第8話 動揺

どうしてこうなったんだ。

俺は今、とあるキャンプ場のコテージにいる。

それ自体はなにも問題はない。俺が困っているのは部屋の状況だ。

俺の部屋には今、数人の女子が女子会を行なっている。

どうしてこうなったかというと…。



うちの学校では野外学習の一環として、小五の夏にキャンプを行うことが恒例行事となっているのだ。

今年もそれにのっとり、近くのキャンプ場でキャンプを行うことになった。

そこで問題となったのは、人数の余り。

どうやら部屋数と人数の比率的に、どうしても一人余るらしい。

そこに新型ウイルスの影響も相まり、部屋に入れる人数を増やすというのもできなくなってしまったらしい。

考えた末、OKを出した一人にだけ一部屋を全て貸すということにしたらしい。

ただし、それも大変だった。

聞いた生徒がことごとく拒絶したのだ。

当然と言えば当然だろう。

友達と四苦八苦しながら楽しく過ごす数少ない時間なのだ。

そんなことで悩んでいるところで俺にもその話が来た。

流れから察している人も多いだろう。

そう、俺がOKした。

それほど高いデメリットでもなかったし、自分で言ってて悲しくなるが俺は友人と言える人物が千桜ぐらいしかいないため、そもそも部屋割りというものに興味がなかったのである。

そんなこともあり、部屋割りの件は俺が了承したことによってことが済んだが、それが今回の原因にもなったので、今回は俺の失敗だったと後悔している。

どうしてこうなったのやら…。

そして当日。

順調にイベントを消化していき、昼食を作る時間となった。

メニューは大定番のカレーとサラダ。

普通に料理していると、一人の女子が声をかけてきた。

「今日はよろしくね」

なんだ?と思いつつそのまま調理を進めていると

「大丈夫?」

と千桜が声をかけた。

「なにが?」

そう返すと

「今日なんか理沙たちが女子会開くみたいなこと言ってたけど」

「理沙ってさっき話してたあの子?」

「そう」

「ふーん。…どこで?」

「宗佑君の部屋で」

「は?」

いや俺なんも許可取ってないしなんも言われてないんですけど!?

なんで!?

「ど、どゆこと?」

「やっぱり許可取ってない感じ?」

「取ってないもなにも話すら聞いてないんだけど」

「なんかごめんね」

「千桜が謝る必要ないよ」

「今日私も呼ばれてOKしちゃったから…」

「成る程」

それにしても女子会なんてなにやるんだ?

言っちゃ悪いが話す話題すら少ないような気がするが…。

「なに話すんだろ」

「いろいろ話すんじゃない?わかんないけど」

「恋の話題とかやめてほしいな〜、万が一話振られた時に困るし」

「そうだね」

そうして調理ははかとなく進んだ。

そして問題の夜になった。

予想通り千桜を含む数名の女子が俺の部屋に入り、校内の話などいろいろ話しはじめた。

三十分ほど話しただろうか、そうしたところで話題が恋愛の方に傾いてきたので、まずいなと思っていると

「宗佑君気分悪そうだけど大丈夫?」

と千桜が声をかけてきた。

『ベランダ行っていいよ』

小声でそう囁いたので

「うん。ちょっと気持ち悪くなってきてさ、ベランダで休めば大丈夫だから」

と一芝居打ってからベランダに出る。

ベランダではまだ夏の暑さが残っていたが、心地良い風が吹いていた。

内心で千桜に礼を言いつつ少し夜風に当たることにした。

十分ほど経つと女子たちが話すのをやめ、ぞろぞろと俺の部屋を去っていった。

それを見送り最後まで残っていた千桜に一言礼を言いその日は眠りについた。




城田が眠りについた頃、皇はとある廃ビルにいた。

彼の両親は早くに亡くなっており、親族もいないためこの時間に一人で行動することで起こる問題は何も無いのだ。

少し経ったあと、廃ビルに一人の男が現れる。

「何のようだ?」

「少し頼みたいことがあってね」

「いくら出す」

「あんたが一番ほしい情報、でどうだ?」

「…いいだろう。で、依頼内容は」

「皇は一枚の写真を取り出し、男に見せた。

「誰だこいつは」

「平井裕斗っていう男らしい」

「らしいってテメェ」

「俺も多く知らないんだ。興味本位で殺したただの男だからね」

「殺したんならいいじゃねぇか。こいつを調べる必要性はどこにある」

「先日、俺が仕立てた偽の犯人が無罪になった。それによって捜査が再開され、容疑者には俺も上がった。既に容疑は晴らしたが、少し気がかりな部分があってね」

「その気がかりな部分ってのは?」

「四年前、この件の経過観察に向かった時にガキと会ったんだ。その時はただの探偵もの好きのガキかと思ったんだけどね」

「ならいいだろ」

「話は最後まで聞け。そのガキが見てた場所が、俺が突き落としたちょうどピンポイントだったんだ。偶然にしては出来すぎてるレベルで見るところ全てが俺の手がかりに届きそうなとこだった。必死に隠さなければいけないくらいにな」

「成る程な。で、そのガキとこいつとどういう関係があるんだ?」

「そこを調べろって話だ。簡単だろ?」

「その話、乗った。大船に乗った気持ちでいな」

「頼んだぞ」

城田が動き出すように、皇もまた今回の件で動き出した歯車の一つなのかもしれない。







どうも皆さんこんにちはこんばんは、若者です。

今回のキャンプというネタは自分が小五の時になにしたかと振り返った時に真っ先に思い浮かんだのがキャンプだったということです。

女子会があったというのは自分の女友達からその当時の話を聞いた時に女子会をしていたという情報から発展させました。皇の動きもあり、いろいろ動き出すということで「動揺」動き揺さぶられるというタイトルにしました。

まだ夏の猛暑が続きますが、頑張って参りましょう。

それでは第九話で会いましょう。





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