5話 救い
「では、そろそろ本題に入ろうか。君は鷹司さんに何か他に託されなかったかね?」
僕はどうこたえて良いのか分からず慌ててしまった。
「ハハハ、すまん脅すような真似でいってしまったね」
「そうですよ、愁善様は顔つきが怖いんですから少年に対して失礼すぎます」
男性に、先程の女性がきつい言葉で愁 善さんに向かって窘めていた。
この二人はどういう関係なのだろうか?上司と部下にも見えるし仲のいい友達にも見えてとても不思議な関係に見える。
まぁ子供の僕が想像したところでね。そんなことより質問に対してどう答えるか考えないと駄目だ。
「さっきの質問ですが鷹司。。。」
ここで気づいた、鷹司 勝嘉って日本常任理事国入りを果たした時の総理じゃなかったっけ。。。
日本史で聞いた記憶がある。あれ、でもそれもう何十年前の話だし生きてたとしても百歳はとっくに超えて生きているはずがない。え、でも御老公ははっきりと鷹司 勝嘉と言っていた、どういうことだ。
「今、君が頭の中で考えていたことは間違いではないよ。君が出会った老人は間違いなく元総理の鷹司 勝嘉であっている」
見透かされているかのように答えを教えてくれた。
「ちょっと待ってください!いくら子供の僕でもそれはおかしいと分かりますよ!そしたら100歳なんてとうに超えてる年齢じゃないですか!」
「そうだね、その認識であっているよ」
「そして生きているなんて誰も知りませんでしたよ!日本史の教科書に載っている人ですよ!?」
流石に荒唐無稽すぎる話で僕は声を張り上げてしまった。
「落ち着けと言っても難しいのは分かる、だが答えて欲しい、先程の質問に。」
愁 善さんは、嘘は許さないと言うよな目で僕をじっと見てきた。
託されたのは印籠だけで、他に何も貰ってないし答えようがない。
他に何かあっただろうかと考えていた時に御老公の血を舐めた事を思い出した。
「あっ」
「何か思い出したかね?」
「託された訳ではないんですけど、、、血を舐めさせられました」
「!!!....そうか、他には?」
「なんか、権限を委譲するとか言ってた、、、気がします。」
それを話したら、目を瞑って眉間を揉むようにして沈黙が流れた。
側にいた女性が愁善さんに近づきしゃがみ込み太ももに手を添えて慰めるような仕草をした。
「かつさん。。。先にいっちまうのか、この少年に託したのか、、なんで。。。」
絞り出すように、納得できないように、後悔するようにつぶやいた。
「愁 善様、彼が困っております。」
「あぁ、すまない。陽守君、君は鷹司の血を接種し権限移譲という言葉を聞いたのは間違いないね?」
「はい、血を舐めてそう言われてから息を引き取ったのを僕は間違いなく確認しました。」
「そうか、話は変わるが今の世界をどう思う?」
「どう思うとは?」
いきなり世界についての質問なんて聞かれてもわからないよ!
何で、そんな質問されてるの!?帰って寝るだけだったのにどうしてこんな目に・・・
困惑と怒涛のトラブルの連続で疲れ果てているのにこれ以上何を話すと言うのか。
「ははは、すまない。流石にいきなり過ぎたか。そうだな、今の世界の病気に対してということではどうかな?」
病気か、EVEが発表されてから世界は研究開発を進めて病気の無い世界を作ってきたしほとんどの人達がその恩恵を受けて健康的な生活をしていると思う。
「ほぼ病気というものが無い世界ですかね?」
「そう、それが一般の人達の見識だ」
「違うんですか?」
「いや、その認識も・あっている」
「も、ですか?」
「子供のときによく遊ぶおもちゃがあるだろ色が付いてて色々な形のブロックを組み合わせて車でも家でも船でも作れる物が。」
よく知っている、REVOブロックと言われる知育おもちゃだ。
世界中で愛され様々な遊び方がされている、自動車の1/1スケールとかも昔あったらしいけど。
そこまでいったら専用ブロックでなんか違う気がする。
「昔、日本が発表したEVEはそのブロックを組み合わせてウィルスを撃退するような形にしたに過ぎないんだ。」
衝撃的な事を言われた、15歳の僕でもわかる。
それはつまり、EVEはブロックを組み合わせた一つの完成品にすぎずブロックの組合せ次第では全く違うものに出来るってことじゃないか。
「それは、ただの学生の僕が聞いてもいい話ですか?」
「大丈夫だ、この話はもう世界各国の研究機関が既に把握している。肝心なのはこの先だ」
屋敷の目の前にある湖から聞こえる水音がやたらと耳に響く。
「人間ってのはさ、どうしても力を求めるものでね、EVEの設計図を紐解きブロックを作りだして人間を強化しようとする奴らが出てきたんだ。」
「待ってください!そんな話を僕にしないでください!なんで僕にそんな話をするんですか!帰らせてください!」
おもむろに立ち上がり、これ以上話を聞いたら引き返せなくなる予感がして話を中断させようとしたが
「だめだ、印籠だけなら返したが。かつさんが君に血を舐めさせ権限移譲をした時点で君には聞く責任がある」
有無を言わさない威圧で僕の退路は断たれた。
諦めてソファに座りなおすと、話の続きをされた。
「君が悪いわけでもない、ただただ運が悪かった。しかし我らが君を必ず保護すると約束しよう」
「妹を、これ以上僕を拉致して話をするなら妹を助けてください。」
「妹さん?」
僕はどうやっても帰る事が叶わず一方的に色々聞かされるならと反抗心で要求をだした。
「はい、妹は脳の電気信号不良で動くことが出来ない状態で入院してます。
治療するためにはオーダー品を投薬する必要があります。それを叶えてくれるなら僕は話の続きを聞きます。」
「わかった、直ぐに手配しよう。病院名と妹さんの名前は?」
「〇×病院で陽守 日向です」
「
悩むことなく、手配するように動き出してた。
あの女性SP雪璃さんっていうのか、背中まである黒髪で長い髪をポニーテールにまとめている。
切れ長な目が美人というよりカッコいいと思わせる女性だ。身長は高くスマートな見ためで目は純日本人じゃないのかな?青に近いグレー色をしている。思わず凝視していると、
「雪璃君は、美人だからね。でもあまりじっと見すぎると怒られるから気をつけたまえよ?」
愁善さんはからかうように笑いながら話してきた。
「うっ、気を付けます。」
「さて、では君の妹さんにオーダー品を投薬するよう手配をした。これで君はもう私の話を聞かなければいけなくなった。いいね?」
「はい、妹を救っていただけて話を最後まで聞く覚悟ができました。」
「では、話の続きをしよう」
夜はまだまだ長いようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます