“泣きたい時に泣いていい”という彼は、私を上手くコントロールする男だった。

神石水亞宮類

第1話 “泣きたい時に泣いていい”という彼は、私を上手くコントロールする男だった。

私はそんな彼に救われる。




“私が泣きたい時に泣いていい”という彼。




私はそんな彼に救われる。

私はどんな事があっても泣けない女だった。

お母さんが事故で亡くなった時も、大好きだった彼にフラれた時も

大学受験に落ちた時も、どんな時も私は泣けなかった。

泣けない事は本当に辛い。

泣きたくても涙が出ないのだ!

周りの目は、そんな私に冷たい。



『あの子、お母さんが事故で亡くなった時も泣かなかったのよ。』

『あの子の弟さんは、ワンワン泣いてたのにね。』

『旦那さんも、あんな子がいて大変よね。』

『そうよね。』

『涙一つ流さないなんて! 性格がひねくれてるんじゃないの?』

『お母さんが亡くなって悲しくなかったのかしらね!』

『そうそう。』





・・・私は周りから冷たい目で見られる子供だった。

今でもそれは、それほど変わらない。

泣きたくても泣けない事を、周りの人達は理解できないのだ。

私だって! 泣きたいに決まってるじゃないと大きな声で言いたい!

それが出来ないから、辛いんじゃない!










でもそんな時、私をよく理解してくる彼に出会う。



『前から思ってたんだけど、無理してない?』

『えぇ!?』

『“辛い時は泣いてもいいんだよ!”』

『・・・あ、ありがとうございます、』

『本当の自分を出していいんだ。』

『・・・・・・』

『それとも? “泣けないの?”』

『えぇ!?』

『そういう人、他の人で知ってるから。』

『・・・そ、そうなんですか、』

『心を解放してあげるといいんだ。』

『・・・で、でも、どうしたら?』

『次会った時に、僕が協力するよ。』

『そんな事が、本当にできるんですか?』

『試す価値はあるよね。』

『・・・あぁ、はい。』

『じゃあ、またね!』

『じゃあ、また。』




・・・なんか、少し気持ちが楽になった。

彼の優しい言葉に心が救われる感じがした。

私は一人じゃない!

もっと心を解放してあげてもいいんだと思った。

彼の言う通りにする事に決めた。





次に会った時に彼に協力してもらいながら私は泣けるか

試してみる。

そうすると? 自然と涙が出てきた。

あんなに!? 泣く事ができない私を責めていた私が泣けた。

簡単に泣けた。

私は私のままでいいのかな?

そんな風に思えた。

彼のおかげだ!

彼が私の心を解放してくれた。

私は彼に心を許すようになっていった。

彼だから、私は心を許していいと想えた。






・・・でも気がつけば? 

彼は私を上手くコントロールする男に変わっていく。

私は彼の言う事なら何でもいう事を聞くようになる。

彼が浮気しても、私はすんなり彼を許してしまう。

彼と別れる事もできない!

私は彼に上手くコントロールされている。

このままだと、本当の私もいなくなってしまう。

私は彼から解放されたい!

どうか、私の心を解放してください。

私は前のままでいいから!


・・・どうかお願い彼から私を解放して!

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“泣きたい時に泣いていい”という彼は、私を上手くコントロールする男だった。 神石水亞宮類 @kamiisimizu-aguru

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