第7話

ファミレスに着いた。一郎は先についていたようで、コーヒーを啜りながら僕を待っていた。


「お前もコーヒーでいいか?」

一郎はメニューを開いて僕に尋ねてくる。

「じゃあ、それで。…あと、腹が減ったからなんか適当に頼んでくれ。」

自炊をする気になれず、今日は外食で済まそうと思う。


「おっけ。店員さーん!このハンバーグ二つとドリンクバー、…とフライドポテト。あと、食後にこのパフェとアイス一つずつお願いします。」

一郎が、頼んでくれる。それはいいんだが、めっちゃ食べるやん。めっちゃ頼むやん。あとそのコーヒードリンクバーかよ。


「一郎、そんなにお腹減ってるのか?」

店員さんが去った後、ちょっと呆れながら僕は一郎に尋ねる。


「え?勇気はいつもこれくらい食べてただろ?いつも二人前頼んでたじゃん。」

まさかの全部僕の分。


「え、そんなに食べられないって。」

慌てて僕は否定する。

「…マジ?お前記憶喪失じゃ飽き足らず、食の量まで変わったのか。」

なんか調子狂うな。と、一郎は笑って僕を見る。

なんだか、一郎は僕じゃない誰かを見ているようで居た堪れなくなったので僕はドリンクバーを取りに席を立った。



ことり、とコーヒーを席に置く。

そういえば僕は一郎に未来のことを聞きにきたんだった。


「なあ、早速本題で悪いんだけどさ。…今、未来がどこにいるか知ってるか?」

もしかしたら、本物の未来に会えば記憶も戻るかもしれない。そんな希望を持って一郎に尋ねる。


「…は?お前、それも忘れたってことか…?」

辛い記憶を封印するために記憶喪失に…?と一郎は呟いている。

「な、なんだよ。はっきり言えよ。」

僕もなんだか不安になる。


「だって、未来はもうとっくに死んでいるじゃないか。」


これを俺に言わせるのかよ、と、一郎は言う。言っているが、僕は咄嗟には彼の言うことがわからない。


「なあ、勇気はあの事故のこと、誰かから聞いてないのか?」

「あの事故のこと?」

事故って、なんだよ。一体なにを言って…?


「ほら、未来は崖から落ちただろ?お前もその場にいたじゃないか。その事故のショックで、お前は入院してたんだろ?」


「…は?」

未来は僕の前で死んだ?


俺の記憶では、殺人事件に巻き込まれたって聞いた気がしたが気のせいのようだったか?なんで間違えてたんだろう。


…そんなことはどうでもいい。あの時崖から落ちたのが未来だった?そんな馬鹿な。


「本当はさ、今日は勇気にあの事故のこと覚えてないか聞こうと思っていたんだけどさ。」

勇気は僕の目を見て言う


「それどころじゃないよな、悪い。またなんかあったら言えよ?いつでも話は聞くからさ。」


「…ありがと。」

そんな一郎の気持ちをありがたく思いながら、冷めたコーヒーを口に含む。


苦味が口一杯に広がり、あまり美味しくはなかった。

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