第7話 進展

あれから四年の月日があった。

その間のことを話さなかった理由は単純だ、"何もなかったから"。

有力な証拠が出てくるわけでもなければ皇がらみの何かが起こったわけでもない、ただただ何もない四年間になってしまったからである。

ということで俺は今小五になった。

千桜との関係は良好だ。ただし前記した通りなにもなかったので当然進展もない。

報告しながらテレビでニュースを確認していると

「次のニュースです。坂本優馬容疑者の裁判で、

最高裁は証拠不十分として坂本優馬容疑者を無罪としました。最高裁はこの判決に対し…」

おもむろに流れてきたニュース。

その言葉を聞いた瞬間、俺の目は瞬時にそのニュースに向いた。

なんだって!?

四年間、停止していたままの歯車が、動き出した気がした。



学校に着くと教室はその話題で持ちきりだった。

当たり前だろう、近くの駅で起こった殺人事件の犯人が無罪だったのだから。

クラスの人間は犯人が誰なのかと言ういらぬ狸の皮算用をし始めて、担任にお叱りを受けていた。

俺にとっては相当の情報だ、なぜなら捜査が再開するのだから。

四年間、放置されたままこれでは自分の力だけで解決しなければと頭を抱えていた問題なのだ。

張り切らないわけがない。

俺は今後の行動を考えつつ、その日を過ごした。

そして週末、俺は再びあの駅跡向かった。

鑑識課が刑事とともになにやら検査をしている。

俺が見学をしたいと言うとしばらく悩んだ末、鑑識課の人が一人つくことを条件に見学を許してくれた。

まぁ普段なら入れないところに入れると言うのだ、それくらいの条件は飲まない選択肢はないだろう。そもそも勝手に来てるのは俺の方だし。

これで見るのは2度目だが、改めて生で見るのは違うと感じる。

そこに捜査の目が行き届いている状態である。

現場には緊張感が走り、俺も集中することができた。

俺は仕事の邪魔しないギリギリを狙って手がかりなりそうな箇所を再度見直す。

するとあることに気がついた。

すぐに分かりそうで、よく見なければ分からないところだが。

“血痕がないのだ”

線路に少しついている血痕ならまだしも、あれだけ派手に飛ばされて血を流しまくったというのにホームに一つも血痕がない。

俺はそばにいる鑑識にそのことを言うと

「よく気がついたね、そうなんだよ。普通、これだけ線路に血がついてるのに、ホームに一つも血痕がないんだ。こんなことになってる現場なんてほとんどないんだよ」

「ほとんどってことは他にあったってことですか?」

「うん。と言っても、ここの事件の結構後なんだけど、丁度この駅の近くの廃ビルで殺人事件があってね。すぐに犯人が見つかったんだけど、ここと同じ状況だったから一時期署の中で話題になったんだよ」

なるほど。

そんなことがあったのか。

おそらく俺がなにも進展せず頭を抱えていた時期のものだろう。

思わぬ収穫が取れた。

「さぁ、もう十分見て回っただろう。今日のところはもうおしまいだ」

「はい、ありがとうございました。とても勉強になりました。ところでなんですが、また来てもよろしいでしょうか?」

「うん、いつでもおいで。その時は、また案内してあげる」

「ありがとうございます。それでは、さようなら」

「はい、さようなら。気をつけて帰るんだよ」

「はい」

そんな会話をしたあと、俺はそのまままっすぐ家に帰った。



翌日、いつものように登校し、着席する。

「おはよう、宗佑くん」

「おはよう千桜」

いつも通りの挨拶を交わし、授業の準備をする。

なにも変わらない毎日、何か起こるわけでもない日常に、少し気が緩む。

そして給食の時間、クラスのバカ男子がいつも通り騒いで叱られている。

そうしていると担任が呆れたように

「そんなんじゃ、修学旅行でも苦労するぞ〜」

と言い放った。

ふむ、修学旅行か…。

興味がないのと余裕がなかったことが相待って、完全に忘れていた。

そういえば来年か…。

なぜ担任がこんな時期に修学旅行の話をするかと言うと、うちの学校は今では収束しかけてはいるものの、まだ油断ができない状況が続いている新型ウイルスの対策として、修学旅行を

小六の春に行くということで考えがまとまっているのだ、そのためこの時期にはすでに修学旅行の準備に職員が取り掛かっており、うちの担任も毎日忙しそうに電話をしている。

そういった話が出たところで

「宗佑くんは修学旅行楽しみ?」

千桜が声をかけてきた。

「楽しみだよ」

とりあえずそう返す。

嘘は言ってないのでそのまま押し通そうとすると

「何か考えてることでもあるの?」

千桜がそう言ってきた。

「どうして?」

俺がそう返すと

「だって宗佑君さっきからずっと難しい顔してるよ」

なんと。

そうだったのか。

周りにバレないようにしてはいたが少なからずそう見えるらしい。

いや、というか他の人間が言ってこなかったことを即答で答えているのだから千桜の観察眼が凄いだけなのかもしれない。

「修学旅行、どこに行くんだろって思っただけだよ」

とりあえず適当なことを言って誤魔化す。

「嘘ついてるでしょ」

なんでバレる!?

「ど、どうして?」

「あんなに先生と仲良しなのに、修学旅行の行き先を把握してないわけないもん」

…は?

どうやら勘違いしているらしい。

流石に俺でも修学旅行の行き先は把握してないぞ。

「で、なに考えてたの?」

「修学旅行でどんなとこに行くんだろって思って」

「そういうことね」

なんとか凌げたな。

小三になった頃から千桜が異常に俺の考えを読むようになってきた。

と言っても嘘ついてるのか少しわかる程度だが、ヒヤッとする場面はそれでもある。

今後は、考えを読まれないようにいろいろ考え直さないとな…。

そう思いながら、その日は過ごした。







皆さん今日は、若者です。

ここからは前話から四年後のお話になります。

その間を書かなかった理由は本当にネタがなかったです。

時系列もいろいろ飛んで混乱してしまうかもしれません。

誠に申し訳ございません。

また時系列解説の話も出すので、もう二、三話お付き合いしていただければ幸いです。

それでは、第八話でお会いしましょう。














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