4話 接触

一刻も早くその場を立ち去らないといけないと思って速足で自転車へ戻り自転車をこぎだした。


血が付いた印籠をポケットにしまいこみ自宅があるアパートへと帰ってきた。




「ただいまぁ~」




「お?お帰り、ご飯は作っておいたから温めなおして食べなさい。今日はずいぶんと遅かったな」




「うん、バイト帰りに少しコンビニ寄って漫画読んでたら遅くなった」




「そっか、てか随分汚れてるな!?洗濯機にいれて洗っておけ!」




父に言われて思い出した、服がいろんなもので随分と汚れていることに。


慌てて全部脱いで洗濯機に放り込んで急いで洗濯をした。




「怪我はしてないだろうな?」




「大丈夫、別にそういうのじゃ無いから現場でちょっと汚れただけ」




「そっか、あいつに無理に働かさせられてるなら言えよ?父さんから言っておくから」




「大丈夫!大丈夫!本当にそういうんじゃないから!」




父と他愛もない会話をしながら温めた晩御飯を食べて自分の部屋へ戻る




「ふぅ・・・とりあえず言われた通りに連絡するか」




突然の出来事でいまだに整理がつかないけど頼まれたからには果たさないとね


そう考え印籠の蓋を上に引き上げ中身を出した。


小指サイズの試験管に入った黄金色に輝く液体と紙が出てきた。


紙には携帯番号だけが記されていた。




「かけなきゃ駄目だよな、こんな物騒な物僕が持っていても意味ないし」




意を決して番号に電話をかけてみた。




トゥルルル...トゥルルル...トゥルルル...トゥルルル........




「はい」




相手は物凄く落ち着きのある少し嗄れた声の男性だった。




「あの!僕!なんていえばいいのか・・・」




いきなりどう説明していいのか分からず軽くパニックしてしまい肝心なことが飛んだ




「君は誰かね?間違い電話かい?」




相手の男性に切られそうになったので慌てて返答した。




「違います!落ち着きますので少し待ってください!」




スゥ・・・ハァ・・・よし大丈夫




「僕は、陽守 尊と言います。」




何とか自分の名前を名乗ることが出来た、ここから要件を言わないと




「どこから話せばいいのか。。。。」




と迷って考えていた時に御老公が名前を言いなさいと話していたのを思い出した。




「鷹司 勝嘉という人からあなたへ連絡するよう言われました」




「ガタッ!」




電話口の向こうで何かが倒れた音が聞こえた。




「それは本当なのかい?どこでその話を?」




男性からの質問に少しずつ答えて行き数分が経過した




「ふぅ。。。大体の話は理解した。君はかつさんに言われて印籠を託されたってことか。。。くっ


、なんで先にいっちまうんだ。。。かつさん。。。」




相手の男性は泣くのをこらえるように声を絞り出していたことに二人は友達なのかな?と考えながら相手が話すのを待っていた。




「大体の状況はわかった、先ず土方コーポーレーション周辺を封鎖しないとな。君には悪いが事態は一刻の猶予も許されない。申し訳ないが私が直接そちらにこれから伺おう。」




そう言われ、住所を伝えて待つことになった。


父にもバイト先の知りあいの人が今後のアルバイトについて至急相談したいことがあるらしいと誤魔化しておいた。父さん、嘘ついてごめん。




30分を過ぎたころスマホが鳴った




「はい、はい。わかりました、今から出ます。」




相手からの電話だったので印籠を持って玄関に向かった。




「父さん、少し出てくるね。」




「おう、あまり遅くなるよな。既に深夜の時間帯なんだから」




親子の会話を軽くしてから玄関を出る、階段を下りた先の道路に御老公が乗っていたのと同じリムジンが止まっていたので近づいてみる。


また後ろから変な車がつっこんでこないよな?と不安になりながら。




後ろの窓が開きオールバックにした60代に見える男性が顔を出した。




「君が陽守君かね?」




「そうです、あなたが先程電話した相手であっていますか?」




「そうだ、失礼した名乗るのが遅くなって申し訳ない。愁善と呼んでくれ。」


「立ちっぱなしで話すような内容でも無いからまずは車に乗ってくれたまえ君に危害を加えないと誓おう」




そう言われ、SP?の女性がおりてきて開けてくれたドアに入り込み座る。




「よし、ではこのまま例の場所へ行ってくれ。」




「よろしいのですか?その少年に所在が知られることになるのはリスクが高いと愚考いたします。」




「いいんだよ、かつさんが最後に頼んだ事を律義に守ってくれた少年に我らも礼を尽くさねば恥だろう」




「わかりました、陽守君失礼しました。」




SP?_の女性にそう謝られ慌てて大丈夫ですよと返しておいた。


それより渡してすぐ終わりになると思ったのに何故か話がどんどん広がっている気がするんだけど・・・




「あの・・・印籠を渡すだけでいいと言われてたのですが・・・」




「あぁ、かつさんからはそう言われたんだよね。でもごめん今後の君の為にも絶対ついてきた方がいい。」




「はぁ、、わかりました。だけど父も心配するので一言言ってきていいですか?」




そう言うと、愁善さんが女性に対して一度父に説明してくるよう命令した。


そこから更に数分待ち女性が戻ってきた。




「お待たせしました、御説明と何かあった際の連絡先を渡しておきました。」




「よろしい、それでは向かうとしよう」




僕は状況が飲み込めないまま愁善という男性に連れていかれ車を走らせること1時間。


クルマは市街地から遠く離れ日本唯一といわれる一方通行の峠道を登り湖を望む建物がある屋敷へ到着した。


門の前や建物の入り口にSPが厳戒態勢で立っており普通の身分の人ではないだろうと子供の僕でもわかった。




「こんな所まで連れてきてしまって申し訳ないね。何か飲むかね?」




「はい、できれば冷たい飲み物をください。」




流石に1時間以上であったばかりの男性と女性が乗っているリムジンに乗っていたら緊張で喉がカラカラだった。


冷たい麦茶を出されて一気に流し込む、漸く一息付けたと思って気が抜けた。




「では、そろそろ本題に入ろうか。君は鷹司さんに何か他に託されなかったかね?」




男性は優しいようで有無を言わさぬ威圧をかけて質問してきた。


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