多才な子供⑥

――また城内が声なき声に包まれた。 


“私ってかわいい? ”

 厩舎の馬のいななきが、星見櫓から見える月が、落とし格子の巨大な杭が囁いている。


 ゴーディが一人でいくら誉めそやしても、囁きは消えなかった。


 ゴーディは悩んだ。誉め言葉は商品のように母に渡すことができた。しかしは本人だけにしか向けられない。それでも諦めなかった。


「目よ! そらっ! さあ! 見つけるんだ。お母さんが満足するところを見せろ! 今まで得た知識は、いざという時役に立たないものなのか! 違うだろ、さあ、さあ、さあ! もっと遠くへ。僕よ! 僕の頭の領域から飛び出して、もっとお母さんが幸せになるところまで行くんだ――」

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