多才な子供⑨
大ホールと中庭をつなぐ、傾斜の緩い階段にローラとゴーディングが座っている。ゴーディングが苛立たしそうに床を踏んでいる。ローラは記憶を回想している。
夜空に照らされて、ゴーディは台の上に横たわっている。子供の周りを大勢の
「お坊ちゃまの魂はどこか遠くへ行ってしまいました」大魔術師が言った。
「もう、戻ってこないのかしら……」ローラはやけに近づきながら聞いた。
「分かりません、」大魔術師はローラから目を離し、下を見た。
「それは彼次第です。彼が戻ってきたいと思える場所にここがなれば、可能性はあります」
ゴーディングの大きなため息でローラは我に返った。
ローラは居ても立ってもいられず立ち去ろうとすると、「ねえ、頼むから、もう少し居てくれないか? 」と彼はその赤い瞳に夕日を受けながら聞いた。
辺りは静寂に包まれており、鳥のさえずりが聞こえ、そよ風が吹いている。
「俺も子供だったんだなあ、戦争にかまけて君だけに子供を任せてしまった」
「そんな、私こそもっとしっかり子供と向き合うべきだったわ」
非難されるとばかり思い込んでいたローラは少しほっとしてゴーディングの横顔を覗いた。けれど、ゴーディングはこちらを見ない。
「戦争のせいだよ。全部戦争が悪いんだ。俺が君と過ごせないのも、子供があんなになってしまったのも、君がヒステリーを起こしてしまったのも」
“ヒステリーなんて起こしてないわ! ”
最後の言葉はローラにとって真実ではなかった。
“でもいいわ、それより今は子供。子供のことを考えなくちゃ”
夫と子供について話すのは、今は楽しい。
「そうよ、貴方も私も悪くないのよ」
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