第14話 助けを求め…走る②
後ろを振り向かず、
走って、走って、
無我夢中で走り続けて
「はぁっ…はあ…着いたっ…」
やっとの思いで、
私は呉紅店主のお店に着いた。
お店が見えた瞬間、安心して、
涙がでそうになる
でも…ここで安心するのは、
まだ早い…オキニス君達が居るかどうか…
意を決して、戸を叩こうとした時、
ガラッ!!!
勢い良く戸が開いた。
「……!!」
オキニス「もしかしてと思ったら…真澄!
何故貴方が此処に?!」
「オキニス君っ!!居たんですね
良かったっ!…助けて下さい!!
…って あの…どうしたんですか…?」
私の姿を見て、びっくりしていたオキニス君の表情が急に険しくなった。
耳と尻尾の毛が逆立っている
もしかして、怒っている?
…なっ…なんで?!
すると、彼は歯を食いしばり
苛立ちにこう言った。
オキニス「…真澄をこんな暗い時間帯に
一人で向かわせるなんて…
一体何を考えてるんだ…
約束が違うじゃないか紅国王…」
「えっ……」
オキニス「俺は明日、真澄を迎えに行く
予定だったんですよ。紅国王から連絡があって
『真澄さんには申し訳ないが
彼女の命が危ない、和菓子の試練は終わり』だって
明日にでも真澄とその家族を迎えに入れて
ほしいって…」
「……………」
……国王様とオキニス君が
そんな、やり取りをしていたなんて…
知らなかった…
そして何より…
和菓子の試練が終わりだなんて
聞いていない…
「…和菓子の試練は終わり…」
ぽたっぽた…(涙が落ちる音)
あれっ…
何で私、泣いているんだろう
明日にでもクモード王国に戻れるのに
嬉しいはずなのに…
オキニス「……っ!!真澄……
貴方は本気で試練に取り掛かって
いたんですね…」
『本気で試練に取り掛かっていた』
…………………………
…ああ、そうか…
私、悔しいんだ
だから、涙が出たんだね
本当は、10個の和菓子を
全て献上してから
クモード王国に戻りたかった…
みんなで協力し合って、
楽しみながら和菓子を作って…
もう、それができない状況に
なっているんだね…
残り…1個だったのに…
あと少しだったのに…
……悔しい…母さんも黒夜ちゃんも
みんな協力してくれたのに…
こんなのっ…
「……オキニス君…」
オキニス「…真澄…?」
「……私に対して、『良く頑張ったね』と
って言って頭を撫でてくれませんか」
オキニス「………………」
……心の中に留めようとしたつもりが、
ポロッと声に出していた。
「……っ!あっいえ…
今のは聞かなかった事に…!!」
言い終わる前にオキニス君は、
私の頭を抱えこみ、
自身の胸に押さえつけた。
そして、強く抱きしめて…
オキニス「真澄はよく頑張りました
…よく耐えました。こんな不条件の中で
もう…俺に甘えて下さい」
はっきりと、でも優しさがある声色で、
そう言ってくれた。
「………はいっ……」
……オキニス君…ありがとう…
私はそっとオキニス君の背中に
手を回した。
オキニス「………!真澄…」
(…真澄から触れるなんて…初めてだ
…小さくて儚いな…もう離れたくない)
……あたたかい、悲しくてドロドロとした
気持ちがすうっとなくなっていく…
もう少し、このまま…
この温もりに触れたい…
だけど…私の願いは…
バタバタッ!!(呉紅店主の店の中)
「「………!!」」
ダージリン「大変だオキニス様!!」
ガラッ!!!
ダージリン「雛美火王子がこの桜貝町で
暴れているって!!」
一瞬にして消え去ってしまった。
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