第十三話 強欲の魔王マモン

"鑑定"でティアの兄を見たところ魔王に取り憑かれいることが分かった。それにさっきの発言、「全てを手にする」、あらゆる物を欲しがる欲、この世の全てのものを自身のものしたいという欲、流石の"強欲"と言ったところだろう。


だが、更におかしいのがステータスの数値だ、LV55なのに全ステータスが100越え、おまけに攻撃力と防御力は800、俊敏力に至っては1番高い850ときている。俺とエリスは勇者と聖女として異世界(地球)から呼ばれたからその補正なのかLV1でも全ステータス100だった。


リディア(マスター、魔王に取り憑かれている影響でステータスに上昇補正がかかっているのです。とにかく気をつけて下さい、ステータス数値もですが奴のEXスキル収奪の魔手とマリオネットというスキルは私も知りません。ですが、何かやばい気がするので。)

竜星「分かった、ありがとうリディア」


リディアにお礼を言ってると魔王から電撃を纏った火球が放たれた。


竜星「危なっ!」

エリス「ひゃっ!こ、"光神の守護結界"!」

アメリア「くっ、"大いなる氷河よ我らを守る壁となれ、氷壁!(アイスウォール)」

ティア「おっと!」


俺とティアは素早く躱して、エリスとアメリアは魔法で防いだ。


ティア「なっ!そんな!兄は魔法は使えないはずだったのに何故!」

竜星「ティア!君の兄は魔王に取り憑かれてる。さっき"鑑定"を使ったら悪魔付きって出てた、魔法もコモンスキルの欄に"爆雷"ってのがあった。恐らく魔王のスキルだろうそれとステータスも物凄く上がってる!」


エイス「我を前によそ見とは随分と余裕そうだな」


その声に前を見ると物凄い速さで槍を突き出してくるエイスが目の前まで迫ってきていた


竜星「やばっ!"飛翔"!」


エイス「逃すか!"天獣旋風槍"!」

"飛翔"で避けるとエイスは獣人特有の人間離れした身体能力を使い、バネのように跳躍しドリルのように回転する槍を突き出してきた。


竜星(回避!は間に合わない、相殺は、恐らく力負けする。だったら)

竜星「光盾の巻物!」(スクロールオブライトシールド)

そう言って懐から魔法の巻物を取り出し、収められていた光属性の防御魔法を発動した。

獣神国に行く前に役に立つかもしれないと思い、買っておいたものだ。


攻撃が塞がれ、エイスが一瞬怯む、その隙を見逃さずに攻撃に転ずる。


竜星「神田流武術!天翔脚!」

実家直伝の空中蹴りを叩き込む。


すると、エイスは弾丸みたいな速さで地面に叩きつけられたが、少しよろめきながらも直ぐに立ち上がった。魔王が取り憑いているとはいえ、防御力800なんて馬鹿げたステータスだと思った、それは自分にも当てはまるが。


竜星「始原流二ノ型、炎龍の牙!」

ティア「獣王流武闘術、閃光撃!」

アメリア「激流の舞!」


竜星から大口を開けた燃え盛る龍が、

ティアから閃光の如き速さの一閃が、

アメリアから激流の様な舞の斬撃が、

エイスに叩き込まれようとした瞬間、何処かに隠れていたのか大盾を持った兵士の様な姿をした獣人達が竜星達の攻撃を防いだ。


竜星「何っ!何処から⁉︎」

ティア「この人達、城の兵士たちだよ!」

というティア、つまりこいつらが集められてた兵士達だろう。だが、こいつらも女達同様に虚ろな目していて、意識がないようだ。


竜星(虚な目で意識がない、収奪の魔手にマリオネット、突然現れた兵士達、まさか!)


竜星がこのカラクリに気づいた瞬間、エイスが手を突き出し、


エイス「かかったな!"収奪の魔手"!」


ティア「あがっ!」

アメリア「あうっ!」


突然、ティアとアメリアが頭を抑えて苦しみだした。


龍星「アメリア!ティア!大丈夫か⁉︎」

アメリア「勇者、様....早く...逃げて、下さい」

ティア「龍...星、早く、もう....意識が...」

龍星「え⁈」


龍星が聞き返した瞬間、後方から炎の矢が飛んできた。


龍星「うぉっと!」


横っ飛びで避け、矢が飛んできた方向を見ると周りと同じく、虚な目をしたエリスがまた魔法を撃とうとしてた。さっきの矢は初級炎魔法の"ファイアーアロー"だろう。

すると今度は、アメリアとティアが鋭い斬撃を放ってきた。


龍星「ぐっ、やっぱりか!」

龍星が2人の攻撃を受け止め、呟くと


エイス「気づいた様だな勇者よ、その通りだ、我のEXスキル"収奪の魔手"で相手の意識を奪い、"マリオネット"で意識を奪った相手を我の意のままに操ることができるのだ。」


思った通りだと、龍星は歯噛みした。つまり今3人は意識を奪われて、操られてる。


エイス「貴様にも使っていたのだが、効かなかったところを見る限り魔耐力が高いのだろう。よって貴様は要らぬ、安心しろ、聖女は貴様が死んだ後に我が有効活用してやろう」


魔王のその言葉に龍星の心の中の何かが、プツンと、切れる音がした。


龍星(ふざけんなよ、お前らの勝手な事のせいで、無理矢理異世界に呼ばれて、人を道具みたいに使って、その挙句、大切な仲間や幼馴染まで奪うなんて、そんなの許せるわけないだろ!だったら)


龍星「強欲の魔王マモン!その強欲さをお前ごと、叩っ斬ってやる‼︎」


龍星の怒りが爆発した瞬間、

(勇者の怒りを検知、覚醒条件を達成しました。よって、超EXスキル "勇者の闘魂"を獲得しました)


リディアの声でスキル獲得が知らされた。

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