魔物を喰らいし者の力〜奪ったスキルで最強になりました〜

@Dolour

第1話 スキルを奪うスキル

ゴブリンが腕を振り上げながら突進してきている。


身長が1m前後で人間より小さいとはいえ、中々に迫力がある光景だ。


右手に持ったメイスを構えながら、タイミングを見計らう。


ゴブリンが丁度飛び上がった瞬間に、素早く横に移動する。


交差する瞬間、右足を引きながらゴブリンの頭に向かってメイスを振り下げる。


肉が抉れる音を聞きながら、頭ではなく肩に命中し上手く殺せなかった事を悟ると、振り下げた勢いを利用し2撃目を準備する。


ゴブリンが怯んで転がっている所にメイスで頭を殴りつける。


ゴブリンが吹っ飛び、体から死亡した際に出る謎の光を出した事を確認して構えを解く。


戦闘後のリザルトを確認する。



「相変わらず少ない経験値だけか……」



いつもと変わらない結果に落胆しながら、次の魔物を見つけるために歩き出した。


2214年現在、突如として地震と共に地球にダンジョンが出現してから100年経ったある日に、黒元 くろもと てつはダンジョンに潜っていた。


ダンジョンには魔物が出現し、問答無用で他者に襲い掛かる。


そして魔物を討伐した際には、経験値と確率は低いもののドロップアイテムが手に入る。


経験値は取得した値が一定を超えると、レベルアップと言う形でステータスが割り振られる。


ステータスには攻撃力、物理防御や魔法防御等があり、その値が高ければ高いほどそれに関するダンジョン内でのアクションに補正が掛かる。


それ故、ステータスを高くするためにレベルを上げる事は最優先事項であり、黒元も例に漏れなかった。



「こんだけ戦ってんだからスキルの1つや2つ寄越せってんだ……」



ダンジョン内では特殊能力――スキルが使えるようになっていた。


そのスキルは戦闘を有利にするもので、取得するだけでステータスにも補正が掛かる。


だからこそレベル上げと同時にスキル取得も重要である事が周知の事実であった。


スキルはノーマルスキルとユニークスキルに大別される。


ノーマルスキルは誰でも条件を満たせば取得でき、取得人数に制限が無い。


反対にユニークスキルはこの世界で1人しか取得出来ず、また取得できるかも才能によるものと言われており、そのため詳しい条件が解明されていない。


よってユニークスキルを持つものは往々にして絶大なチカラを得ると同時に、命を狙われやすくなる。


何故ならばたった一人しか取得出来ないからだ。


悪意ある人物に取得した事が知られてしまえば、何をされるかわからないため、ユニークスキル取得者は殆どその事実を明かさない。



「俺にもユニークスキルとか有れば、こんな所に一人じゃなかったかもな……」



他愛もない事を呟きながら歩いていると、気持ち悪い叫び声が聞こえてきた。


息を飲み、静かに潜む。


魔物は群れない。


何故かはよくわかっていないが、問答無用で他者を攻撃するからだろうとは言われている。


ゴブリンが前方で不機嫌気味にしている。


ゲームやアニメで見るより大分気持ち悪く感じる。


大抵ダンジョンの通路でエンカウントし、先に敵を発見出来れば先制攻撃を与えるのが普通だ。


しかし、黒元は遠距離攻撃の手段を持たないため近づくしかない。


足音を殺しながら近づく。


ゴブリンがふと振り返り、目が合いニチャっと笑った。


嬉々としながら突進してくる。


いつものパターンだ。


飛び上がるため、若干体を沈ませている。


右足に力が入った。


飛び上がる。


空中で口を無様に開きながら、右手の棍棒を振りかぶっている。


……おかしい。


いつもよりゴブリンの動きがよく見える。


セピア色の世界でオートフォーカスが掛かる。


スローモーションの世界で自分だけがスムーズに動いていた。

 

次の瞬間にはもう殺していた。



「何だったんだ今のは……?」



違和感が体を支配する。


リザルトを確認すると、いつもと違う表記があった。


……レベルが5に上がりました。

……ユニークスキル――スキルロブを獲得しました。

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