3−2 再会

ヒョウが出来でくわした謎の女は現れた複数の化け物グリームを相手に戦い一気に倒していき、それを見て恐ろしくなった彼はバイクに跨り一目散に逃走した。

のだが━━バイクに乗りながらヒョウはぎょっとする。


「!?」


突如彼の走る進行方向に『さっきの女』が舞い降りた。‥‥道路のど真ん中に着地した女は、緋色の眼でヒョウをガン見しながら視界を離させない。

そして、何かの映画の如く、ゆっくりと立ち上がると━━女は声を上げた。


「ちょっと、止まりなさい!」


このまま無視しても、この人は追いかけて俺はやられるだろう!

そう判断したヒョウは急ブレーキをかけて女の横に止まると、呼び止めた理由を他人事のように聞いた。


「な、何ですかいきなり!用件は‥‥?」


「取り敢えず乗せて」


━━ヒ、ヒッチハイクか!?女は言うなりヒョウのバイクの後ろに乗ると、ヘルメットの後ろからはみ出ている髪をむんずと握り掴んだ。


「一人で逃げるなんていい度胸じゃない、このおさげ頭!」


憎々しげに後ろ髪を引っ張り、ヒョウのヘルメットに手をかけるとズボッ!という音と共に一気に引き抜いた。


「何よ‥全然怪しくないじゃない!」


出て来た素顔は絶句するように顔を引きつらせている、自分より年下の少年だった。それが余りにも普通で意外な顔をする女。ヒョウは、言われの無い横暴にか弱く抵抗するように言葉を漏らす。


「そうだろ‥‥僕は、全然怪しくありません。

普段は横切った猫に不安を打ち明けるような普通の人間ですから‥‥」


「ごめんね。‥‥この星の事を知らなかったし、君の事、もっと悪い人間だと思ってたから思わず警戒したわ」


そうすると女は一転して明るい眼差しでヒョウに言った。


「名前は?私の名は緋翠ひすいよ」


「俺の名はヒョウです‥‥取り敢えず、ここから他の場所に行きませんか?のがまた現れたら危ないし‥‥」


二人はヘルメットを被ると、バイクを疾走させ誰もいない街をひた走った。



「これに人を乗せるのは私が初めてなの?」


緋翠という女は気を許したのか、ヒョウをいじり始めると彼は照れ笑いしながら答えた。


「いえ、二人目です。‥‥それより、これってどういう状況なのか緋翠には解るの?」


「今は説明してる暇は無いけど‥‥さっきの仄暗い者グリームが増える前にやってやるわ」


風を受けながら緋翠はそう言う。すると、何かを察知したように呟いた。


「それにもいるし‥‥」


一点を見つめ、緋翠の表情は真っ赤な髪と瞳と同じ感情に変わる。


「えっ、あいつって?」


ヒョウが聞くと道路の直線上‥‥二人の進行方向に、さっきの上半身裸男が立っている。


「げっ、あいつは!」


ダークブラウンの長髪を靡かせた憮然とした表情の碧娥だ。動物に例えると馬に近い骨格の(馬面うまずらではない)、その男を見た緋翠はヒョウに叫んだ。


「いいから走るのよ!」


ヒョウのバイクはアクセルを全開に突っ走る。


「おまえは!」


自分の横を無我夢中で通過するバイクに驚いた碧娥。

目があった一瞬、彼は、その後ろに乗っている‥‥赤い髪の女の方が「笑って」いるのを目にし━━。


「緋翠!」


叫ぶなり走り去っていくバイク。

それを目で追う方も何を思ったのか破顔した。

そして立ち尽くす男に、重い風が吹いた。


右腕に力を込め、それは体から湧き上がる『氣』となると、遠くに行ってしまったヒョウのバイク目掛けて何発もの爆風の弾丸ブラストブレットを撃ち込んでいく。


「わぁああぁあー!」


背後から迫る暴風と砲弾音、ヒョウのバイクは煽られながらも死に物狂いで避けていく。

━━振り切ったヒョウが、もう大丈夫か?と思った時、彼らの目の前にもう一人、《三人目》の男が待ち構えていた。


「━━光紫!」









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る