第2話 返事
告白から3週間が経った。
今日は外練の日だったがあいにくの雨、
男子は部活が休みになり、女子は校舎で筋トレ。
勇気を出して部活前のナツに声をかけた。
「ナツ、帰る前にちょっといい?」
ナツは俺と目を合わせたが、すぐそらした。
「…うん、わかった。終わったらリョウの教室に行くから待ってて」
俯きながらそう言ったナツの声は、
雑音にかき消されてしまいそうだった。
正直まだ好きかと聞かれてもわからない。
ただナツの気持ちは嬉しかったんだ。
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ナツを待つ間、外の雨を眺めて考えていた。
ナツのことは好きだ、でも
誰かと付き合うってなんだろう。
付き合ったら何が変わるんだろうか
ナツが俺に言ってくれた好きには
どんな意味があるんだろう…
まだわからないまま、外では雨が降り続いていた。
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教室にナツがきた、
「ごめん、お待たせ。…告白の返事やんな?」と
ナツが俺の目を真っ直ぐ見つめながら聞いた。
俺は試合より緊張していたのに、
前の席に座り俺の目を見つめるナツの表情は
か弱くなんかなくて、むしろかっこよかった。
そんなナツを見て
俺は今の気持ちをそのまま伝えたいと思った。
わからない、ごめん
なんて言葉で逃げたくないと思った。
わからないって伝えたら
カッコ悪いって思われるかな?
いや、カッコ悪いって思われたっていい、
今の俺のことを知ってほしい。
そう思った途端に口から言葉が出ていた、
「あのさ、俺、恋愛したことねぇんだ。
人を好きになったことも付き合ったこともない。
付き合うってなにすりゃいいかわからんし、
まだナツのこと好きかどうかも正直わからん。
でも3週間会話がなかった時、今までどんだけナツが俺に声をかけてくれていたのか分かったし
目の前にいるナツがすっげえカッコよくて、そんで可愛いと思う。やから恋愛経験のない俺でええなら…これからよろしくお願いします」
精一杯伝えた
これが今の俺だ
嘘偽りはなく今の俺を表した言葉だ。
言葉を出し切った後、情けなさで俯く俺にナツは
「嘘みたい…。嬉しい!
なぁリョウ、何かをしてほしくて告白したんじゃない。ただリョウの隣で笑い合っていたいんよ!
これからよろしくね。」
俺は顔を上げると、ナツは目に涙を溜めながら
今まで見たことない優しい笑顔で俺を見ていた。
2人にの間に流れる空気が柔らかくなったのが
恋愛初心者の俺にもわかった。
「ありがとう」
ナツは最高に可愛い顔で俺を見ていた
席を立ち友達を待たせているからいくねと
歩きながら言い残し、俺を置いて帰っていった。
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後日ナツから聞いたのは、
その日フラれる覚悟をしていて俺のところへ来て
唯一相談していた友達が心配して下駄箱で待ってくれていたらしい。
なぜフラれると思ったのか?と思ったが
俺は聞かなかった。
ナツにとって俺は2人目の彼氏だったが、
自分から告白したのは初めてだったんだよと
いつだったか
付き合ってから教えてくれた。
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