“泣きたい時に泣いていい”という彼は、私を上手くコントロールする男だった。
神石水亞宮類
第1話 “泣きたい時に泣いていい”という彼は、私を上手くコントロールする男だった。
私はそんな彼に救われる。
“私が泣きたい時に泣いていい”という彼。
私はそんな彼に救われる。
私はどんな事があっても泣けない女だった。
お母さんが事故で亡くなった時も、大好きだった彼にフラれた時も
大学受験に落ちた時も、どんな時も私は泣けなかった。
泣けない事は本当に辛い。
泣きたくても涙が出ないのだ!
周りの目は、そんな私に冷たい。
『あの子、お母さんが事故で亡くなった時も泣かなかったのよ。』
『あの子の弟さんは、ワンワン泣いてたのにね。』
『旦那さんも、あんな子がいて大変よね。』
『そうよね。』
『涙一つ流さないなんて! 性格がひねくれてるんじゃないの?』
『お母さんが亡くなって悲しくなかったのかしらね!』
『そうそう。』
・・・私は周りから冷たい目で見られる子供だった。
今でもそれは、それほど変わらない。
泣きたくても泣けない事を、周りの人達は理解できないのだ。
私だって! 泣きたいに決まってるじゃないと大きな声で言いたい!
それが出来ないから、辛いんじゃない!
*
でもそんな時、私をよく理解してくる彼に出会う。
『前から思ってたんだけど、無理してない?』
『えぇ!?』
『“辛い時は泣いてもいいんだよ!”』
『・・・あ、ありがとうございます、』
『本当の自分を出していいんだ。』
『・・・・・・』
『それとも? “泣けないの?”』
『えぇ!?』
『そういう人、他の人で知ってるから。』
『・・・そ、そうなんですか、』
『心を解放してあげるといいんだ。』
『・・・で、でも、どうしたら?』
『次会った時に、僕が協力するよ。』
『そんな事が、本当にできるんですか?』
『試す価値はあるよね。』
『・・・あぁ、はい。』
『じゃあ、またね!』
『じゃあ、また。』
・・・なんか、少し気持ちが楽になった。
彼の優しい言葉に心が救われる感じがした。
私は一人じゃない!
もっと心を解放してあげてもいいんだと思った。
彼の言う通りにする事に決めた。
次に会った時に彼に協力してもらいながら私は泣けるか
試してみる。
そうすると? 自然と涙が出てきた。
あんなに!? 泣く事ができない私を責めていた私が泣けた。
簡単に泣けた。
私は私のままでいいのかな?
そんな風に思えた。
彼のおかげだ!
彼が私の心を解放してくれた。
私は彼に心を許すようになっていった。
彼だから、私は心を許していいと想えた。
・・・でも気がつけば?
彼は私を上手くコントロールする男に変わっていく。
私は彼の言う事なら何でもいう事を聞くようになる。
彼が浮気しても、私はすんなり彼を許してしまう。
彼と別れる事もできない!
私は彼に上手くコントロールされている。
このままだと、本当の私もいなくなってしまう。
私は彼から解放されたい!
どうか、私の心を解放してください。
私は前のままでいいから!
・・・どうかお願い彼から私を解放して!
“泣きたい時に泣いていい”という彼は、私を上手くコントロールする男だった。 神石水亞宮類 @kamiisimizu-aguru
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