第5話、右 理想(城田宗佑)
レクの後、俺は帰りの準備を整えていた。
今日は千桜と一緒に帰る予定であるため、待たせないように先に準備をしているのだ。
帰る支度が整ったところで
「それじゃ、行こっか」
千桜が声をかけた。
「うん」
そう返事を返し学校をあとにする。
帰っている途中、千桜はさまざまなことを話してくれた。
主にこの地域に関することだったが、俺は話しかけてくれていることを純粋に喜んだ。
最後は他愛もない話にまで発展し、家に帰った。
夕食を終え、部屋で今後の動きについて考える。
と言ってもやることは決まっていた。
味方を増やす、つまりは友達を作るのだ。
作り方は千桜が教えてくれた。
いろいろな人と話す。
言葉を上手く使って友好関係を築く。
この二つの手順を踏めばとりあえずクラスの人間とは仲良くなれるだろう。
どちらにせよまずクラスにうまく溶け込むのが先だ。
行動すべきことは決まった。
俺は明日に備えて眠りについた。
翌日、早速校内のあらゆる人に話しかけた。
同じクラスや上級生、教師に至るまでとにかく多くの人に話しかけた。
特に教師を味方にしたい気持ちは強かった。
なぜならより深い情報を聞けるからである。
教師は大人であるため、子供では聞き切れない
情報も簡単に調べられる。
そんなこともあり、教師を味方につけられるよう友好的に話しかけたのだ。
まぁ、半分は子供の挨拶ぐらいで聞き流されてはいたが。
俺はとにかく話しかけ、近所の人間にも情報を聞き出せる体制を整えた。
それをおこなって分かった情報は二つ。
一つはやはり疑惑をかけられているあの人が犯人だと言われていること。
もう一つは、“その日、もう一人その人の後ろに少年がいたと言うこと”。
二つ目の情報は有力すぎた。
少年とは皇のことだろう。
となると相手は巧妙すぎる手口を使ったようだ。
あの日、警備員から聞いたところ皇は事情聴取を受けていないようだ。
“犯人の後ろにいた”のにである。
これだけで相当相手が厄介なことがわかるし、その情報は証拠にもなりうるものなのだ。
やはり話しかけるだけでも得られる情報はグッと増え、さらに有力になる。
生前から友好関係は大切にしてきたが、こういう時にその大切さが身に染みる。
友人を作ると言うのは大変だがいざという時に役に立つ。
それを身に染みてで実感したのであった。
翌日、いつも通り帰る準備をしていると
「今日、一緒に帰ろ?」
千桜がそう声をかけてきた。
「いいよ」
別段用事があったわけではないのでそう返事をする。
「じゃあ行こう」
そう言ってきたので
「うん」
そう返事をしその日は学校を出た。
「どうしたの?」
帰り道の途中、そんなことを聞いてみた。
なぜなら帰ろうという誘いを受けたのはいいが話すネタがないのだ。
学校でのことを話そうにも今日は何か起こったわけでもないので話すことがない。
だとしたら何を話の種にするか、それはどうして誘ったのかくらいしかないのだ。
それに心なしか悲しそうな顔をしている。
どうしたのだろうか、そう思っていると
「城田君はすごいね」
突然そんなことを言ってきた。
「どうしてそう思ったの?」
そう聞くと
「まだ引っ越してきてそんなに経ってないのにもういっぱい友達作ってるから」
そんなことを言ったので
「そんなにすごいことじゃないよ。頑張って作ったわけでもないし、そういうご縁があっただけだから」
「それでもすごいよ」
「ありがとう」
そんな会話をしてその日は家に帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます