第7話
男ひとりに女性三名。なかなかに口を開きづらい傾向にある。同性がひとりもいないのも
突然こちらを甘やかす
会っていきなり暴言をぶつけにきたアクティブな女性。
なんだかもう雄魔を毛嫌いしているように見えるヤンデレ。
ハッキリと語れば、雄魔はここにいるだけで胃がキリキリと
「はじめに自己紹介からじゃ」
「もちろんよっ、
「……。そちらの改造学生服は」
「
「キショめ。……私が聞かれたのに、なんで雄魔が答えるの」
キャラクター性があまりにも
さしもの白雪とて絶句して、どうまとめあげたものかと当惑する。
「うぅむ……
「もぉ、冗談キツイなぁ白雪ちゃん! たしかに究極デンパ系ヤンデレと、ストーカー系勘違い男子は濃いけどさ。でも私は常識枠で、」
「二次元幼女にベタベタ甘えようとする
「……どっちもグレーゾーン。アンモラルに
まさに凸凹コンビネーション。その上、お互いが大切に思うパートナーが逆に、お互いのパートナーとなっている
しかし、だ。
「————。こんなクダラナイことで争う
「そうね、さすがに同意見かしら。だいたい、どうにも私たち死んでいるみたいだもの」
あっさりいがみ合いを止めて、
意外にも建設的。脇道に
「白雪、だったか? この状況をどう見ている」
「ぬ。どちらかと問われれば、そのセリフはこっちが言いたいぞぅ。なにせ、
「むしろ問いただしたい。どうして、
まずは話の
すると白雪と運姫は、話し手ではなく聞き手を主張。なるほどテリトリーとしては三次元に部類するこのセカイ、原住民である游戯と雄魔に話を聞き出す方が普通だ。
「どうして、って言われてもな……。すまない、機械はサッパリだ」
「お
幸いにも機械方面に詳しい存在はいた。が、
となれば、
「白雪ちゃん、魔術と魔法のエキスパートよね。思い当たる術式だとか……あるのかしら?」
「おい待ってくれ。そもそも、現実的に考えて魔術だとか魔法だとか——あるワケがないだろ。そんなモノがあれば、
「……それ、セカイで解明されていない物事を前にしても言えるのかしら? 今でも未解明があるのよ、そこら中にね。科学がどれだけ進歩しても、データ演算できない〝何か〟……それを、怪奇現象だけで済ませるなんて
常識からモノを観て、雄魔は
しかし一蹴。
それを示すよう、白雪は物語る。
「魔術だの魔法だのは、まず認めることからはじまる。そこにアルと認め、それから手順を踏んで悪魔契約を
「認める————? ある、のか?」
「どこのセカイでもな。問題は、手順を記録した物品があるかどうかのものでしかない。そして、しょせん契約モノじゃ。相手がこちらを騙くらかして一方契約をしていることもあってのぅ」
我がことのように語り、
「たとえば魔力を単位として数えてみる。一個の魔力でひとつの魔術——そのレートを理解していなければ、どれだけ騙されていても魔術は使えない。まぁ悪魔じゃし、
「世知辛いなぁ……っていうか、そんな気軽なものなのか」
「うむ。じゃから、デタラメに魔力の才能があってもダメじゃ。しっかりとした教養がなければ、ロクすっぽ扱えぬ」
ちいさくかぶりを振る白雪。さも実体験があるかのよう。
「——で? その魔術方面から見て、なにか関連はある?」
「降霊術かもしれんのぅ。或いは錬金術。魂を別に肉体に
白雪は活路を見出せぬ、とばかりに頭を悩ませる。運姫もまた、答えを出せずにいる。
だが、外側から
だから、暗中模索ならざる二人——雄魔と、游戯の
「なぁ、もしやすればあの
「十中八九そうでしょ! ここまで来て疑問系にはならないわよ。しっかり、
「……だが、アイツはこんな俺にも話しかけてくれてだな。うっかり突っぱねてしまったが、アイツは間違いなくイイやつで、」
「ピュアか⁉︎ なによ、これだけハッキリ応接できるのに、アナタってば友達少ない系の子なの⁉︎ ああもう現実世界は謎めいているわよね、まったく!」
世知辛いのはどこも同じらしい。
雄魔のやや悲しき状況が露見したところで、聞き逃せぬ話題がでた。
「む。主賓じゃと?」
「えぇ、そうなの。私たち当選者は、それぞれ人生で最愛の作品をもちよって、その作品内で出てくる推し——いわば人生
「最愛の作品……作品内?」
「……ああ首を
次元の
よもや、空想上の存在に、空想を説くとは思わなんだ。なおかつややこしいのが、画面の向こうで生きる存在たちにとっても、リアルがあるということ。
雄魔や游戯が〝
「お前たちにとってのリアルが俺たちの空想。逆もまた
「……そんなもの、それこそオカルティックじゃのぅ。フィクションがフィクションじゃあなくなる。お互いの
ぬぅ。その主賓とやらは、何が目的でこんな
「それがわからないのよね……。私がそうだから、雄魔もそうなんだろうけれど……推しに会える、ってことを聞かされただけでココロが揺らいだのよ。〝出来ない〟って決めつけることもできず、おめおめ足を運んだもの」
謎が謎を呼ぶ。ひとつ謎を思えば、あらたに謎が浮かんでしまう。
しかし忘れてはいけない。中々に
事の
「……なぁ、マジメに話し込むのがやや恥ずかしくなってきたぞ。結局、俺も、お前も、その……推しに会えるなら行こうかな、ぐらいで来たって話に
「————っ。やめて現実問題にしないで! 言うなればそう、これは二次元キャラクターがここにいるからこそ成り立つ
いやに
されど、ガヤ——それも
「ふむ……。では、その主賓とやらに問答を押し付ければよいワケじゃ」
「ン。じゃあ私、電流つかって遺体の意識を
「心得た。では余が、いわゆるソナタらの現実世界——三次元のセカイに、
飛び
さて、では情報共有もそこそこに、異物ふたりは立ち上がる。
そこでいの一番に運姫がバチリと
「ひとまずふたたび殺す。戻るために」
「ん? んゑ? ヤ、もうちっと説明が欲しいな、とグィァアア⁉︎」
心臓を
そんな不思議空間でも、死は存在するらしい。
「うわぁお。……フシギ空間だと思ってたけど、もしやコスト削減の要素アリ? 置かれた
「……ユウギ。ユウギはコレみたいに殺したくない。だから抱きしめる」
「んんえ? ぬぉお柔らかいな……」
感心と
「ごめんね。一度、殺すよ」
「……人間とは思えないセリフだよね。そして人間に向けセリフでもないねアビャ」
ひどい断末魔とともに、ひとりの女性は、ヤンデレの胸の中に
せめてもの白目を
受け手の解釈次第では、あまりにも変態性の高い死に方だ。それでも運姫は游戯を愛す。それこそ愛のカタチが多様性であるように。
「……ひどい愛憎劇じゃ」
その一連をあますことなく見届けて、白雪はチョークをとりだす。魔力を固めた軟性のそれは、あたかも
「ほぅれ、雄魔を
「はい」
「ぬぉあ蹴り飛ばすな! 思っておったが、わりと
目の付け所はそれよりも、やけに人体を足先だけで宙に浮かすことが手慣れていることだが……
「金属質の小物があるのなら、それを
「あらためて解説されると照れる。恥ずかしいな」
「ソナタだけは分からんわぁ……。掴みどころないのぅ、ホント」
小競り合いも終了。
両者ともに
それは
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