日常
あの日記を買ってから一週間が経った。
特に俺の生活に変わりはなく、ただ講義を受けてはバイトを適当にこなし、家に帰って寝る、そんな日常。
ただ一つ、あの日記を買ってから変わったことがあった。
日記を書く習慣がついたということだ。
あの日記帳は古書店で買ったものとはいえ、新品同様だったため俺は特にとりとめのない毎日を記すことにしたのだ。
それと、もう一つ俺の中で変わったことがあった。
それは、あの店であった人形のような人が頭から離れないということだった。
あの人は何者なのだろう?店主?店員?
なぜあの店にいるのだろう?また行けば会えるのだろうか?
あの綺麗な人に恋人はいるのだろうか?などなど。
あの時は不気味な雰囲気しか感じなかったのに、今では綺麗な人だ。喉元過ぎればなんとやらだ。
そしておそらくこれは、世間でいう恋なのだろうか。
そんなことを毎日この赤い日記帳に綴っている。
そんな日が1ヶ月ほど続いたある日だった。
日記帳のページが少なくなってきたなと思い、残りの薄い白紙の部分をパラパラとめくっていた。
その時、とあるページに俺以外の文字が書き込まれていた。
まぁ、古書店で買ったものだし、そういうこともあるだろうとその時は思った。
だが、その記入されている文字を読んだとき、俺は目を疑った。
「生きて」
小さな文字でそう書かれていたのだ。
「何なんだよ、この文字…。」
俺はあの日行った古書店の異様な雰囲気を思い出し背筋が凍った。
誰かが書いたものだ。
それはいい、古本だから。
だが、生きていて「生きて」などという文字を書くことは一生で何回もあるだろうか?
気味が悪くなり、その日は日記をすぐ閉じて寝た。
明日、あの店にもう一度行って売ってこよう、そう思いながら。
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