第六話 私の初恋
ギルドに登録しようとして鑑定用の水晶に手をかざしたら、いきなり水晶が音を立てて見事に割ってしまった。(本当は勇者の規格外のステータスに水晶が耐えきれずに割れただけ)
そして現在、アメリアという受付嬢に連れられギルドマスターに事情聴取を受けている。
カナエ「成程、大体分かった、先ずは自己紹介しておこう。私はこの国のギルド本部のギルドマスターをしているカナエ=カミシロだ、
耳で分かると思うがエルフだ。王女さ....ゴホン、アメリアから話は聞いた、リュウセイ君だったかな?手を翳したら水晶が割れてしまったと。」
竜星「誠に申し訳ありません!」
エリス「私からもすみません」
カナエ「ああ、大丈夫だよ、たかが一個割れたって問題ない。予備なら倉庫にまだ十個くらい入ってるし、前例もある。」
竜星「えっと、前例ですか?」
カナエ「ああ、当時の私はまだ100歳にも満たない子供だった頃だ。魔王と同等の力を持つ邪竜がこの世界を滅ぼそうとしたが、その邪竜を倒した存在が、君たちと同じ異世界から召喚された勇者様と聖女様だったというわけさ!」と興奮した様子でかつての勇者と聖女の事を熱弁するギルドマスターもといカナエ。
竜星「えっと、つまりその水晶を割った前例がその勇者だったと?」
カナエ「その通りだ、君以外に水晶を割った人物なんて初代勇者しかいないからね。」
竜星「でも、それだけで俺達を勇者と聖女だと認定するのは早いのではないでしょうか。」
アメリア「いえ!そんな事はありません!既に全ての神殿に神託が告げられました。異世界より勇者と聖女を呼ぶと、予言の神アポロ様からです、ですからすぐにでも王城に来て頂きたいのです。私の初恋の勇者様!」
竜星(予言の神アポロ?この世界の予言の神は地球のギリシャ神話に出てくる予言の神と似ているのか。ん、それより初恋の勇者様⁈)
竜星が受付嬢が言った言葉に疑問を抱いていると、その答えをギルドマスターが言ってくれた。
カナエ「殿下、私が説明します。リュウセイ君、混乱しているのは分かる、エリス君も聞いてくれ。君達をここまで案内した彼女こそ、この青龍東洋国の王女、アメリア=ヤマト第一王女殿下だ。数日前からこのギルドの受付嬢に扮して勇者様が来るのを待ってたんだ、いや私も流石に驚いたよ、殿下自らギルドにやってきてここで働かせてほしいって言ってきたから。もし何かあったら物理的に私の首が飛ぶ」ギルドマスターの顔には少し疲労感が出てる、ずっと気を張り詰めてたから余計に疲れてる。
竜星「えーと、分かりました王女殿下、城には行きますがその前に登録を済ませてからでよろしいですか?俺もエリスもまだギルドカードを発行してもらってないので。」
カナエ「心配ないよ、もう既に他の職員に頼んで発行したよ、持ってきてくれ!」ギルドマスターが呼ぶとドアが開いて他のギルド職員が竜星とエリスのギルドカードを持ってきてくれた。
カナエ「ギルドのギルドランクは下からF、E、D、C、B、A、Sとあるが二人は勇者と聖女という事を考慮して下から3番目のDランクからスタートだ、このランクはギルドの規定の判定だからこれ以上は上げられない、そこは了承してくれ、頼む。」とギルドマスターは頭を下げた。
竜星「頭を上げてください、寧ろ1番下のFからスタートでも構わないのですが。」
エリス「そうね、私達だけ勇者と聖女というだけで贔屓するのは他の冒険者の人達になんか申し訳ないですし、他の冒険者の人から見れば私達は魔物どころか戦闘経験皆無の素人ですし。」
カナエ「いや、そういう訳には私的にもギルド的にもいかないんだ。初代の勇者様と聖女様だってDランクからスタートしていた。それ以来勇者様と聖女様はDランクスタートということが国からギルドの規定にするようにと言われた。重ねていうようだけどそこも了承してくれ。」再度ギルドマスターは頭を下げる。
竜星「はぁ、分かりました、だから頭を上げてください。」
エリス「国から言われたんじゃ流石に断れないしね。」
カナエ「ありがとう、それと言い忘れたがようこそ、冒険者ギルドへ、私達は君達を歓迎するよ。これからよろしく。」
竜星「こちらこそよろしくお願いします」
エリス「よろしくお願いします」そう言って竜星とエリスはギルドマスターと握手を交わした。するとしばらく黙っていた王女が
アメリア「話は終わりましたね、では早速行きましょう、私の勇者様♡」すると王女が竜星に腕を絡めてきた。すると普段温厚なエリスが珍しく声を荒げて
エリス「王女様!何してるんですか!竜星は私のものですよ!離れてください!」
アメリア「あら、聖女様、私のものという事はもう既に付き合っているという事ですか?それでしたら申し訳ありませんと謝罪します。」
エリス「えっ!いや、その、付き合ってる訳じゃないけど、その...」エリスが顔を赤くしてると王女は反撃と言わんばかりか
アメリア「付き合ってないのなら別に何も問題ないのでは?聖女様、勇者様と王女の私が恋仲になっても関係ないでしょう」
エリス「関係なくありませんし問題大ありです!私は竜星の幼馴染です!子供の頃に結婚の約束もしました!竜星は私と結婚するんです!お互いの両親も既に公認済みです!ですから王女様と結婚はできません!諦めてください!」そう言ってエリスが王女から竜星を引っ剥がした。
エリス「大丈夫?竜星?」
竜星「あ、あぁ大丈夫だ。ありがとうエリス、まだ少し心臓がバクバクいってる」
アメリア「むぅ、既に婚約済みでしたか、でも私も諦める訳にはいかないわ!王族の辞書に不可能と諦めるという文字はないから!婚約済みなら私は第二夫人の座を狙います!それなら良いですね?勇者様、聖女様!」正妻が無理なら側室なら良いのか?と聞いてくる王女にエリスは
エリス「ダメに決まってるじゃ無い!一夫多妻なんて!日本の法律で決まってるのよ!」すると王者は負けじと
アメリア「それはそっちの世界の法でしょ、この世界にそんな法は無いわよ。地位ある者は多くの妻や夫を娶るのは普通ですよ、ましてや勇者様は世界を魔王から救う存在、それこそ私達王族より遥かに地位ある者ですよ。」日本ではダメでもこの異世界なら問題無いという王女
竜星「あの、エリスも王女様も少し落ち着いて」
エリス・アメリア「竜星(勇者様)は黙ってて!」
竜星「....はい」竜星は二人を宥めようとするが二人に怒鳴られ黙るしかなかった。そして未だに言い合ってる幼馴染と王女様を見て竜星は思った。
竜星「どうしてこうなった?」こうして言い合ってるうちに日が傾き始めたので結局王城に行くのは明日に延期になった。
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