6話 ナノマシン

「さて、じゃぁ話の続きをしようか。」


「はい、お願いします。」




愁善さんは目を閉じて少し上を向いた後ゆっくりと目を開けて僕を見て話を切り出した。




「君がかつさんに舐めさせられたのはEVEの元となるナノマシンだ」


「え?EVEの元、ですか?」


「そうだ、まだ全てを話す訳には行かないが君の体内には世界中が戦争を起こしてでも欲しがるようなナノマシンが入っている。」




愕然とした、僕が想像以上の事実をつきつけられてどう答ていいのかわからない。


何故それだけのものが僕に託された、なんでと疑問が次から次へと湧いて答えが出ない。




「僕からそれを取り出せばいいんじゃないですか・・・?」


「それは出来ない。」


「何故ですか!?それじゃ僕はこのことが世間にバレたら殺される可能性があるってことですよね!?」


「・・・そうだ」


「取り出せるならそうしたい、しかしオリジナルである君の中にあるナノマシン:通称アダムは一度生体登録されるとDNAと同化してしまい取り出すことは出来ないんだ、ただ一つの方法を除いて」


「たった一つの方法?」




            「宿主の死だ」




愕然とした、死なない限りこのナノマシンと付き合い続けないといけないのか?


呪いじゃないか、そんなの・・・


そんな僕の気持ちをよそに愁善さんは話をつづけた。




「かつさんは、自分が撃たれたときアダムによる肉体再生は不可能と判断したんだろう。


だから自分の死のタイミングで君へアダムを渡した。それが権限移譲だ。」




何をどうしていいかわからない、足に力が入らないし身体がフワフワする。。。


僕はこれからどうなるんだ。




「さっき少し説明したが、EVEはあくまでアダムというブロックを組み合わせて作られたウィルス撲滅タイプのナノマシンだ」


「僕の中にあるのはいったい何ですか?」


「なんでもないし、何にでもなれると言ったほうがいいな」


「訳が分からないって顔をしているな、でもそれが本当に答えなんだ」


「オリジナル故に、ブロックの組合せでウィルス撲滅タイプ、肉体再生タイプ、筋力強化タイプ、脳処理強化タイプ等に変化する」




確かに、今の時代EVEを解析した世界各国は設計図を基に先程愁善さんが話したように、四肢欠損をした人に適用する肉体再生の医療タイプや筋力を強化して建前上建設作業やスポーツ性能の向上を目的とした筋力強化タイプ等様々なナノマシンが開発され世界は一段階未来へ進んだ。




「日本が過去に公表したEVEの設計図はあくまでウィルス撲滅型としてしか公開してない。」


「つまり、世界が知らないナノマシン構成ブロックが僕の中にあると?」


「理解が早くていいね、その通りだよ」




それは、、、世界を揺るがすことだ。EVEの設計図を世界に公表しただけでもこれだけ人類が進化したのだ。未知の元素を発見したのと同じレベルの話だ。




「僕は・・・これからどうすればいいんですか?」


「暫くは何もしないでいい、普通に過ごしてくれたまえ。ただ君は学生だったね?」


「はい、中学3年生です。」


「益々巻き込んでしまって申し訳ないと思う。そうだな、高校については何か行き先は決めているかね?」


「いえ、これから進学先を決めようと考えてました。妹の病気もあったので公立を受けようと考えていましたが。」




なんでこんな状況で進路相談みたいなことをしてるんだと少し変な気持になってしまう。




「もしよければ日本政府が運営している国立 黒曜こくよう高等学校に推薦してかまわないかね?」




僕はあまりの好条件に息をのんだ。


国立黒曜高等学校と言えば翡翠ひすい瑪瑙めのう琥珀こはくに並ぶ国家運営の日本4大次世代育成機関じゃないか、身体能力向上等のオーダータイプナノマシン適応が高く通常の人間では得られない運動能力やそれこそ科学の先を超えた魔法のような事まで出来る生徒がいると、なかば都市伝説のような高校だ。




「ちょっと待ってください、話は大変うれしいのですがそんな超精鋭があつまる次世代の人達がいる高校に僕が行ってもゴミ扱いされるだけですよ!」


「何を言っているのかね?その次世代の子供たちが宿しているオーダーは君が宿しているアダムの・・・こう言ってはなんだが劣化版だぞ。」




頭が痛くなってきた、尚更そんなとこにいって僕の中にあるものがばれたりしたら大変じゃないか。




「私たちとしては君が私たちが直接関与できない高校に行かれるより融通の利く高校に行った方が双方いいのではないか?という提案なんだ」




確かに、そう言われると融通が利く高校のほうが良い気もするけどうまく乗せられてる気がする。




「それにな、どちらにしてもアダムを理解し、ある程度使いこなせるようにすれば君にも日本にとっても悪いことじゃない。自分自身を守り、ひいては家族を守れる力の源が君の中に眠っている」




人から狙われる事が無いとは言い切れない所にきてしまった自覚はある。


自分を家族を守る力か、




「ちなみに、その国立4大高校に通う生徒で優秀な成績を収められている生徒はその将来性を買って国から補助金という名の給料が与えられる。妹さんを楽にさせられるよ?」




汚い!なんて汚い大人なんだ!そんなこと言われたら妹の顔が頭から離れないじゃないか!


くっ、、妹のこれからの生活を楽にさせたい。。。アルバイトじゃ限界もあるしリスクもある。。。


こんなの初めから提案された時点で選択肢がないじゃないか!




「わかりました、、、その提案を受けます。。。」


「おお!そうか!それは重畳ちょうじょう!ではそのように手配しておこう!今日は疲れただろう、ベッドのある部屋に案内させるから今日はゆっくり休みたまえ。明日君を自宅へ送ろう。」




そうやって汚い大人の策略に嵌められたまま部屋へ案内された。








ベッドに横たわり今日の出来事を考える。


ナノマシンを世に広めた首相が生きていた(まぁ既に亡くなられてしまったが)


多分僕に渡されたナノマシンが関係あるんだろうなぁ




僕の素性が世間にばれたら下手したらスパイとか送られるのかな、暗殺とか。。


そう考えたら寒気がした。




世界の軍力は核兵器という理不尽で、ありとあらゆるものを汚染する兵器に頼ることはしなくなった。


代わりに各国がナノマシンを進化させ、人ならざる能力を有した兵士が生み出されていった。


局地戦闘制圧型強化人間Variantを開発したのは歴史の教科書に載るくらい有名な話しだ。


有名なのは






アイルランド連合の聖剣アーサー


太平洋連邦合衆国の銃帝ガンナー


大東亜共和国の拳帝マスター


ユーラシア連邦の氷雪姫プリンセス


欧州聖国の聖女ホーリー






等がめちゃくちゃ有名で各国の代表が会談とかに出ている時に必ず近くにいる。


欧州聖国だけは特別でその人自身が代表も務めているから謎に包まれている。


日本にも代表のような人がいるが他の国に比べると見劣りしている。




そんな人たちがいる国に僕が狙われたら一瞬でモルモットにされて人生終わりだな。。。


結局印籠についても何も触れないまま解散しちゃったな。


そんなことを考えていたら疲れからかそのまま微睡に任せて僕の激動の一日は幕を閉じた。

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