第6話

最近の盗聴器はシャーペンの形もしているらしい。最先端だ。


「いやいやいやいや???」

誰だよ盗聴器仕掛けたやつは。恐怖でしかない。てか、聞こえてるじゃん。やばい。「盗聴器?」とか喋っちゃったよ。

これまさか筆箱に入ってたのか?筆箱の内側が破れていた事が思い出される。

おそらく誰かが筆箱を二重底にして盗聴器を隠したのだろう。


…とりあえずこれは壊すか。


ゴンゴンゴンゴン。

家の庭にあった大きな石を盗聴器に打ち付ける。盗聴器は粉々になる。

…これがまた気持ちいい。


「…!?」

その時、僕の記憶がまた蘇ってきた。



『私、魚捌くの苦手なんだよね。ほら、内臓とかグロいっていうか?』

未来は文句を言いながらも魚を捌いていく。今日は僕に手料理を振る舞うのだと張り切っていたからな。


『未来に見るも無惨な姿にされる魚がかわいそうだ。』

正直、彼女は料理が下手だ。どうして料理が下手な奴に限って凝った料理を作りたがるんだろう。


『勇気…。やって…。』

ふと気がつくと、未来が泣きそうな顔でこちらを見ていた。ちょっと目を離した隙に、魚は原型をとどめていない。まるで、分解したシャープペンシルのようにぐちゃぐちゃになってしまっている。


『まあ、つくねにでもすればいいだろ。ほら、俺に任せて。』

魚を叩いて、丸めるだけでできるから過程は関係なく簡単にできる料理だ。


少し形が歪なのは、愛嬌って事で。



「…っ!」

手が痛む。今のは…未来との記憶?


「そうだ、未来…!」

盗聴器や、希望に気を取られて後回しになっていたが未来は今どこにいるんだ?

誰か、彼女の居場所を知っている人は…。


「一郎なら知ってるか?」

あの海に行った日に、あの二人を呼んだのは一郎だ。僕は慌ててスマートフォンを取り出し、電話帳を起動する。


「もしもし、一郎?今から会えないか?」

「え、勇気?今から? …まあ、お前からの頼みなら断れないな。いいよ。ちょうど俺もお前とじっくり話したいと思っていたんだ。」

じゃあ20時にファミレスで、と約束すると僕たちは電話を切った。

支度をしようと思い、スマートフォンを置こうとするとある一文が目に入る。


【着信拒否 希望】


僕のスマートフォンは、希望からの着信を全て拒否する設定になっていた。

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