魔物を喰らいし者の力〜奪ったスキルで最強になりました〜

第2話 試し打ち

「スキルロブって何だよ……」

確かに戦闘でいつもと違う感覚に陥っていた。

世界がスローモーションになったように感じるなんて初めての経験だ。

「ていうかスキルロブって聞いた事ないし。」

取得したスキルの詳細を確認する。

スキルロブ[lv.1]

対象が所持しているスキルを強制的に奪う事が出来る。対象は魔物限定となる。

「スキルを奪うスキル！？」

スキルは大体が攻撃スキルで、バフやデバフ等の他者に影響を及ぼすようなスキルはほとんど存在しない。

そんな中魔物のスキルを奪うなんて、非常識なスキルは見たことも聞いたこともないものだった。

「魔物のスキルを奪うって、まさか100%成功するわけないだろうし、クールタイムいくつだ？」

スキルはほぼ全て例外なく、使用してから再度使用可能になるまである程度時間が掛かる。

またスキル使用後は、反動として一定時間硬直し、まったく行動できなくなる。

そのため取得したスキルに対して理解を深めることは最優先事項だった。

しかし魔物のスキルを奪うって事は、魔物もスキルを使うのか。

初めて知った。

スキルを奪うってことは、魔物のスキルを使えるようになるのか。

一体どんなスキルを魔物は持っているのだろうか。

ダンジョンに潜ってから初めて、ワクワクしていた。

暫く歩くと、またゴブリンがいた。

「スキルロブを使用……！？」

スキルを使おうとすると、ターゲットカーソルが目の前に現れた。

慌ててゴブリンに照準を合わせる。

対象――ゴブリン

奪えるスキル――飛び掛かり lv.1

成功率――100%

なるほど。

毎度のこと飛び上がって攻撃してたのは、スキルを使ってたからなのか。

成功率も書いてある。

100%ってことは、逆にいえば100%じゃない時もあるってことか。

とりあえず使ってみよう。

「スキルロブ！」

相手がノックバックを食らったみたいによろけている。

スキルロブ――成功

取得したスキル――飛び掛かり lv.1

……奪った。

敵のスキルを。

「とんでもないな……」

いまのでもゴブリンとは10mは離れていた。

遠距離から攻撃でき、しかも敵の選択肢を奪える。

「これ絶対ユニークスキルだな。あまりにも強すぎる。」

ゴブリンは慌てて起き上がって、黒元を見つけると一直線に走ってきた。

……跳び上がらずにそのまま突っ込んできた。

いつもと違う行動に慌てて、ゴブリンの突進を食らう。

「グッ……！？」

久しぶりに相手の攻撃を食らった。

……以前よりあんまり痛くないな。

束の間にまたゴブリンが突っ込んできた。

メイスを構える。

突進してくると分かったなら、それ相応の対応をすればよいだけだ。

「ガァッ！！」

叫びながらゴブリンが再度突進してくる。

獲物が棍棒である以上、振り回して攻撃するのがみえみえだ。

無理に付き合わず、距離をとりながら様子を見る。

右手を振り上げてからの振り下ろし、振りかぶってまた振り下ろし。

攻撃がワンパターンで振り下ろしの後も棍棒に振り回されて隙だらけだな。

まるで戦い方を忘れたみたいに見える。

「ハッ！」

短く息を吐きながら、相手の振り下ろしに合わせて相手の顔をメイスで殴りつける。

骨が砕ける感触と血が飛び散る音を聞きながら振り切る。

一撃でゴブリンの顔面を砕かれ壁に衝突し、ゴブリンは即死していた。

「……こんなに強かったっけ？」

確かに戦闘訓練を受けたり、ダンジョンでレベル上げをしているから多少強いのはわかる。

それでも一撃で相手を殺せたことなど今まで一度としてない。

異常な程の威力だった。

「スキルを取得したせいか！」

スキルは取得するだけでステータスにバフが掛かる。

しかしスキルの種類によってバフの上昇率が異なるのだろう。

「ゴブリンからスキルを奪えることは分かったけど、何度でもできることなのか？できたとしてもいったいどうなるんだ？」

……気になる。

試さないことには何とも言えないな。

ゴブリンを探すために再び歩き出した。

――――――――――――――――――

「やっとか……」

ぼーっとしながら突っ立っているゴブリンを見つけた。

さて、成功と失敗のどちらだろうか……。

ターゲットをゴブリンに合わせる。

対象――ゴブリン

奪えるスキル――飛び掛かり lv.1

成功率――95%

……使える。

さっきと異なっている点は成功率が下がっているのみだ。

まぁ95％なら失敗しないだろう。

スキルロブを使用する。

スキルロブ――成功

取得したスキル――飛び掛かり lv.1

スキル統合――飛び掛かり lv.2

なるほど、そうなるのか。

飛び掛かりがlv.2に上がったということは、同じスキルを奪うと統合されレベルが上がるのか。

「……しまった。スキルロブに夢中で、奪ったスキルを使うことを忘れてた。」

一般的にスキルのレベルが上がると、クールタイム、使用後硬直、威力または操作性のいづれかが上昇する。

「まぁいいか、次はスキルを試そう。」