第4話 久しぶりの再会②


ついに、母さんと黒夜ちゃんが、

牡丹王国に異世界転移して来た。


そして…


緑「初めまして 私、新川 緑と言いまして、

真澄の母になります。雛美火様、翠狐様、

宜しくお願い致します」


私を間に挟み

双方の自己紹介が始まった。


翠狐「宜しくね!僕は深緑 翠狐と言います。

固くならないで翠狐って呼んでね

あっ隣にいる女性が…」


雛美火「雛美火 紅 と言います。

宜しくお願い致します。

真澄さんのお母様…

この度は父上の身勝手な行動により娘さんを

このような事態にさせてしまい、

誠に申し訳ございません。第三王女 雛美火が

代わりにお詫び申し上げます…」


深々と下げる雛美火さん

それに対して母さんは…


緑「雛美火様 そんな思い詰めた顔を

なさらないで下さい!

真澄から話を聞きましたよ

国を豊かにする為に、住民達の為だって…


それに娘の姿を見て安心しました

生活面から色々と守っていただき

ありがとうございます


良かったわね真澄!強くて美人…

しかも同年代の女の子がいて

これなら何があっても安心ね!」


私の顔を見て

あははっと笑った。


…さすが、母さん…

異世界にいると言うのに、

動じずに通常運転…


初めて異世界に転移した時の私と大違い…

私は叫んで慌てふためいていたのに…


何事にも動じない事か…

見習いといけないな…



雛美火「お母様……っ…

えぇ…真澄さんは必ずクモード王国に

戻します…


それまでは、この雛美火が真澄さん…

いや…御三方を全力でお守り致します」


翠狐「…………」

(……雛美火様…無理して笑ってる…

本当は真澄さんをこのまま牡丹王国に

居座って欲しいんじゃ…)


緑「雛美火様…なんて良い方なの!!

私も和菓子の助っ人として

頑張ります!!ねっ!真澄、黒夜ちゃん…」


「うんっ母さん!黒夜ちゃん!

一緒に頑張ろう」


母さんと黒夜ちゃんがいると心強い…


うん…きっと大丈夫だ

必ず国王様からの条件を成功させて…

3人でクモード王国に戻るんだ。


私の大切な人達が待ってる場所へ

…オキニス君…今どうしているのかな…


会いたい……

……会って貴方の笑顔を見たいな…


翠狐「…………」

(この2人…完全に雛美火様の事を

信頼しきってる。親子だなぁ…

もうちょっと疑う心を持って欲しい

…心配だなぁ………ん?……)


黒夜「…………きゅぅぅ…」


翠狐「…………!」

(黒夜だけめっちゃ雛美火様に睨みを

きかして疑ってる!……彼も何かに

気付いたんだ!…でもこのままだと

良くない方向になりそうだから…)


翠狐「……えーと…緑さん

その黒いお狐ちゃんが気になるんだけど

なんて言う名前なの?」


緑「……あっ!紹介がまだでしたね

この子は我が家のアイドル黒夜ちゃんです!」


黒夜「………」(明後日の方向を向いている)


緑「この子、とても優しい子で…

狐仲間の翠狐様ときっと気が合いそうですね…」


翠狐「たしかに……ねぇ…緑さん…

10分だけ黒夜ちゃん借りて良いかな

狐同士、共有したい事があるんだ」


黒夜「きゅ?!……きゅーきゅう

(えっ?!……緑、ちょっと翠狐様と

お話ししてきても良い?)」


緑「もちろん!狐同士共有したい事?

何かしら?もしかして美味しい

油揚げの話とか?気になるなぁ…

行ってらっしゃい!黒夜ちゃん」


母さんは黒夜ちゃんの頭を撫でてから

地面へと下ろした。


黒夜「きゅー…きゅう(行ってきます

緑…真澄…)」


黒夜ちゃんはひと鳴きすると

翠狐様の方へと駆け寄った。


翠狐「じゃあ、雛美火様

10分間だけ 真澄さん達と

ガールズトークでもしなよ

今後の役に立つと思うよ!」


雛美火「翠狐さん?!余計なお世話です!!」


にししっと翠狐さんは笑い

黒夜ちゃんを抱えると…


ブワァッと風と紅葉を渦巻きの

カモフラージュを作り、

その場から消えていった。


……………………………………………………



……………………………………………



………………………………………



………………………………


………………………




ここは、【暁の社】の離れ場所、

紅葉庭園…


これからの会話を

誰にも聞かれないように

翠狐は黒夜を抱え、この場所を選んだ。


翠狐「よし…ここだと遠いから

真澄さん達に話は聞かれないね…

あっ、今下ろすね」


黒夜「きゅうぅぅ(ありがとうございます

翠狐様…)」


そう…ひと鳴きして

黒夜はスタンと地面におりた。


そして…


黒夜「きゅう…(解除…)」


ブワァッと黒夜の身体に

風吹雪が包み込み、


数刻後、


風吹雪が止む頃には

黒夜がいた場所には

黒い狐耳を生やした和服姿の

成人男性が立っていた。


黒夜「改めまして、お久しぶりです

翠狐様…」



……………………………………………………



※ここから翠狐と黒夜の会話のみと

なります。



翠狐「…やっぱり…君だったんだね

黒夜……もう!!今まで何処に行ってたのさ

心配したんだから!」


黒夜「…申し訳ございません 翠狐様…

突然いなくなってしまって」


翠狐「とっ…とにかく無事で良かったよ

……あっちの世界に居たのは

何か訳ありなんだよね…」


黒夜「……はいっ……」


翠狐「良ければ僕に話してもらえないかな

一応、僕は君の上司……だし

ポンコツだけどさ…駄目かな……?」


黒夜「………分かりました…

15年前…あっちの世界に行ったのは

あの2人を見守る為です…」


翠狐「あの2人って…

一緒に来た緑さんと…

真澄さん……の事?」


黒夜「はい…そうです

それで…その後すぐに禁忌を犯した為、

15年間…僕は牡丹王国に戻れなくなりました

姿が見えなくなり、穢れてしまったので…」


翠狐「15年間…戻ってこれなかったのは

それが理由だったんだね

きっ…禁忌って何をしたのさ…」


黒夜「………それは…」


翠狐「あっ…やっぱり

無理して言わなくていいよ

辛いよね…」


黒夜「…翠狐様…

お気遣いありがとうございます

でも…いつまでも甘えてはいけない

ちゃんとお話ししますね


15年前のあの日僕は『殺生』を犯しました

それが今回の禁忌です」


翠狐「…そう言えば25年前も

禁忌を犯していたね?

あの禁忌は男としては同情するけど…

もしかして…それ関連かな?」


黒夜「……はいそうです…

25年前の禁忌…あれは僕が悪いんです

あんなの許されない行為…

罰があって当然です


…会う権利がないとしても

どうしてもあの2人に会いたかった


罰の刑期が終わり、

やっと2人に会えるんだと

転移して会いに行ったら

あの男、真澄を殴り、蹴ってて…」


翠狐「それで緑さんの身体に乗り移り、

男を殺したと…つまり……あの2人は

……まさか黒夜の……?!」


黒夜「………っ」


翠狐「何であの2人、

黒夜の事を知らないの?!

今から伝えようよ!その事実!

きっと2人も…」


黒夜「……!翠狐様っお願いします!

緑と真澄には僕の正体を言わないで!


僕のせいであの2人の人生を

滅茶苦茶した


やっと…緑も真澄も幸せな日々を

送れるようになったのに


2人の幸せを壊したくない!!」



翠狐「………でも それじゃあ黒夜が…

辛いだけなんじゃ……」


黒夜「…いいんです…

現にあの2人の狐姿の僕でも

可愛がってくれますし…

2人が幸せなら良いんです

お願いします…翠狐様…」


翠狐「…わかったよ…

でも辛くなったら、僕に言うんだよ

その時は、はしご酒でもどう?」


黒夜「…僕も成人なったし…

その時になったら是非…

よろしくお願い致します」


翠狐「……よし!黒夜の話も

ちゃんと聞けた事だし、

そろそろ雛美火様の所に戻ろっか」


黒夜「はいっ 緑と真澄も

きっと待ってるだろうし…

狐の姿になりますね」



……………………………………………………



…………………………………………



…………………………………



黒夜が狐姿になると

翠狐は抱えて、


翠狐「じゃあ、行こうか」


身体を浮かせ、再び暁の社へと、

足を進めた。



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