第3話 出された条件②

……………………………………


…………………………


ここは牡丹王国で唯一

異世界転移・呼び寄せができる場所。


その名は【暁の社】


外の景色は一年中

紅葉が紅く彩り、大きな鳥居をくぐると

立派な神殿が鎮座されている。


神聖な場所なので、

一般人の立ち入り禁止どころか

王族でさえも用事がある以外は

立ち寄ってはならない。



だけど、今回は……


「うわぁぁ…辺り一面中、

紅い紅葉で綺麗…」


助っ人の母さんと黒夜ちゃんを

呼び寄せる為、私は【暁の社】に

入る許可を貰った。


そう…和菓子を完成させる為、

和菓子で牡丹王国の繁栄の為に…


「それにしても…立派な鳥居…

見上げる程の大きい鳥居なんて

初めて見ました…」


雛美火「ふふっ牡丹王国の中では

1番大きな神社ですからね

私も久しぶりですわ

………ところで 翠狐さん さっきから何?

苦虫噛んだような顔して…」


じとっと睨みを利かしながら、

振り向く雛美火さん、


???「いやだって……雛美火様

普段そんな喋り方じゃないし

違和感が半端なくて……

ごめんね!まだ慣れてないの!」


慌てて雛美火さんに手を合わせて

謝る人物は「深緑 翠狐」さん


彼は妖怪で種族は妖狐。

かなりの妖術使いで

主に国に結界をかける仕事をしている。


翠狐「……で今回は 真澄さんのお母さんと

愛狐?を僕と雛美火様が呼び寄せれば

いいのね?」


「…翠狐様・雛美火さん

お手数お掛け致しますが、

宜しくお願い致します!!

お礼はちゃんとします!」


翠狐「そんな硬くならないでよ

僕の事は翠狐って呼んでいいから

…じゃあお礼は蓬の事でお願いしようかな?」


蓬ちゃん?


あっ…たしか…

牡丹城で働くキッカケは

翠狐様だって蓬ちゃんが言ってたっけ…


なら…翠狐様は蓬ちゃんの事、

孫のように心配なのかな?


「分かりました翠狐さん!

私の分かる範囲ですが、

蓬ちゃんの事でお話ししましょう

もちろん、和菓子と抹茶つきで!」


翠狐「やった!ありがとう真澄さん」


呼び寄せが終わったら、

翠狐さんと蓬ちゃん談義だ

楽しみだな


雛美火「………えー…ごほんっ!

2人とも『呼び寄せ』の時間は

限られてますので、早く中に入りましょうか」


翠狐「雛美火様?どうしたの?

いきなり不機嫌な顔をして?

……はっ!!もしかして雛美火様

真澄さんにこっ……」


ゴス!!!


次の瞬間、物見えぬ速さで

雛美火さんは翠狐さんに

峰打ちをした。


翠狐「ひっーどい!雛美火様

本気で峰打ちしたよね?!

痛い!!」


雛美火「…翠狐さん、分かっていても

余計な事は言わないで下さる?

…では先に行きましょか 真澄さん」


「へっ……あっはい!」


私の手を取ると鳥居を潜り

ずんずんと進み出した。


ぎゅうぅぅ


手は力強く握られ

鋭い爪が食い込まれてる


そして……


翠狐「雛美火様!握る力が強い!

真澄さんの手を見て

血がて出るよ!」


雛美火「…!! 申し訳ございません!!

真澄さん あのっ……その

決してそんなつもりはっ…」


爪が食い込まれていた事によって

手からじわっと血が出ていた


とても痛かった

けど…正直に言ったら…

顔面蒼白になっている彼女の顔が

さらに青くなるような気がして…


「気にしないで下さい!

ほらっ大した事では無いですし…ね?」


私はわざと明るく笑い

嘘を付いた。


きっと妖怪さんにとっては

軽く握ったぐらいの力なんだろう


雛美火「真澄さん……でもっ…」


「そっそれより、

時間が限られているんですよね

急ぎましょうよ」


雛美火「本当にごめんなさい

牡丹城に戻ったら ちゃんと手当てをします

なので今は…」


雛美火さんはハンカチをとり

そのハンカチを私の手に縛ってくれた。


しかもよく見たら、

このハンカチ…

素材が絹!高級品!!


勿体ない!こんな事に使うなんて…


雛美火「簡易的な処置となりますが、

これで我慢をお願い致します 」


「ああありがとうございます!

ちゃ…ちゃんと洗って返しますね」


高級品が私の手に

包まっているんだと思うと

思わず声が震え上がってしまう…


雛美火「…ふふっ 声が裏返ってますよ

変な真澄さん


それに…ありがとうって言うのは

私の方ですよ」


「……雛美火さん?」


雛美火「なんでもありません

さあっ神殿に行きましょうか

今度は優しく握ります」


そう彼女は言うと

そっと私の手を握り前へと歩きだした。











翠狐(……すごい執着だ…

ただ僕が話をしただけなのに

…この先、真澄さんが心配だ……)


前にいる2人を見て、

翠狐は底知れぬ不安を感じた。


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