第5話

僕の隣にいる未来は、本物の未来じゃない。おそらく、彼女は希望だろう。ここからは彼女の事を希望と呼ぶことにする。僕は、家のソファーに寝転び、ため息をつく。


「本物の未来はどこにいるんだよ…?」

未来は、僕が記憶喪失になる前までは僕の彼女だったんだ。消えたのは不自然じゃないだろうか。


「そもそも、なんで希望は未来の真似をしているんだ…?」

未来が消えただけなら、事件のショックで倒れた僕を振った可能性も考えられる。しかし、希望が未来のふりをしているんだ。二人の間に何かあったと考えるのは自然だろう。


「マジ、意味わかんねー…。」

頭の中を、いろいろな可能性がぐるぐるする。もう、俺にどうしろって言うんだ。


ゴトッ。ガシャン。ゴロゴロ。


寝返りを打とうとすると、ソファーから落ちてしまった。痛い。主に僕の下敷きになっているシャーペンが背中に食い込んできて痛い。


「痛いんだが?」

むくっと、僕は起き上がりシャーペンに文句を言う。どうやら、ソファーから落ちた際に筆箱も落としてしまったようだ。


「…??」

このシャーペンは見たことがない気がする。まあ、記憶喪失なんだから当たり前か?


「ったく、それどころじゃないっていうのに…。」

落とした文房具を詰めようと、筆箱を持ち上げる。すると、中が破れているのを見つけた。


「新しいやつ、買わなきゃだめかなぁ?」

なんかついてないな、僕は。そう思い、机に筆箱をおくと、外側からは壊れているようには見えないことに気づく。


「あ、まだ使えるじゃん。」

外からみて、壊れてないならまだ大丈夫だ。…たとえ、中身がとっくに壊れていても。


カチカチ。

筆箱は置いておき。考え事に戻ろうと手持ち無沙汰にさっき背中に食い込んでいたシャーペンをノックする。


「あれ、芯が出てこない?」

シャー芯が入っていないのだろうか。何の気なしにシャーペンの蓋を開ける。


「…なにこれ?」

シャーペンの中身は機械のようだった。シャーペンってそんなにメカって感じじゃないよな?

googleカメラをスマホで起動して、このシャーペンの事を調べてみる。


「えっと、盗聴器?」






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