第623話 近隣の領主との付き合い

 今日の〈クルス〉のショーツは、ちょっと透けている赤色だ。

 具体の箇所は言わないけど、一部が黒紅色(くろべにいろ)になってもいるぞ。


 「あっ、んんん、旦那様の触り方がいやらしいです」


 「官能的なんだから、しょうがないよ」


 「はぁん、裏側とか、付け根の方はダメなのです」


 僕は〈クルス〉の口を口で塞ぎつつ、部屋着を取り払い、おっぱいを始め色んな場所に指を滑らせてみた。

 〈クルス〉はくぐもった声で喘(あえ)ぎながら、僕にしがみついてくる。

 ずっと指先で〈クルス〉の身体を愛撫していたら。


 「あぁん、旦那様は私の身体を自由にされて良いのですが、指先だけじゃ辛いんです」


 と〈クルス〉が苦情を言ってきた。


 「辛いんです」の「です」が、少し区切られて強調されていたぞ。

 ちょっとじらし過ぎて、ちょっぴり怒らせたみたいだ。


 ぐふぇふぇ、指よりぶっとい物が欲しくなったんだろう。

 自信を持って言えるよ、自分の指よりは確実に太い。


 僕は〈クルス〉にキスをしたまま、お尻を抱えて寝室に入っていくことにした。

 閉められなかった寝室の扉からは、僕と〈クルス〉の絡み合う舌の音が、かなり漏れていたと思う。



 僕と〈アコ〉と〈クルス〉が、三人で昼食を囲んでいる時に、〈アコ〉が邪魔くさい予定を告げてきた。


 「〈あなた〉、今までは領主が学舎生だったので、近隣の領主との付き合いは免除されていた感じです。でも学舎生でなくなりましたので、少しずつでも付き合いをしなくてはなりませんわ」


 かぁー、嫌そうな仕事だな。


 「ふん、具体的はどうするんだ」


 「一番近くにありますが、《ハバ領》は領主がアレなので、付き合う必要はありませんわ。ですので、《ハバ》を囲む《ベルモ》と《ビルべ》と《タラハ》へ、親善訪問をしましょう」


 うーん、《ハバ》の領主は〈アコ〉の父親なんだけど、アレ扱いか。

 されたことと、されようとしたことが酷いので、嫌うのは無理もない話だ。


 《ハバ》については、訪問もスルーだけど、話もスルーするのが得策だよな。


 「そうか。《タラハ》へは一度行ったことがあるけど、《ベルモ》と《ビルべ》はどんな町だったかな。両方ともそれほど大きな町じゃなかったはずだな」


 「《ベルモ》の《ベルモ男爵》は、温厚な性格で四十歳くらいの男性ですわ」


 〈アコ〉は、貴族のことを良く知っているな。


 「王都に比較的近い立地ですので、農産物を王都へ供給しているが主な産業です。過去にはうちの領にも農産物を輸入していたのですが、今は農産物を輸出する競争相手となりつつありますね」


 〈クルス〉は、こんなことをいつ調べたんだろう。


 《ベルモ領》は、農産物でライバル関係になっているのか、ギスギスした訪問は嫌だな。


 「《ベルモ領》に行く時は、かなり注意が必要なんだ。それにしても、二人は良く知っているな」


 「ふぅー、学舎の授業で習いましたわ。〈あなた〉は、覚えていないのですか」


 〈アコ〉がジト目で見てくるけど、これはアレだな。

 ジト目から蕩(とろ)けた目になるヤツで、夜のジトビチョへにむけての良いスパイスだ。


 「夫となる方の領地に関することは、嫌でも頭に残るものです。旦那様は、ご自身のことには無頓着(むとんちゃく)なのですね」


 「そうなんだ。〈クルス〉の言うように、自分のことは気にしていないんだよ」


 「はぁー、〈あなた〉は、〈クルス〉ちゃんの嫌味を分かっていないのですか」


 何だって、〈クルス〉は僕をバカにして舐めているのか。

 夜になったら、〈旦那様お許しください〉と言うまで舐めまくってやるぞ。


 「うふふ、〈アコ〉ちゃん、嫌味ではありませんよ。旦那様のそう言うところも、可愛いと思うのです」


 「ふふ、そうですね。私達が支えてあげないといけない、困ったちゃんですわ」


 〈アコ〉と〈クルス〉に、盛大にデスられている気がするぞ。


 「ひょっとして、二人は僕をバカにしてない」


 「うふふ、旦那様が可愛いってことですよ」


 毛も生えているし短パンも履いていない僕に、可愛い要素はないと思うけどな。


 「ふふふ、そのようなことを、思うはずが御座いませんわ。それより、次の《ビルべ領》ですが、立地はうちの領と似ています。海に割と近いのですが、その分王都からはかなり離れていますね」


 〈アコ〉の言い方が丁寧過ぎるし、笑って話題を変えやがったな。

 夜になったら、〈〈あなた〉、そんなに丁寧にお触りになったら、泣いちゃいますわ〉と甘く鳴くまで触りまくってやるぞ。


 「《ビルべ領》は似ている所もありますが、岩塩などの主要な産物がなく、ハッキリと言えば貧しい領と言えますね。この領から多くの住民が移住してきているようです」


 「言い忘れましたけど、ここも男爵領で、領主は五十歳を超えていると思いますわ」


 「五十歳のおじさんか。無暗(むやみ)に怒りそうだな、住民がうちへ流失しているんだ、ここも訪問時に注意が必要なんだろうな」


 「それがそうでもないらしいですよ。資金不足で農地を広げられないため、跡継ぎ以外の子供が移住してくれるのを、むしろ歓迎している面があるようです」


 「ほぉ、領地経営って厳しいんだな。うちの領は岩塩があって良かったよ」

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