第2話 八方美人
この町をじっくり歩くのは何年ぶりだろうか。俺は今1人で登校している。
幼馴染はどうしたって?
それならさっき「噂されても嫌だし、別々に登校しなさいよね」とのお達しを承りました。
俺が道知らなかったらどうするんだよとか親に任されたことをもう放任か?とは頭の片隅に過ぎったが決して鋭い視線になにも言い返せなかったと言うわけではなく彼女の言うことに一理あったので別々に登校することとなった。
暫く歩くと目の前に大きな門が現れた。
そう、それは山目学園の校門であった。レンガ調の柱に金属製のよく分からないが凄そうな意匠が施されたアーチ。以前訪れた東京工○大学の校門に似ている。
少し歩くと生徒玄関があり、ひどくアウェー感を感じる。至極当然ではあるが俺は今日から転入生なわけで周囲からは「誰だこいつ」みたいな視線を感じた。
取り敢えず俺は担任の先生に挨拶をしようとして職員室を訪れた。その途中でエアガン片手にはしゃいでいる挨拶してきたオッサンが居たが、適当に流して担任の先生の元へと向かう。「侑くんは朝のホームルームで自己紹介してもらうから考えといてね」といわれた。
山目学園は私立である。学費の割には整いすぎている施設は学園長のポケットマネーで賄われている。廊下を歩けば全面ガラス張りだし、体育館の他にもテニスコートや弓道場、さらにはスケートリンクもあるらしい。学園長太っ腹である。
さて、俺は今教室に扉の前に立っている。そして先生によって呼ばれて教室に入るとそこは30人以上はいると思うと同時に今日からこの教室で授業を受けるのかと思うと感慨深いものを感じる。勅使河原美香もいた。窓側の一番隅の席が一つ空いているのであそこに座るのかと思いながらも自己紹介をした。
ホームルームが終わり、俺は特に話しかけられることはなかった。まぁ新参者はこんなもんかと少し悲しくなっていると自分の席に座って静かに本を読んでいると前の席の男子が話しかけてきた。
「俺の名前は鈴木圭って言うんだ。宜しくな!困ったことがあったら気兼ねなく相談してくれ」
そう言われて周囲を見渡す。不意に美香と目が合ったような気がして視線を逸らした。
「あぁ、あれは勅使河原さんな。なんでも学園一の美少女とも噂されている人だ。」
なるほど、彼女の周りの評価からして猫を被っているようだ。美香らしいといえば美香らしい。
「普段勅使河原さんはどんな感じの人なんだ?」
俺は少し圭に美香のことについて聞くことにした。そしたら圭は俺の予想通りの返答をした。
「ん〜、そうだなぁ俺のイメージとしては勉強できてスポーツ万能、おまけに誰とでも分け隔てなく接している優しい女神のような人という印象がつよいな」
「そういうやつって八方美人っていうんじゃないのか?」
「侑は勅使河原さんのことが嫌いなのか?」
「いや、まぁ、強いて言うなら裏がありそうってだけだな」
そう言って俺はバレない程度の言葉をぼかしていったのだった。
「Oh………」
「どうした、圭?何か俺の背中についてるのか?」
そして後ろを振り返ると………
「ねぇ、話の最中に悪いんだけど、ちょっと和泉君貸してくれないかな?」
いつから話を盗み聞きしていたのだろうか?今日は恐喝かな?
「きょう」だけに、ハハッ。
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