7話 新しい夜明け
「んん。。。」
重い瞼をなんとか持ち上げて目を開くと見慣れない部屋にいることに気づいて一瞬慌ててしまった。
ベッドから立ち上がり部屋のカーテンを開けて外を望むと美しい湖が眼前に広がっていた。
四季が美しく確か大きい湖では日本で一番標高が高いんだっけ。
そんなことを考えながら暫く湖を眺めていた。
コンコン
「陽守君、起きましたか?朝食の準備が出来ていますので良かったら食べてください。」
ドア越しから雪璃さんの声で促されたので部屋を出て朝ご飯を頂いた。
うん、とてもベーシックな和食だけどめちゃくちゃ美味しかった。
それから1時間ほどしてから自宅に送ってくれるというのでお願いすることにした。
「尊君の妹については、1週間後にはオーダーを投与可能とのことだよ」
「本当ですか!?ありがとうございます!ありがとうございます!」
「良いんだよ、これは私たちの罪滅ぼしみたいなものだ君の背負った物に釣り合わないけどね」
そう言って同乗している車の中で愁善さんは、苦笑して話していた。
それでも妹が完治することは素直に嬉し喜ばしいし、兄として妹を助けられた事が本当に嬉しい。
「バイト先については話を通しておくとは言え基礎学力が必要になるから辞めてもらうことになるけどいいね?」
「はい、元々妹の治療にあてる費用を貯める為に始めた事ですのでバイト先には今日にでも謝罪して辞めることを伝えようと思います。」
「その必要は無いよ、こちらで話をしておこう」
「いえ、これでもお世話になったバイト先の人達に挨拶とお礼を伝えておきたいので大丈夫です」
「わかった、尊君は真面目だな」
快活に笑われてしまった、解せない。
「昨日のことは事件としてニュースになるだろう、報道規制をかけたから元総理としてかつさんの名前は出ないが土方コーポレーションで死人が出た事実は報道される。」
「君が高校に入学するまでの半年はこちらから接触することはしない、お互いに危険だ」
今後の為にも、接触を控えるのは理解できる。妹が治っても事件が起きたり巻き込まれたら意味がない。
「わかりました、僕は受験勉強に専念して黒曜高等学校を受験しようと思います。」
「悪いが頑張ってくれた前、融通させるが学力が著しく乏しいと流石にな、わかるだろ?」
「はい、大丈夫です。バイトが無い分勉強するのは苦じゃありません。自分の命もかかってるんですから」
と、若干皮肉めいた言い方で返答した。
「これは手厳しいな!」
笑われながら流されてしまった、これが大人の余裕というやつなのかな悔しい!
そんなことを話しているうちにアパート前に着いた。
車から降りようとしたとき
「尊君、君には本当に謝罪してもしきれない。私達過去の人間が蒔いた負の遺産を背負わせてしまった」
「正直いまだに現実感がありません、この体についても今は特になにもありませんし。全部夢と言われた方がしっくりくるくらいです。」
「それでもだ、大人として自分達の失敗を見て見ぬふりは出来ない。」
「君のような子供達に大人の事情を背負わせるのは政治家として許されることではない、元だがね」
「政治家は子供達に未来を背負わせるのではなく、未来への希望を抱かせなければならないんだ」
そういって愁善さんは悔いるように、今にも泣きそうな顔で僕にそう話してきた。
「そうだとしても、僕は妹を直ぐに治療してくれるよう手配してくれた愁 善さんを尊敬しています。いきなり何も言わずにとんでもない物を僕に渡した元総理より」
そう話したら、ポカンとした後表情が緩んで微笑みながら
「そりゃそうだね、かつさんよりは私のほうが常識人だな、そりゃそうだ!ハハハ!」
「ありがとう、そう言われて少しは気が楽になったよ。それでは半年後に学校でね」
それから一週間後、妹の入院先へ行き妹が無事オーダーを注入し快調に向かった。
父親は突然の出来事に混乱すると思ったが雪璃さんからあの日の夜に電話での説明を受けていたらしく特に驚くことなく受け入れていた。
僕が非常に偉い人を助けた御礼という事になっていてそれ以上の言及はしないよう言いくるめられたらしい。
父よ、もう少し食い下がって説明を受けていれば僕は背負っているものが少しは降ろせて気持ちが楽になったのに・・・意気地なしめ。
それからの半年間はひたすら勉強とトレーニングを欠かさなかった。
勉強はもちろんのことそれだけでは僕が行く高校なんて通用しないことは目に見えている。
文武両道を最低限こなさなければついていくのもやっとだろう。
回復した妹はどうしてもオーダーを提供してくれた人に直接御礼が言いたいと駄々をこねていたが、忙しい人なのでそんな簡単に会えないことを伝えて無理やり納得してもらった。
ニュースでは土方コーポレーションの眼前で殺人事件が起きた事でニュース番組やネット界隈で様々な憶測がされた。
ただの凶行なのか、それともライバル社による報復、他国からのテロ等、しまいには企業の自作自演で話題を呼びたいだけじゃなかったのかと言われる始末である。
僕から見たあの事件は素人の僕の目からみてもプロの犯行だった。
銃弾を受けても中々倒れることなく守っていたSPの人たち、それを理解して銃弾を変更した敵。
一般人がやることじゃないと理解できる。
あの夜、色々と話したが敵の話は一切話してくれることはなかった。
多分、僕に考慮して変な不安を抱かせないようにしたのかもしれない。
今僕にできることは勉強とトレーニングを頑張り高校に受かることだ。
半年後、無事僕は国立黒曜高校に合格した。
いよいよ、自分の中にあるモノと向き合う時がきた。
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