第10話 計画
皇の部下らしき人物に出会ったあの日から、約十ヶ月の月日が流れ、俺は小六になった。
あれ以来捜査は足踏み状態であり、進展のないまま約十か月が過ぎることとなった。
そして俺は今、この人生で一番の壁にぶつかっている。
小六最大にしておそらく大多数が最高と答えるあのイベント、"修学旅行"が近づいてきたのだ。
通常であれば喜ばしく、そして最高の思い出となるイベントなのだが、それは仲の良い友人がいるという前提条件があってのこと。
友人と呼べる人物が千桜ぐらいしかいない俺にとって、結構な辛い時間を過ごすことになる。
ただ消化するだけと考える人もいるだろうが、もちろんそれだけではない。
今年の修学旅行は、京都に行くことになった。
それはつまり、その間何一つ証拠を探すことができないということだ。
証拠集めもあと一息というところであり、できれば地元を離れたくないという考えがある。
しかし修学旅行に行かなければ今度は親が悲しむ。
流石にここまで色々お世話になっておいて小学校最後の思い出を作りませんは出来ない。
だからこそどうしようか悩んでいるのだ。
まぁ普通に行けばいいと言われればそれまでだが…。
『修学旅行くらいなんも考えず楽しむか』
これ以上色々考えても埒があかないので、素直に楽しむことにする。
しかし、その準備期間など時間はないわけではないため、その間に出来るだけ情報を集める。
最後の証拠である事件構築を立証させるために。
そして、準備期間が無事に終わった。
この期間中にやっておいたことは想像以上に多く、とても疲れた。
まず初めに鑑識課と話し合い、これまでの怪事件の詳細をできる限り閲覧させてもらった。
次に自分が持っている情報を組み合わせ、さらに鑑識課で特に仲良くなった田島さんと協力し、なんとか現段階でできうる事件の構築を行なった。
しかし、皇の方が一枚上手だった。
これで立証できるという一歩手前までしか証拠や情報が揃いきらず、なおかつ鑑識課や警視庁で保管している情報もこれが全てらしい。
俺の準備期間はあと一歩といったところで堂々巡りにあってしまったのだ。
そんなこんながあったわけではあるが、
無事に修学旅行が行われることとなった前日、
部屋で事件現場の構築を頭の中で行なっていた俺に千桜から電話があった。
「もしもし、今大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
「あのね、明後日の自由行動の時、よかったら一緒に回らない?」
俺は少し考えてから
「うん、良いよ。一緒に回ろう」
と言った。
千桜は嬉しそうにしながら電話を切った。
自室に戻って少し思い出に耽ってみることにした。
あの日。皇に殺され、二人に出会った。
よくわからない体験ではあったが、どうやら見守ってくれているのは事実らしい。
そして、桜の舞う日に、千桜に出会った。
この地元のことをよく知らなかった俺にいつも多くのことを教えてくれた。
情報収集の時も誰よりも協力を惜しまず、さまざまな情報を提供してくれた。
これだけ聞くと、俺の方が何もしていないと思うくらいに、千桜にはお世話になった。
せめて自由行動の時間くらいは、その恩返しをしよう。
楽しい時間を、彼女にプレゼントしてあげよう。
そう思い、その日は眠りについた。
そして迎えた修学旅行当日。
移動は全てバスでの移動ということになっていたため、あらかじめ渡された座席表の席に座る。
隣は千桜の次に仲の良い一ノ瀬だ。
情報収集の協力も行ってくれた小1からの数少ない友人と言える人物だ。
最初は物静かであまり表舞台に出るような人間ではなかったが、それが今は生徒会長なのだから未来はわからないものだ。
ちなみに千桜は副会長、俺は書紀のポジションでいさせてもらっている。
見た目もすっかり大人びてしまい、一ノ瀬君は今じゃ千桜と並ぶ学校の人気者となった。
まぁ顔もイケメンだし、モテるのも仕方ないのかもしれない。
そんなことを思っていると
「宗佑君は京都に興味がある場所はあるのか?」
と聞いてきたので
「金閣あたりかな。伏見も捨て難いけど」
と返すと
「やっぱりそこらへんだよね。見学は間宮さんと一緒に見て行かない?」
「良いよ」
そんな会話をしながら1日目の京都にある清水寺についた。
そこでのグループは決まっており、いわゆるガイドさんの指示に従って見て回るというものだった。
正直なところ、中学時代に一度行ったことがあるのと生前何度か行っていることを踏まえて説明が耳に入ってこなかった。
二ヶ所目である伏見稲荷大社では、予定通り千桜と一ノ瀬君と一緒に回ることにした。
この場所も何度かきているため、ガイド顔負けの案内をして千桜が驚いたようにしていた。ちなみに一ノ瀬君は流石だねと素直に褒めてくれた。
そんなことがあって1日目は終了し、一泊する宿に着いた。
この学校も例外ではなく、やはり消灯時間を過ぎても遊んでる男子が担任に説教をもらっていた。
時間は少し遡るが、消灯時間三十分前のことを少し書いておく。
千桜に呼び出された俺は何故かピンク色のオーラを出した女子たちに見守られながら千桜と話していた。
「明日楽しみだね」
千桜が白々しくそう言うので
「うん、そうだね」
こちらもとにかく崩さないようにしながら笑顔でそう返した。
「宗佑君は誰かと一緒に回るの?」
千桜がそう聞いてきたので
「千桜以外とは特に約束はしてないよ」
と返す。
すると千桜が
「明日ね、もしよかったら二人だけで回らない?」
赤く染まった顔でそう言ってきた。
そんな顔を見て一瞬理性がぐらついたことを後悔しながらも
「良いよ」
と返し、部屋に戻ることにした。
部屋に戻っていろいろ考えてしまったことを後悔している。
俺は正直性格もいいように振る舞っていなかったし、お世辞にも顔がいいわけではない。
何故だろうか。
そんな疑問をひたすらにぐるぐるさせるうちに消灯時間になってしまい、とりあえず寝ることにした。
どうも皆さんこんにちは、若者です。
投稿がとても遅くなってしまい本当に申し訳ありませんでした。
これで、修学旅行二日目が次回から始まります。
千桜ちゃんの恋の行方や皇との因縁など多くのことに触れたいと思うのでご期待ください。
では、また第11話で。
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