第15話 赤く燃える桜貝町①



……………………………………………………


……………………………………………





ダージリン「オキニス様大変だ!

雛美火がこの桜貝町で

暴れているって!!


牡丹城から連絡が!」


「…………っ!!」


ダージリンの声と共に

戸棚をガラッと開いた。


ダージリン「真澄!良かった

無事だったんだな!

雛美火王子がお前を追いかけてるって


本当に心配したぜっ」


「ダージリンさん…

はっはい…実は…」


私は2人にこれまでの

経緯を全て話した。


・雛美火さんの様子


・牡丹城から雛美火さんに追いかけられた事


・黒夜ちゃんに助けられ、ここまで走ってきた事



「…という訳で自身で

ここまで…逃げてきました

本当に突然な事で…」


オキニス「雛美火王子が…

だからっ真澄はこんな夜遅く…

ここまで…」


「はいっ…でも私以外の

牡丹城の人々がどうなっているか

…みんな…どうか…無事でいて…」


ダージリン「………真澄…それなんだが…」


ダージリンさんが苦虫の

噛んだような顔をして、

口を開いた。


ダージリン「紅国王が雛美火王子に刺され、重体…国王を守ろうとした従者等は

……死者も出ている…


女性や子供は死者が出てないが、

怪我している人もいるってよ…


城は壊滅状態だ…」


「……どうして…」


城が壊滅…死者が出ている…嘘だよね…


じゃあ…母さんや蓬ちゃん…

それに翠狐さんに櫻海さん…

檸門さんは…


最悪な状況を想像して、

くらっと立ちくらみをしそうに

なった。


オキニス「……一国の王子がやる事なのか

…ふざけるな…家臣を殺すだなんて…

関係ない方まで巻き込んで…

女性や子供まで…


狂ってる…」



……本当に狂ってる…

彼は一体、何がしたいの?


何が目的なの?


なんで私なの?


……関係ない人を巻き込んで…


全部


全部……私の所為だ


私がもっと雛美火さんを

警戒していれば、仲良くしなければ…


きっと…


こんな事にならなかった。


こんな事に…


国王様が刺される事も…

従者さんが死ぬ事もなかった…


みんなが傷つく事だって…



「………ごめっ…ごめんなさい

私の所為で…みんなっ…」


オキニス「違う!!!」


「…グスッ…オキニス君」


オキニス君は私の手を強く握りしめ、


オキニス「真澄の所為じゃない!!

真澄は牡丹王国の為に精一杯、

頑張ったじゃないか!


何も間違っていない!


どうか自分を責めないで!!」

 


力強い言葉で私を奮い立たせて

くれた。


握られた手を上げ、

口元まで近づけ、


オキニス「今度は俺に守らせて下さい…

祈る様な仕草をしてから

私の手に「ちゅっ」と

音をたて唇を落とした。



「……はっ…はい…////」


手に唇の感触が////

一気に顔全体が熱くなった。


…さっき、抱き締められたのも

この行為も安心させる為!


自惚れるな私

…決して異性としてじゃなくて…


……でも

ありがとう…オキニス君…


貴方が隣にいてくれて、

本当に良かった




ダージリン「…えーごほん!……オキニス様…

元気付けるの良いが、『それ』は

2人でいる時にやってくれ


俺様が見ても大丈夫か?」


オキニス「……!!あ…いえ////

その…すみませんっ////」


オキニス君は頬を赤くして

私の手をパッと離した。



ダージリン「まあ…真澄を元気付けて

ありがとうな、俺様は何て声をかければ

良いか分からなかったし…


さあ、2人とも

とっとと呉紅店主の店から逃げるぞ!」


オキニス「…え…何故です?!

この中にいれば安全では…

結界も張られていますし」


ダージリン「…バレるのは時間の問題だ

結界を張ってあるとしても

雛美火王子の力で直ぐに解除される


そこでだ、シリンヌ王子に

雛美火様の相手をして貰い、


その間、俺たちは出来る限り

遠くへ逃げるぞ」



オキニス「…時間の問題…いちかバチか

ですね…分かりました

真澄は大丈夫ですか?」


「はいっ…大丈夫です!牡丹城の方々が

私を逃がしてくれたチャンス

無駄にしたくありません!


あっ…そうだ」


私は、ふと翠狐さんからいただいた

豆を思い出した。


ゴソゴソと懐からその豆を取り出し、

2人に渡した。



「オキニス君、ダージリンさん、

これ良かったら、持っていて下さい」


オキニス「これは……豆?」


ダージリン「食べ物か?どうしてだ

真澄?」


「この豆は雛美火さんの弱点なんです

もし、身の危険を感じたら

雛美火さんに向かって豆を投げて下さいって


翠狐さんからいただきました」


ダージリン「なるほど!これで身を守れるのか!助かる!俺様じゃ、すぐやられちまうから助かったぜ」


オキニス「真澄、ダージリンさん

何かあれば、俺がすぐに弓矢と風魔法

守ります。それと…」


オキニス君は辺りをキョロキョロ見渡した。


そう言えば…

シリンヌ王子と呉紅店主が

見当たらない…


ダージリンさんは、

オキニス君の様子に気付いたのか

にっと笑ってこう言った。  



ダージリン「大丈夫だぜ

シリンヌ王子は雛美火王子を探しながら

桜貝町の人々を救助、呉紅店主は怪我をした奴らを薬や妖力で治療している


あと、クモード王国とシラトス王国の

従事者たちも500人ぐらい、

ここに潜伏しているから

安心しろ」


オキニス「いつの間に…

凄いですダージリンさん

どうやって…その人数を…」


ダージリン「…話が長くなるから

また話は後で!

じゃあ、2人とも逃げるぞ!」

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