2年ぶりに再会した幼馴染、学校では才女だが俺だけは知っている。
ラフなにゃっぴー
第1話 幼馴染と高校デビューと
俺には幼馴染の女子がいる。
高校こそ違えど幼稚園から中学に至るまではそいつとはずっと同じ学び舎で過ごしてきた。
もはや腐れ縁と言っていいまである。
彼女の名前は勅使河原美香。
俺は彼女のことを一言で言い表わすならこう言うだろう。
『才色兼備』と。
思えば小さい頃から俺は彼女に一度だって勝ったことは無かった。
俺が幼稚園の年長の頃小学校に入る前に差をつけようとして九九を必死になって覚えて自慢したところ彼女は100の段までをスラスラと流暢に話しやがった。
他にもいろいろとチャレンジしてみたが彼女は自分の斜め上を行く行動ばかりで驚かされっぱなしだったことをよく覚えている。思えばキッカケはそんなことだったのかもしれない。彼女は「天才」だったのだ。
小学校に通い始めても変わらなかった。低学年の頃にはすでにマルクスの『21世紀の資本』を読んでいたし、中学に入ってからは推理小説の前半部分だけを読んで犯人を言い当てていたし、科学の実験から新たな物理法則を生み出していた。
この頃になると彼女と自分を比べることすらできなかったし、むしろ畏敬の念を抱いていた節もある。
だか、いくら天才であっても人には欠点というものがある。天は二物を与えないのだ。二物以上与えていると思うだろうが言葉の綾というものだ。
言及しないでチョンマゲ。
それはさておき本題に入ろう。
彼女の欠点それは、「口が悪い」のだ。
それも特に俺に対して。特に昔から一緒にいる俺にはあたりが強かった。まあエピソードはそのうち話そう。
さて、ここで疑問に思う人もいるだろう。
才色兼備なのに容姿について触れていないだって?
そんな事は追々話すとして、こんな疑問を抱いた人がいるかもしれない。
「タイトルには2年ぶりに久しぶりに会ったと書いているのにも関わらず、どうしてあたかも常に一緒にいたみたいな発言をしているのか?」と。
それの答えは単純明快。
俺が親の都合で中学2年の時に引っ越さなければならなかったからだ。
彼女との別れ際に何をしたのかはまた別の機会に。
ダラダラと長話をしすぎた感は否めないが、自己紹介をしようと思う。
俺の名前は和泉侑(いずみたすく)。文字通り人を助けると言う「助く」隋朝の第3代皇帝の恭帝 侑(きょうてい ゆう)の「侑」を掛けた名前らしい。というか親が言ってた。始めて聞いた時はマニアック過ぎて分からねえだろと思ったが……
それはさておき、
俺は現在ちょっとばかり勉強が出来る普通の高校生である。
それ以外は何も無い。
カッコいいことを言っているようにも見えるが実際は世間一般で言うところの「ボッチ」である。教室の端の席にいるタイプの。
しかし運命の悪戯か、高校に入学してから初めての夏休みを有意義に過ごそうとしたときに突然父親に呼び出された。
「侑、話しがある。」
いつになく真剣な父親の顔の表情に少し気後れしたが、体勢を整えて話を聞くことにした。
「侑にはわるいんだが、父さんまた転勤することになったんだ。嫌だったら一緒についてこなくても構わないんだけど、そしたら母さんも向こうに行くと言っているし…お前1人でここに残ることになるんだけどどうする?」
華の高校生活を送るはずが急に窮地に立たされてしまった。1人暮らしとは大学まで親に寄生しようと目論んでいた俺にとって死刑宣告に等しいようなものだった。
よって俺には選択肢は一つしか無かった。
「わかったよ。行けばいいんでしょ、行けば」
そういうと父さんはパンっと手を叩いていった。
「理解が早くて助かったよ、侑。実は転勤といってもまた故郷に帰るようなもんなんだけど……」
俺は何となく嫌な気配がして顔を引き攣らせた。まあなんとなく内容は予測できたが多分絶対あいつがいる街だ。見つけられないようにしないとなぁ……
「おおい、大丈夫か?なんかボッーとしてるぞ。」
「大丈夫、大丈夫、多分」
「そんなに嫌だったらついてこなくてもいいんだよ。」
「そんなこと言ってないでしょ、大丈夫だってば」
「ああ、そうか、急にこんな事言われても実感ないよな。」
「そんな事ないよ。で、いつごろになるの?」
「多分11頃になると思う。」
そうか冬か。それならまだ準備しないとな。
「そういえば学校どこに行けばいいん?」
「まあ、お前の学力だったら山目学園がいいかもしれないな。」
「山目高校かよ、またどうして」
「勅使河原さんいるだろ。あそこの娘さんと仲良くしてくれって頼まれているんだよ。ほら、お前友達作るの苦手だろ?」
「なんで友達少ないのを知ってるんだよ!ていうかどうして美香が出てくるんだよ。まさかとは思うが親同士で繋がってるんじゃないよな?」
「よくわかったね、まあそういう事だから。」
嘘だろ……またあいつと会うことになるなんて………
そんなこんなで今日の日付は11月1日。
波瀾万丈もなく場面が変わったのは何故だって?そんなの決まっているじゃないか。
俺は「ボッチ」だっていっただろう?つまりそういうことであることは言わずとも分かるまい。
今日の準備をしていたところにあの俺にはまるで悪夢のようであり、夢であったらどうか覚めないでくれと思わざるを得ない呼び鈴が。
ピンポーン。
「ヒェッ」
「どうしたの、侑。お待ちかねの美香ちゃんよ。出て行ってらっしゃい」
「嫌だよ、母さんが言ってくればいいじゃないか」
「あんたは昔からそうだだったねぇ。でも、待たせるのも失礼だからいってらっしゃい」
(はぁ、マジで嫌だよ。)
俺は玄関に行き扉を開けた。
そこに居たのは長髪の大和撫子美少女だった。一言で表すならば女神像のよう。制服のスカートの下には黒いタイツを穿いていて、モデルのようなすらっとした脚がより極まっているようだった。
俺は今、幼馴染の変わりように衝撃を受けていた。
「何ジロジロ見てんのよ、変態」
開口一番に彼女は俺にそう言い放った。
容姿が変わっても中身は昔と同じようだ。
「んっっ、お前もしかして高校デビューか?昔と雰囲気全然違うぞ」
「言っとくけど、そのこと絶対に学校で言わないでよ。ていうかそんなアンタは昔から何も変わっていないじゃない。へっぽこ丸みたいに人格かえなさいよ。」
「なんで首輪取って人格変えてオナラ真拳使わなきゃないんだよ。おかしいだろ」
「そんなツッコミしている暇があったら自分でも磨きなさいよ。まぁ、時間だからうだうだしないで行くわよ。ほら、さぁ」
「ちょっ、手引っ張んな!」
俺は手を引かれながら初日から登校することとなった。
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