第1話 祝い事(イチゴのケーキ)②
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「…広い…ここがクモード城の庭園……」
次の日、私はクモード城の庭園にいた。
庭園の広さは東京ドームが2個分の広さ…
念のため、歩きやすい靴を履いて来たけど、
正解だったみたい。
さすが、クモード城、
庭園には綺麗な花も栽培しているけど、
ココルト市場にはない珍しい食材を
栽培しているなんて。
辺りをキョロキョロと見渡した時、
ちょうど…オキニスさんの声がした。
オキニス「真澄!お待たせしました。」
タッタッタッと軽い足取りで、
手を振りながら私に駆け寄ってくる
数時間前、
運良くオキニスさんがお城に居て、
ダメ元でお願いした所、
オキニス『俺で良ければ!
すぐ準備します。ちょっと待ってて下さい。』
何とすんなりと許可を貰えたのだ。
「こんにちはオキニスさん、お忙しい所、
申し訳ございません。よろしくお願いします」
いや本当に申し訳ないです。
この後もお仕事かあるのに、
わざわざ時間を割いてくれて…
次に会えた時、何かお菓子を渡そう。
オキニス「いえいえ、気にしないで下さい。
今日はよろしくお願いします。
俺は気にしませんよ。だって…」
「?」
オキニス「真澄と2人で作業できるなんて、
嬉しいですし、なんだか得した気分です。」
「///!!」
照れ臭そうに頭をかくオキニスさんを見て、
カァァと一気に顔が熱くなった。
…はっ…ダメダメダメ!!
変な勘違いをしてはダメ!!
こっ高校生相手に惑わされるな、
25歳!!!
きっとオキニスさんにとっては、
特に意味もなく言ってるだけ!
危うく、「私も得した気分です」とか
口を滑らす所だった。
あの時、ダージリさんと約束したでしょ!
好きな人が18歳になるまで、
思いを告げてはダメ、
私の気持ちもバレちゃダメだって
オキニスさんのこれからの道を
潰してどうするの!
元の世界だったら犯罪よ真澄!
……ここは一旦落ち着いて…
スーハースーハー…よしっ!
「そっ…そうですか!
おばさん そー言われると うっ嬉しいな!
なんだか勘違いしちゃいそう…」
…って私の馬鹿ー!!
なに余計な事言ってるの!
オキニス「……勘違いしてくださいよ(小声)」
「へっ?オキニスさん今なんて?」
オキニス「……何でもありません。
行きましょうか。レッドベリイ畑に」
そう言って私の手を掴み取り、
握り返してから、レッドベリイ畑へと
歩き出した。
相変わらず、異性に手を繋がれるのは
慣れない、それも好きな人なら尚更…
うー…私が恋愛経験豊富だったら、
気にしなかったのかな
「…………………………」
まっまずい!緊張で手に汗が…
どうか、自分の手の汗で、
オキニスさんにドン引きされませんように…
ドギマギしながら
オキニスさんと歩き続けて
数十分後…
オキニス「真澄着きましたよ!
ここがレッドベリイ畑です。」
「……わぁ…宝石みたい…しかもこんなに
いっぱいレッドベリイが実ってる。」
太陽の光に反射して
赤く輝くレッドベリイ畑に着いた。
さあ、特別なケーキを作るため、
良いレッドベリイを摘まないと!
オキニス「良いですか真澄。
良いレッドベリイの見分け方は
色にムラがないが鮮やかな赤色で、
光沢があり、粒がたっているものが
良い物になります。」
「なるほど…色が鮮やかで光沢がある…
分かりました。」
オキニス「それでは、摘みましょう。
あっそれと食べても良いですからね。」
「えっ…いや食べるなんて城の貴重な食材を…良いんですか?」
赤く輝くレッドベリイを見てはヨダレが
でそうになった。
せっかく貴重な食材を頂けるのに、
それを食べられるとか私にとって
欲張り過ぎじゃない?
オキニス「作る側の人が味を認知しないと、
美味しいお菓子は作れないでしょ。
食べて下さい。庭師の方に許可も
頂きましたから。」
「……じゃあ、お言葉に甘えて
摘み終えたら一つ頂きます。」
それまでに良いレッドベリイを見つけるぞ。
たしか鮮やかな赤色で光沢がある…
頭でその事を思い浮かべながら、
黙々とレッドベリイを摘み続け、
目的の量まで達した。
籠にいっぱいのレッドベリイ。
うん、ケーキに使う量は、これで充分だね。
「ありがとうございます。オキニスさん
これで充分です。この量でしたら、
立派なケーキができます。」
オキニス「いいえ、どういたしまして
お役に立てて嬉しいです。そう言えば……」
「なんでしょう?」
オキニス「今回、そのケーキは誰に
渡すのですか?」
「実はヨーグルさんに頼まれまして、
ヨーグルさんの旦那さんが久しぶりに、
お家に帰ってくるので、そのお祝い用ケーキです。」
そして、ケーキを渡したら、
私もヨーグルさん達のお祝い会に
参加するのだ!
あぁ、ヨーグルさんのご馳走楽しみだな。
オキニス「なるほど、そういう事でしたか、
ところで真澄…ヨダレが出てますよ」
おっと!失礼しました。
慌てて私はハンカチで口元を吹いた。
「はっはしたない所を失礼しました。
ケーキを渡した後、
私もヨーグルさん達のお祝いに
参加する事になりまして…それでその…
ヨーグルさんの料理が出てくるので、
想像したら…つい……」
オキニス「真澄も参加するのですか!
実は俺もヨーグルさんの旦那さんに、
誘われまして…なら、一緒にいきませんか?
俺、迎えに行きます」
「オキニスさんもお呼ばれされてたんですね
是非!よろしくお願いします」
やった!また、オキニスさんに会える。
……心の中でガッツポーズをした。
元の世界ではスマートフォンや
固定電話などの電子機器で
簡単に連絡ができるのに、
この世界では連絡手段が(手紙)か
(直接会って話す)しかないんだよね。
会うのも約束する事も
私にとっては奇跡そのもの。
だから、とても嬉しい。
…前の私だったらきっと、
気にしていなかったと思う。
むしろ、迷惑掛けるといけないので、
1人で行きますとか言ってたかもしれない。
オキニス「真澄」
「はっはい……むぐっ」
オキニスさんの手により
私の口にレッドベリイが運ばれた。
じゅわっと口の中には甘酸っぱさが広がり、
彼の指が私の唇にあたった為、
私がレッドベリイの様に
真っ赤になってしまったのは
言うまでもない。
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