2話 遭遇

「お疲れ様でしたぁ!」




「おう!今日もお疲れ!」




21時半にアルバイトが終わり親方へ挨拶して帰宅しようと自転車をこぎだした。




「あ~、今日も疲れたなぁ。目標まではまだまだ足りないから頑張っていかないとなぁ」




一人愚痴りながら考えていた。


学校が終わってから真っすぐアルバイトへ向かい4時間程働いても一日4千円。


半年以上続けているが接種金額に対してまだまだ足りなすぎる。


手っとり早く稼げたら一番いいんだけどそんなうまい話があるわけないか・・・


特効機は基本的に保険対象。


しかし健康保険適用対象はあくまで人類がかかりやすい病気だけである、インフルエンザや癌などが主である。


妹のように未知の病気などに対してはオーダータイプになる為保険が適用されず通常無償接種のものが莫大な費用を支払うことになる。


ちなみにオーダーの場合は一律500万円になる。




そう計算しながら自転車をこいでいると巨大な敷地の横を通っていく、




「土方コーポレーションかあ,,,」




言わずと知れた土方 清十郎が起こした大企業である。


EVEを開発しベンチャー企業だったのが一躍世界に誇る大企業にした。


当の本人は、謎の失踪をし後任には当時の厚生労働大臣が退任し会長職についたのは有名な話だ。


切り捨てとも政府の陰謀だとも揶揄され近代史に残るほどの事件であったらしい。




「地元割とかしてくれないのかな・・・まっそんなうまい話があるわけないか」




そう思いながら敷地横の道路を進んで正門が近くになったところ敷地内から黒塗りのリムジンが出てきた。右折しようとしてウィンカーを出していたので自転車を止めた。


その時、凄いスピードを出したSUVの車が僕の後ろから迫ってきてリムジンに突っ込んでいった。


凄まじい衝突音と衝撃、僕は慌てて自転車を捨てて近くにあった電柱の裏へ逃げた。


リムジンからはSPらしき人達が出てきて、SUVからは目出し帽をかぶった日本人ではない体格の男たちが出てきた。




「御老公を御守りせよ!!!いいか!自分の命等二の次と考えろ!!!」


「「ハッ!!!」」




SP達が後部座席のドアを守るように陣取り体格の良い男たちと向かいあった。




「~~~!!!・・・・!!!」




体格の良い男たちは何語かわからない言葉で他のメンバーに声をかけたと思ったら


座席から銃火器を取り出した!




まじかまじかまじか!ここは日本だよ!?なんでそんな物騒なものが持ち込まれてるの!?


理解できないまま電柱の陰に隠れて身動きができないでいた。




カシュッ!カシュッ!と聞きなれない音が聞こえたと思ったら倒れていくSPの人達、


しかし撃たれたと思われるのに数秒後には何故か平然と立ちなおした。




なんで!?え?!なんで?何が起きてるの!?もしかしてこのSPの人達はソルジャー!?


各国がウィルス撲滅のあとにEVEをベースとした軍拡に手を出し始めた。


当初日本は国連に対して猛批判を行った。人類を救うためであって殺すための改造等あってはならないと、しかし大東亜共和国が最初に改造をした特効機を注入したベイビーワンを誕生させた。


ベイビーワンは1歳にして驚異的な運動力と言語力をみにつけた。


当時は神の子と言われたが、5歳に特効機の暴走により死亡ということにされたが当の国はEVEの設計図に問題があると意味の分からない批判を展開。世界中が呆れて大東亜に向けて批判をおこなった。


その後ユーラシア連邦や、太平洋連合合衆国等が安全性を考えて開発を行うと説明し自国の軍の希望者のみ接種されるとして批判は免れなかったが可決されていった。




まさかあのソルジャーの戦闘が目の前で見れるなんて、、、なんて偶然。。。いやいやいや!


そんなこと言ってる場合じゃないよ!


慌てて陰から戦闘を見守っているとSPが立ち上がり抵抗を見せたと思ったら相手の人達が銃のマガジンを変えて銃撃を再開した。




「銃を恐れるな!我々は直ぐに回復する!何としてでも奴らの暴挙を止めろ!」




SPのリーダーだと思われる人が発破をかけて奮い立たせるが、




「グッ」




と倒れるSP達、回復する様子がない?え?もしかして死んじゃったの・・・・?




「なんだと!?回復してない!?おい!まずいぞドアを使って銃弾をガードしろ!奴らが使っている銃弾は何かおかしいぞ!」




SPリーダーは部下たちに指示を飛ばすが、敵はお構いなしに銃弾を浴びせて行った。




「うっ...申し訳ございません御老公...」




そう言い残し最後まで抵抗していたリーダーと思われる人物も凶弾に倒れた。


敵と思われる人達は後部座席のドアを強引に開き、中から和服を着こなした眼光鋭く顎鬚がかなり長い御老公と呼ばれる人物を引っ張り出した。


敵は携帯していた画面を見て目の前の人物を見比べ同一人物と判断したのか御老公の眉間に向け銃弾を解き放った。




その後すぐに敵と思われる人達はあっという間に車へ乗り込んで闇の中へ消えて行った。


残された死体を目の前に、自分が漸く人の死というものに遭遇してしまったと意識したとたん


胸の内からこみあげるものがあった。




「オゥエエエエェェェ・・・・」




恐怖と悲しみと咽返るような鉄の匂いで、恥も外聞もなく僕は涙と吐瀉物を吐き出しそしてズボンを濡らしていることに気づいた。

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