第3話
「あれ、お前勇気だよな!?」
僕は四ヶ月ぶりに大学へ足を運んだ。
教室が目新しく、あたりを見回していると一人の男子生徒が話しかけて来た。
「久しぶりじゃん!良かった、もう大学は来ないんじゃないかと心配してたんだよ。
久しく会わなかったからな。
全く、連絡も繋がらないし…。
俺のこと、忘れたんじゃないかと心配したぜ?」
その生徒は僕に向かって話しかけている。
その生徒は明るめの茶髪を、ワックスでたてている。銀色のピアスをし、背も高い。なんだか、派手なやつだった。
「おいおい、どうしたんだよ、そんな腑抜けた顔して…。まさか、本当に忘れたんじゃないよな?」
茶髪の派手派手君は僕を心配そうに見る。
彼は、僕の友人なのだろうか。それとも、宗教の勧誘か?
「えっと、ごめんなさい。どなたでしたっけ…?」
そもそも僕はこんな派手なやつとは関わりを持てる性格じゃないだろう。
多分珍しく学校に来た僕をカモにしようとしてるんだ。
「おいおい、冗談だろ…?俺は、佐藤一郎だよ。本当に覚えてないのか?」
…。
「そんな市役所の名前の見本に出てきそうな名前のやつは信用出来ません。」
「…なあ、入学式の日と全く同じこと言ってんけど、本当に記憶ないのか…?」
そのあと一悶着あったが、最終的に佐藤一郎は僕にスマートフォンで写真を見せてきた。そこには、確かに僕と佐藤がうつっていた。
「本当に、友達だったんだな…」
宗教と間違えてしまったことが申し訳ない。3%ほどは反省しよう。
「俺こそ、ごめんな。あの事故から勇気がこんなことになっているとは知らなくてさ。」
佐藤は、僕から目を逸らし頭をかきながら言った。癖なのだろうか。
「…⁉︎」
急に頭の中に知らない映像が流れてくる。ここは、海だろうか?
☆
『海だー!』
『おい、勇気騒ぐなよ。うるさいなあ。』
今日は一郎と海にきた。
だが、普通に男子2人でむさ苦しく川になんて来ない。…合コンだ。
『ヤッホー、一郎君!えっと、君が勇気君?』
黒髪ロングの、白いワンピースの女の子が一郎に話しかける。
『こ、こんにちは…?』
その後ろから金髪のショートボブが顔を覗かせる。
メガネをかけており、服装もtシャツにショートパンツといった、おとなしめのもの。
少し地味に感じる。
金髪とのミスマッチ感が浮いて見える。
『勇気、こっちの黒髪の方が未来。もう一人の方が希望だ。』
一郎が俺にこそっとおしえてくる。
一郎は随分張り切っているようだ。
後で慰めるのは俺なんだから勘弁してほしい。
それにしても、今日は雨が降りそうな残念な天気だ。なんで今日にしたんだよ。
『今日はいい出会いがあるといいな?』
そういうと、一郎は僕から目を逸らし頭を掻いた。これはこいつの不安な時の癖だった。
☆
「おい、勇気どうしたんだよ!」
ふと気がつくと、一郎の顔が僕の目の前にあった。
「あ、ああ。思い出したんだ…一郎。」
「思い出したって…記憶がか!?」
一郎はびっくりした顔をする。
「記憶が戻る時って、頭痛くなったりするんだろ?大丈夫かよ。」
一郎は僕を心配してくれているようで、保健室ってどこだっけ…などと呟いている。
「どちらかというと、手が痛いんだけど。」
「…勇気、もしかして思い出したのって、中二の時の記憶?」
僕は随分馬鹿にされたものだ。
「違う、一部だけど一郎のこと思い出したんだ。」
大学に来たら記憶が戻るかもと期待していたが、まさかこんなに早く戻るとは思わなかった。
これなら元の生活に戻れる。嬉しい。嬉しいはずなのに、
「なあ、一郎。僕たちが海に行った時の写真もあるか?」
僕の記憶の中の未来は、僕の知っている未来じゃなかった。
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