第2話 立てこもり事件

俺は銀行を襲撃した。金が欲しかったからだ。まず覆面をして銃を片手に金を出せと脅す。ここまでは銀行強盗の襲撃としては常套手段。みんな身体を震わせる。

そして一人の白い服をきた白髪の男性がある提案を俺に持ち掛けた。


「せめて、ここにいる女性と子供だけは逃がしてやってくれませんか?」

確かに母親と子供にこの光景を見せるのは残酷だと思うし、子供に今後深い傷を心に負わせるのは、あまりにも可哀想に思える。

「解った。女と子供はじゃあ去れ俺の目的は金だ」

そう俺は言い放つ。


「ありがとう、君僕の要件を飲んでくれて」

その男がそうお礼を言った。

「いや、俺はあんたの言う通りと思っただけだ」

「ありがとう」


そんなやりとりをしている中、警察から拡声器でお決まりな言葉を言う。

「貴様は完全に包囲されている」

警察というのはなんでそう分かり切ったことを言うのだろう?

確かに包囲はされるけど俺の中では想定内だからこうやって人質を盾にしているのだ。


「君」

先ほどの白髪風の男が俺に声をかける。

「何だ?」

「これだけの人がいると君としてもやりずらくないか?もう少し解放したほうが金を得やすいと思うしやりやすいんじゃないか?」


そう提案をされる。今いる人間は確かに15人ほどいるが、俺一人で拳銃を持っているとはいえ、後ろから殴られるリスクもなくはない。


「ほぅ。それでどう解放したらいい?」

「僕と、そこにいる支店長と副支店長の人は残してあとは全員解放っていうのはどうだ?」


「すると俺を含め4人にしろと?」

「そういうこと一般の人と銀行関係者でもそこまで深い事情まで知らない人は残しても仕方がないと思うし、君にとってもリスクなだけだと思ってね」


確かにこの人の言う通りだ。俺も突然後ろから殴られたりするのは怖いな。少ないほうが管理しやすい。なのでその条件を飲んで解放した。


警察もこれには驚いていた。どんどん人質が解放されていき中で何が起こっているか警察からでは把握できないからだ。


「これで4人になったなさて金をさっさと用意しろ」

「まて君、そろそろ疲れが出てきてないか?」

「疲れ?金じゃないのか!」


「金は逃げない、あそこに支店長と副支店長がいる限り金は約束されている」

「解ったそれで?今度は何だ」

「実はこれを君にあげたいと思って飲んでみると良い。少し甘いけど疲れているときには良いんだよ」


「おお、そうかでもそうするとこんな錠剤みたいなやつ飲みにくいな」

「ごめん、そこまで気が回らなかった。誰かそこの二人コップに水を入れてこの方に渡してくれないか?」


すると支店長が動き、コップに水を注ぎ俺に手渡す。

「大丈夫だ、この状況でコップに変なもの混ぜて君を殺すようなことすれば、支店長自身の命がかかっていることくらい知っているはず。だからこれはただの水だよ」


確かに言われてみれば、そんなリスキーな事をこいつらが出来るわけがない。

俺はその錠剤を水で飲む。


「さて、今度こそ金だ!よこせ!1億用意しろ」

すると今度は副店長が1億円を用意する準備をする。そして30分が経過する。

「遅い!支店長殺すぞ!」

俺はそう言い銃を支店長に向ける。


「ちょっと待ってくれ!副支店長はちゃんと用意しているはずだ。セキュリティの関係でどうしても時間がかかるんだ!」


そう支店長が言うと俺は待つことにした。しばらくすると、俺は何だかトイレが行きたくなる。しかも大便のほうがしたくなってきた。何だかお腹もゴロゴロする。なんて調子悪いんだツイてねぇ!


身体が熱くなってきて俺は覆面を取った。もう顔バレしても仕方がなかった。


「おい!トイレはどこだ!」

もう駆け込みたくて仕方がなかった。

「支店長、トイレまで案内してやってくれませんか?」


冷静に白髪風の男がそういうと、俺はトイレに駆け込んだ。するとしばらくすると物音が激しくなる。

「警察だ!」

焦った俺は便座に座りながら警察に訴えた。


「待て!お腹が痛いんだ!これが済んだら大人しくするから!!」

必死の訴えが良かったのか警察はその場で待っていて、トイレが終わるとあっけなく俺は逮捕された。


あとで聞いた話だが、あの白い服を着た白髪風の男は実は薬剤師で、俺に薬を渡していたしかも即効性のある下剤だった。


これには参った。しかもあの薬剤師、随分と誘導が上手かったな。と、刑事に言ったら俺が馬鹿すぎるだけだと一蹴された。


―完―









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