深く考えていなかった。

これがこの先俺の人生にどう影響するのかは知らないが、どうなろうが関係ない。

邪魔するなら全て壊せば良い。

あの一族のように。

そんなことを思っているうちに目的地の京都駅に着いた。

「さてと、そろそろ始めるか」

ここからは一寸の油断が死に直結する場所だ。

それでも構わない。

目的を達成できるのならここで死んでもいい。

「さぁ、革命の時間だ」






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