第4話 パン屋へ強盗
俺は金が欲しかった。理由はもうはっきりと言って会社が悪い。給料も激減し挙句の果てには俺を解雇したことが原因。明日からどうやって食べていけばいいんだ?
そう思って行った先はパン屋、俺はパンが小さい頃から好きで家族でもご飯よりもパンがメインだった。
俺はまず逃走用として車を用意した。金を奪ったらすぐ逃げるためだ。
だけど好きなパンだ。まずは客として普通にパンを買う。もちろん金は払う客だからな。奥にテーブルがありそれを食べる。ここの店、正直とてもおいしいと思う。
「おいしいですね。このパン好きです」
「ありがとうございます!」
笑顔で従業員は俺にそう言った。対応も悪くない気がする。だけど俺は今日はこの店から金を巻き上げることだった。
一度お店の外へ出て車の中で数時間経過したあと、もう一度さきほどのパン屋に戻り入る。今度は客じゃない強盗として。
そうして銃を装備してパン屋に入り、銃口をまず店の従業員に向ける。
「金を出せ!!」
先ほどまでいた客も誰もいなく今はこの従業員と俺だけ好都合だ。
そして俺はボストンバックをレジに向かって投げて金をある分だけ詰めろと命令する。すると従業員は俺の顔を見るなり、慌てて金をレジから引き出し詰めようとするが、そこで奥から店長と思われる人物が現れた。
随分と落ち着いており、肝の据わった女って感じだ。
「金を詰めるのは待ちな、あんたはさっきの!!」
「店長!私どうしたら・・・」
俺は銃口をその店長に向けた。しかし、ここでこの銃を店長に発砲すれば死ぬ。だけど、ここのパン屋とてもおいしい。
殺せばあのパンが食べられない。俺は衝動的に聞いた。
「おい、ここのパン屋で一番おいしいパンは何だ!?」
すると店長はパンを持ち出し、無言で俺の前に近づこうとする。
「店長!危ないです!殺されます!!」
従業員がそういうが、店長は俺にパンを差し出す。
するとそのパンを食べた瞬間俺はとてつもないおいしさが口の中で広がる。
店長はすかさず俺の銃を突然掴んできた。
「おっ!何しやがる!」
そして俺は素早く後ろに下がり、店長との間合いを取ったあと銃を上に向け発砲する。すると銃の鉛玉が天井を貫く予定のはずが、何かにあたり跳ね返って従業員の肩に当たってしまった。
「はぁぁぁ!痛い!!」
俺はまずいと思った。俺は走って従業員に駆け寄る。
「ケガさせるつもりはなかった。すぐ病院行こう!」
そういって俺は逃走用で出していた車を動かし、病院へ連れて行く。
「・・・どうして助けたのですか?」
「俺の目的は金だ。人を傷つけることじゃない。傷つけたら処置をしないとな」
「警察にすぐ捕まるわよ」
「だろうな・・・でもここであんたが死んだりでもしたら本来の目的と違うから・・・」
俺がそういうとその後は無言になり、病院に到着したあと従業員の処置中に俺は病院によって通報された警察官が駆け付けてきた。
「貴様だな銃を発砲したヤツは?話は聞いてるぞ」
「・・・そうです」
「殺人未遂の現行犯で逮捕する!」
そう警察官に言われてると、店長が病院へ来て俺にこう告げてきた。
「すべてが片付いたらもう一度私のお店に来て!」
そういわれて、俺は逮捕された。
数年後、俺は刑務所から出た。またお店に行っていいのか俺にはわからないが行く当ても特になく、とりあえず訪れることにした。
あの従業員は元気で働いていた。もちろん店長もいた。
「どうせ何もないんだろ?だったらうちで働け、定年まで働いてもらうからね!」
一切何も聞かれず働けと言われたことに俺は涙した。
それと、しばらくしてからなんで俺を店に呼び、しかも雇ったのか話を聞くと店長は、あの時パンが好きです。
といった言葉と、すぐに病院に連れていき、従業員を助けたこと。最初から殺意はなく、俺には何か事情があって犯行に及んだことまで店長は見抜いていた。
今は、パン作りを店長から一生懸命教わり、恩を返そうとしている。従業員とは厳しく指導されることもあるが、俺は必死でやっている。だってパンが好きだから。
―完―
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