第3話 出された条件①

前回のあらすじ


一昨日…【お菓子の試食会】にて


私は…


「…あの国王様…雛美火様…

私事ではございますが、

お願いがございます!」


国王様「………なんだ言ってみろ」


「この国にお菓子が必要ならば、

全身全霊で協力します…その代わりに…」


雛美火「………っ………」


「…お菓子で満足いただけましたら、

私をクモード王国に戻して

頂けませんでしょうか」


…と国王様と雛美火さんに

ダメ元で頭を下げてお願いをした。



……………………………………


…………………………




その結果




…2人はしぶしぶ承諾をしてくれたが、

代わりに条件を出された。


その条件は…


『芋まんじゅう以外に10種類

和菓子を作り、その作り方を

王族に提供する事』


だった。




そして現在、

牡丹屋城のつっかえ棒により開かない部屋で

私は和菓子の案を必死に考えてた。


「……10種類か…和菓子って何があったけ…

みたらし団子・おはぎ・栗羊羹……」


頭の中では、

和菓子のイメージが思い浮ぶのに、

肝心の作り方が分からない!!


和菓子は得意分野じゃない事ぐらい

分かっていたけど…

ここまでど素人だったとは……


「…携帯でレシピを調べようにも

牡丹王国だとインターネットは

使えないし…


でもなぜか このトークチャットだけ

使える…」


この状況下の中…

……運が良いのかもしれない

もう頼みの綱は母さんしかいない!!


よし…!さっそく母さんに連絡だ。


私は手提げバックから

携帯を取り出し、母さんに連絡を入れた。


もちろん私の今の現状も加えて…


本当は心配をかけたくないけど、

私、嘘つくの下手くそだから

いつかはボロが出てバレてしまう


「…とりあえず…一旦これで送信っと!」


あとは母さんの返信を待つだけだ……




ピコーン!(トークチャットの音)


えっ…もう来たの早い!


慌てて携帯画面を見たら、

こんな内容が表示されていた。



※ここから会話のみになります


…………………………………………………


(チャット内容)


緑「真澄!誘拐されたってどういう事なの?! 今、無事なの?

ひどい事されてない?」


「大丈夫!むしろ親切にされているよ

無事だから安心して」


緑「…分かったわ…もし何かあったら、

溜め込まず、すぐ連絡をしてね

貴方、無理に我慢をしちゃうから」


「……ありがとう 母さん…」


緑「ところで…クモード王国に戻る条件が

和菓子10種類を作り、作り方を

牡丹王国の王族に提供するとは……

真澄にとって難題ね…」


「…うん、難しいかもしれないけど

条件をクリアしたら、

クモード王国に戻してくれるって

…やるしかないの!

なので、母さん 和菓子10種類のレシピ

私に教えて頂けませんでしょうか

お願いします!!」



緑「今すぐ教える!……と言いたい所だけど

このトークチャット、文字制限があって

写真も送れなかったよね」


「……そうだった!!

それに添付ファイルもダメだったはず…

どうしよう……他のアプリは使えないのに…」


緑「…うーん…そうだ!

ねえ真澄、貴方がいる世界って

たしか魔法や術って使えたよね?」


「うん使えるよ。初めて目にした時は

びっくりした、それがどうしたの?」


緑「私が真澄のいる世界へ行く

魔法なんて無いかしら?それだったら、

貴方に和菓子の作り方を教えられるわ」


「……!そっか

牡丹王国にもその魔法があるのかもしれない

でも…大丈夫?いきなり異世界転移なんて

生活に支障でない?」


緑「大丈夫よ 今ちょうど

お仕事探し中だから、

えっと…こちらの世界の諸事情で

契約が切れちゃった…」


「そうなの?!

母さんも もしお金の面で

困った事が私の通帳使ってね

なら、さっそくお偉いさん達に

異世界転移できるか聞いてみるね」


緑「お願いね!あっそれと最後に

黒夜ちゃん 真澄に会いたがっているわよ

黒夜ちゃんもいいかしら」


「黒夜ちゃん 懐かしい…

私も会いたいな、うん分かった

母さんと黒夜ちゃんの二人ね


一旦チャットは切るね

また、結果が分かったら

私から連絡するね」


緑「黒夜ちゃんと連絡待ってます

それじゃあ真澄 頑張ってね」


「ありがとう母さん では行ってきます」



……………………………………………………



母さんとのチャット終了後

携帯の画面を閉じて



「………異世界転移出来ますように…」


そう祈りを込め、

雛美火さんを呼ぶ為、

私は呼び鈴を鳴らした。



……………………………………………………



……………………………………………  



……………………………



国王様「………ふむ 助っ人を

異世界から呼べるか…か」


「はい、とびっきりおいしい和菓子を

作るには彼女の知恵が必要なんです

難しいでしょうか」


母さんとのチャット後、

さっそく私は国王様に

異世界転移が出来ないか交渉をしている


この国だと魔法や呪術はないけれど

…【妖術】ならある。


その妖術で異世界転移ができれば…



国王様「…妖術で異世界転移はできない」


「……そっそうですか…なら…」


……仕方ない…できないなら

母さんのレシピ携帯でみながら

頑張って作るしか…


国王様「ただ、この国には異世界に

転移・呼び寄せできる場所がある

その場所に行って、こちらから

呼び寄せれば可能だ」


…!!


「本当ですか?! 良かった…

あの…2人を牡丹王国に

呼び寄せたいのですが…

あっもし嫌でしたら…」


国王様「人によるな…一体誰を呼び寄せるんだ?」


「はいっ 1人目は私の母でして、

私より和菓子作り得意な方です

彼女に協力してもらう為、

呼び寄せが必要なんです


2人目は黒夜ちゃんで

母さんの愛犬ならぬ愛狐です

えっと…黒夜ちゃん一人でお留守番は

出来ないと思うので…駄目でしょうか?」


国王様「真澄さんの家族なら良いだろう…

黒夜…どこかで聞いた事があるような…

まあいい、雛美火!」


国王様は隣にいる雛美火さんに

声をかけたが…


雛美火「…………」


雛美火さんに反応がなく、

かわりに私の方を見て複雑そうな

表情をしていた。


どうしたんだろう…

…はっ!まさか私…何かやらかした?


生活から何まで今まで雛美火さんに

頼りっきりだったから…

知らない間に失礼な態度を

取ってしまったとか…


もし、そうだとしたら

…これから出来る事は

ちゃんと自分でやろう…


国王様「雛美火!!」


雛美火「……! 申し訳ございません

ぼー…としてました なんでしょう父上」


国王様「珍しいな…お前らしくないぞ」


雛美火「そんな事ないですよ

それより父上、命令を…」


国王様「ああ、明後日 真澄さんを

異世界転移できる場所『暁の社』へと

案内してほしい…呼び寄せの儀式は

お主と翠狐に頼む」


雛美火「はっ承知致しました」


国王様「そして…真澄さんは

2人に【明後日 異世界に行く事・

当日は住んでる場所の神社にいる事】を

伝えてほしい 良いな?」


「分かりました 国王様、雛美火さん

本当にありがとうございます!


このご恩は……」


洋菓子で……じゃなくて!

牡丹王国だから……


「……和菓子で恩を返します!」


…さっそくお部屋に戻ったら

母さんに伝えなくちゃ!!


こんな思い、囚われの身として

不謹慎かもしれないけど…


久しぶりに2人に会える…


母さん、黒夜ちゃん…

会えるの楽しみだな…




………………………………………………



…………………………………………



…………………………




(真澄が部屋に戻った後)※国王様side



「………雛美火…お主

一体どういう事なんだ?」


雛美火「……何がです 父上?」


……いつからだろうか…雛美火の顔に

影が見えるようになったのは…


「さっき、儂と真澄さんのやり取りの際、

お主は恐ろしい表情になっておった」


雛美火「………………」


試食会時だってそうだった

彼女がクモード王国に戻りたいって

言った時も嫌そうな表情をしていた


まるで『絶対に彼女をクモード王国に

返すものか』って



「……まさか、お主…彼女の事を…」



雛美火「父上、何言ってるんですか

真澄さんとは100年以上、

年が離れているのですよ。ありえませんよ


それに私、今は女性ですよ?

真澄さんは可愛い娘ができた感じの

気持ちです。


もう…父上は心配性ですね」



「……そうか!なら、あの顔になるのも

納得だな…」


……安心した てっきり、

恋愛感情を抱いているかと思った…


「でも、念には念を…

雛美火、人間との恋愛は駄目だからな

鬼の私達と関われば、人間の命が

さらに短くなってしまう、いいな?」


そう雛美火に告げ、


「じゃあ…明後日 頼んだぞ」


安心しきって、雛美火を一人残し

部屋を出た。


あの時の儂は愚かだった。

もう少し、雛美火に携わっていれば




雛美火「……それぐらい『俺』だって

嫌ほど分かってるよ…でも…」




彼の弱音を聞いていれば、

あんな悲劇が起こらなかったのに…


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