第8話 オキニスside③武虎への回答

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前回のあらすじ


武虎さんの回答を得る為に、

パンド国王と牡丹城へ。


そこで見たのは、

18年前に死んだはずの武虎さんが

液体入りの瓶に閉じ込められた姿だった。


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焔火「……あぁ、その通りじゃ…

18年前から、武虎が生き返る方法を

ずっと探している…


焔火国王は悲しげに笑みを浮かべ、

瓶に閉じ込められた武虎さんを見た。



焔火「……っ」


笑みを浮かべたのは束の間、

苦悶の表情になり頭を下げた。


焔火「18年間っ色々やった、

色んな国の呪文も術も使ってっ

だけど目は覚さんかったっ……

身体は生き返ったというのに……」


どうして…とか細い声で呟き、

ズシャッとへたり込み、

目には溢れんばかりの涙を流す。


その姿に俺は驚いてしまった。



「……焔火国王…」


息子の雛美火王子の裁判では、

項垂れたものの、

涙なんて見せなかった…


使用人の武虎さんに対しては、

取り乱して涙を流すなんて…


もしかして…彼は武虎さんの事を…




パンド「……焔火国王…貴方は…

何故、彼女を生き返らせたいの?」



焔火「……そんなの決まっておろう

儂が武虎を女性として好きだからじゃ

愛しているから……

…あんな無惨な最後…儂は認めたくない!!」


ガンッと地面に拳を叩きつけ、

その拳から血が滲み出る。

本気で彼女の事が想っている事が

分かった。



「…武虎さんの事…大切なんですね」


パンド「……そっか…なるほどね…

それでね!その武虎さんからっ…」


焔火「…だけど…この行為は、

儂の我儘でやっている…

武虎の気持ちを聞かずに…」


パンド「あのっ…焔火国王…」


焔火「なぁ、パンド国王…オキニス王子」


泣き腫らした顔で、俺達をみた。



焔火「武虎が儂に聞きたい事は、

【身体を返してほしい】という旨じゃろ

…身体が生きていたら、

転生なんて出来ないからな…」


パンド「…そ…そうだね…どっちかが生きてたら、転生はできないからね…」


あれっ…パンド国王の様子が

可笑しい…ぶるぶると体全体が

震えている?


焔火「……本当は嫌じゃが…

……武虎に身体を返す…


……種別とか関係なく、

生きている間に…好きだと

言いたかった……」


焔火国王が言い切る前に、


パンド「………あぁぁぁ!!

なに自己完結しているの!!」


突然、パンド国王が奇声をあげて、

会話をぶった斬った。



その様子に俺と焔火国王は、

目が点になった。

一体どうしたんだパンド国王?!


パンド国王は、顔を膨らませ、

ズカズカと焔火王子に近寄り、


パンド「これを見て!!」


バッと目の前に空色の付箋を、

突き出した。



焔火「……!!これはっ…」


パンド「武虎さんからのメッセージだよ!

読んで!!」


焔火「………あ…あぁ…わかった…」


空色の付箋を受け取り、

内容を読む、すると……



焔火「……武虎…儂もじゃ……

もう…これで充分じゃ……」


涙を流しながらも…

愛しむように、付箋に手をなぞり、

彼は嬉しそうに笑みを浮かべた。




…………………………………………


………………………………


………………………



パンド「………読み終わったかな?

焔火国王?彼女は貴方の事を想っているよ」


焔火「……あぁ…全部読んだ…

ありがとう2人とも…

これでもう…思い残す事は……」


パンド「はいっストップ!!

またバッドエンドに行こうとする!

もうやめてよね!そう言うの!


ねぇ…焔火王子?武虎さん

なんだけどさ…」


ゴホンと1つ咳払いをすると、

パンド国王は神妙な面持ちで、

こう言った。




パンド「僕の力で武虎さんを

生き返らせる事ができるよ」





……!!

耳を疑った…今なんて…


俺の聞き間違いじゃないかと思って、

焔火国王の顔を見た。


焔火「それは……本当…なのか?

パンド国王…」


焔火国王が目を見開いているので、

どうやら聞き間違えじゃなかった。



パンド「本当だよ!僕が2人を

バッドエンドに行かせる訳ないでしょ!

…でもね…生き返らせる為には、

必要な条件が2つあるよ。」


焔火「教えてくれ!武虎が生き返るなら、

儂はなんだってする!!」


パンド「分かった…じゃあ条件を言うね

それは…ーーーーー。」



武虎さんが生き返る条件を

聞いた焔火国王は…


焔火「たった『それだけ』で

武虎が生き返るんだな、

なら儂を使ってくれパンド国王」


覚悟を決めた表情で、

条件をのみこんだ。

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