多才な子供➄
マジスターは約束を守ったが、皆に知られるのは時間の問題だった。
そんな調子でゴーディは、市井に行って剣術武闘会で優勝した。また魔術の模擬戦で、
市民は口々にゴーディを讃えて叫んだ、
「さすが城主の息子だ! 」と誰かが言った。
それに対し、「父上は今、戦場にいます。ここにいるのは母上であり、全ての賞賛は母上に帰すべきです! 」とゴーディはローラの方を向いて叫ぶ。
ローラは、子供が急に変わってしまい心配だったが、それは周りの喝采にかき消された。
“ああ、みんなが私を見ている。私を讃えている”
そう思うとゾクゾクする。
“この子がいれば幸せだわ―――”
ローラの胸にあるルベライトの宝石が光る。
そうしてあの不気味な城の囁きはピタリと止んだ。
***
ゴーディングの戦勝の知らせが届いた時、ローラは中庭脇の花壇を見ていた。
真っ白なグラジオラスを見ながら、自分に運が戻ってきたと思った。
すると、花壇の後ろから小さいローラが満ち足りた様子で元気よく頭を出し、こちらを見てきた。
―――ローラは笑顔になった。
大量に買ったルベライトは結局箱から出さないまま放置してあり、ローラは以前と比べようもないほど子供に寄り添うようになった。
勝鬨の宴は、ゴーディングの戦友、アンゲロス伯の館で開かれた。
場所はローラたちがいる城―フレイ城―の南東。馬に乗りながら向かう途中、ローラとゴーディは地面を歩く人々から尊敬のまなざしを受けた。
貴人しか乗ることの許されない黒い駿馬、そのたてがみは光沢を発するほど艶やかに梳かれており、まるで風が吹けば空を翔けるよう。二人はその馬に乗りながら人々の間を歩いた。
その人だまりから「まあ、エテルヌス様よ。なんて立派でかわいいんでしょう! 」という声が聞こえた。
“かわいい?? ”
驚きのあまりローラは体が熱くなった。
“かわいいなんて思ったこともなかったわ。かわいい……”
ローラは呟くとその響きにどことなく惹かれた。
”この言葉はきっといいに違いない”
「ねえ、私ってかわいい? 」ローラは子供に聞いた。
「はい、お母様はとても
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