第12話 危険な男①


みんなの協力により、抹茶わらび餅は

さらに磨きが掛かった状態で完成した。



早速、恒例の試食会で提供した所…


妖怪1「うーん抹茶の苦味と黒蜜の甘さが

合わさって美味しい。」


妖怪2「味が今までの和菓子の中で一番

上品!」


牡丹城の方々に好評で

みんな口々「美味しい」、

「まだ食べていたい」と言ってくれて…


国王「うむ…苦味と甘みが合わさって

美味しいな!それに…使うわらび粉によって

高級用と一般用に分けて作れるとは

そこまで気にかけてくれるとは感謝する

……合格じゃ!」


国王様も気に入ってくれた。


真澄「よかった…ありがとうございます

国王様」


…だけど、今回の試食会と言い、

最近、違和感を感じている。


国王「この調子で残り一つの和菓子も

頼むぞ 真澄さん、料理人達よ」


「はいっ!最後まで頑張ります

…あの国王様…伺いたい事が

ございますが、よろしいでしょうか」


国王「ん?なんじゃ 言ってみろ…」


「最近、雛美火さんを

見掛けないのですが…

どうしたんでしょうか…」



…ここ数日、どこを見渡しても

彼女…いや彼がいないのだ


呪いかけられた事により

警戒しているとは言え、

やっぱり心配だな…どうしたんだろう。



国王「…雛美火は、少し前から

体調を崩し、国務をお休みにしておる。

自室で休養しておるから、

真澄さんは心配いらんよ」


「そっ…そうなんですか!私から

…お大事に…とお伝え願います。」

(体調を崩したって…私のせいで

ストレスが溜まって……

……だめだめ、今はクモード王国に

帰る事だけ考えなくちゃ!

余計な事は考えるな私!)


国王「うむ、儂から雛美火に伝えておく

では、この調子で10個目の和菓子も

頼むぞ」


「はい最後まで頑張ります

10個目は特別な物を作りたいな」


緑「真澄、あとちょっとだね

お母さんも頑張るよ!

ああ、クモード王国の観光楽しみだわ」


「うんっ!皆さんっ本当に

ご協力いただき、ありがとうございます

皆さんのおかげで、ここまで

辿り着く事ができました」


私はこれまで、和菓子作りに

協力してくれた、母さん、黒夜ちゃん、

蓬ちゃん、翠狐さん、櫻海さん、

檸門さんに対し、感謝の気持ちを告げ


「可能であればっ、10個目の和菓子の

ご協力もお願い致します!!」

 

深く頭を下げ、懇願した。



蓬「もちろんです!私も最後まで

協力します!」


櫻海「協力なにも当たり前じゃないですか。

ねっ檸門さん」


檸門「ええ、俺達三人は真澄さんに

クモード王国に送る事が目標なので

頑張りましょう」


……皆さんっ……


心がじわっと温かくなり、

視界が揺らいで涙が出そうになった。


「………ありがとうございますっ…」


緑「真澄!まだ嬉し涙は早いわよ

10個目の和菓子が認められたら

思いっきり泣きなさい」


黒夜「きゅーきゅきゅう…(

泣かないで真澄、笑ってよ)」


こぼれかけた涙を母さんはハンカチで

拭いてくれて、

黒夜ちゃんは頬擦りしてくれた。


「うんっうん!」




……………………………………………………



…………………………………………



………………………………



………………





牡丹城 2階の自室。


夜になり、私は想いにふけていた。


「残り一個かあ…牡丹王国に居るのも

あと少し…」


最初の頃は早くクモード王国に戻りたいと

思っていたけど…


蓬ちゃん、翠狐さん、櫻海さん、檸門さん

呉紅店主、国王様、牡丹城の人々


最近は見ていないけど…雛美火さん


みんな優しくて、

得体の知れない私に対して

協力してくれて……


今はとても…楽しくて

あっという間に1日が終わる。


……牡丹王国での生活…

なんだか、名残惜しいような…


……クモード王国に戻っても

牡丹王国に遊びに行こう


うん、そうしよう!


「さて、そろそろ母さんもお風呂から

戻ってくるかな 

お風呂に行く準備をしなくちゃ」


タオルに下着、浴衣…後は…



ダンッ ダンッ!!(扉を叩く音)


あっ…母さん…戻ってきたのかな?

扉を開けなくちゃ…


扉を開けようと目の前までに来た瞬間、

ある違和感を感じた


まず、扉は外から鍵を掛けられている。

私から開ける事はできない。


もし…牡丹城の従事者だったら、

妖術で開けるって聞いたはず…


「…………」


怖くなって、扉から後ずさる。


ダンッ!ダンッ!ダンン!!



その間にも扉を叩く音は強くなる

しまいには…


バキッ!!


「………っ!!」


まずいっ!このままだと

扉がっ!!


どうしようっ!


……………………………………………………


翠狐『このお札は自分に貼ると

身を守る事ができて、

この豆は雛美火様の弱点…

危ないと思った時は彼女に

向かって投げてね』


……………………………………………………


「……………!!………」


フラッシュバックに

以前、翠狐さんが言ってくれた

言葉を思い出した。


……たしかっお札と豆は…


机に急いで向かい

引き出し戸を引く


「あった!!」


すぐに豆とお札を

懐にしまった瞬間…



ドッカーン!!



扉が破壊されてしまった。


音にびっくりして

振り向くとそこには…


「………ひっ!!あっ貴方は…」


???「あぁ…やっと会えた

真澄さん」



知らない男性が、

幸せそうな笑みを浮かべて

立っていた。


だけど…手は真っ赤に染めて…

ぽたぽた液体を落として…


赤色の液体はすぐに

あの独特的な臭いがしたので、

【血】だと理解した。


あまり、恐ろしい姿に

顔を引き攣らせ、後ずさる。


???「…どうして後ずさるんですか?

ああ、この姿を見るの初めてでしたね」


ただ、この男性…雰囲気が

ある人物に似ていた…


まさか、まさか…


「………雛美火さん……ですか」


そう名前を呼ぶと

男性…いや、雛美火さんは

口元を緩ませ、


私との距離を一気に詰め寄り


「ふふ…そうですよ

俺は雛美火だ 呪いが解けて

やっと男に戻れたんだ…」


私を抱き寄せ血濡れた手を

慈しむよう優しく私の頬に触れた。


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