第618話 裁判官は怖いことに、この僕だ

 〈アコ〉の後宮に帰ったら、〈アコ〉がショートパンツを履いて出迎えてくれた。

 上はショートパンツと同色の、黄色のキャミソールみたいなヤツだ。

 暑いのと僕との生活にも、慣れてきたためだろう。


 ただ、キャミソールの胸の部分が大きく突き出して、先っちょがポツンポツンとなっているぞ。

 引き寄せられるように僕は、ポツンとポツンを両人差し指で突いてしまう。


 「あん、〈あなた〉、お帰りになった早々に何をするんですか。先にお風呂へ入ってきなさい」


 〈アコ〉がプンプンと怒っているけど、キャミソール一枚なのが悪いと強く思うな。


 お風呂から上がりお茶を飲んで、〈アコ〉のおっぱいを揉みながら、今日の話になった。

 ソファーに座ると、〈アコ〉が暑いのにピトッと引っ付いてくるのは、おっぱいを揉んで欲しいとしか考えられなかったんだ。


 「んん、〈あなた〉から見て、《衛兵隊》はいかがでした」


 「そうだな。上手くやってくれると思うよ。人生経験は豊富だし、まだまだ元気だったな」


 「ふふ、良いお顔をされているので、問題はないようですね。でもこの手が問題ですわ」


 えーっと、何が問題なんだろう。

 あっ、そうか。

 生で揉んで欲しいってことか。

 僕がキャミソールの胸元から、手を突っ込もおうとしたら。


 「あっ、続きは寝室ですわ」


 と〈アコ〉がソファーから立ち上がったので、僕も慌てて寝室へ追いかけていった。

 ことが終わった後は暑かったので、また二人とも素っ裸で眠ってしまった。


 〈アコ〉の身体はかなり厚いと思った。

 あっ、怒られる。

 熱いだったよ。



 本日は、《ラング領》の法廷(ほうてい)が開かれている。


 裁判官は怖いことに、この僕だ。

 それも、弁護士もいなくて罪を一人で断罪しなくてはならない。


 ひぇー、裁判がこんなことで良いのだろうか。

 領主の権限があり過ぎなんじゃないのか。


 でも父親が亡くなってから今までは、執事の〈コラィウ〉と兵長が代わりにやっていてくれたようだ。

 負担をかけていたんだな。


 一人で断罪とオーバーに言ったけど、執事になった〈ソラィウ〉と執事顧問の〈コラィウ〉が補佐をしてくれている。

 裁判にかける人の話や周りの状況を、部下も使って調査し事前にまとめておいてくれるんだ。


 今日の裁(さば)くのは、土地の境界線の争いだ。

 隣家のおやじが強引なヤツで、気の弱い父親が強く言い返せずに、年々土地を侵食されてとうとう自分の土地に塀(へい)を作られてしまったらしい。

 気の弱い父親と強引なおやじに、我慢することが出来ず息子が訴えを起こしてきたんだ。


 隣家との争いは良くあることで、騒音や落ち葉などで仲が悪いことも多いようだ。


 強引なおやじの主張は、塀を作った土地は元々こっちの物で、返して貰ったのに過ぎないと言うことだ。

 気の弱い父親の息子の訴えは、人の良いことを逆手にとられて、土地を盗られたと言うことだ。


 〈ソラィウ〉とその部下の調査によって、強引なおやじの性格は強引だと分かっている。

 あれ、調査報告を先に読んでいるから、既に〈強引〉となってしまっているぞ。

 裁判は両者の主張を、公平に吟味(ぎんみ)しなくちゃいけないのにな。


 近所の人への聞き取りでも、強引なおやじは強引ゆえにかなり嫌われているらしい。

 土地の境界線は昔のことなので、正確にここだと断定する証拠は何もない。


 だけど領主が判断を下すんだ。

 もう判決は決まっている。


 領主の損得が絡まないなら、人気が上がる方へ傾くに決まっている。

 近所の人と仲良くすることは、いざという時にとても重要なんだな。


 判決を言い渡すと、強引なおやじは「うぐぐ」と唸って真っ赤な顔で帰って行きやがった。

 かなり反抗的だと思うな。

 早速、《衛兵隊》に重点マークをして貰おう。



 館には女主人の執務室もある。

 僕の執務室の隣で〈アコ〉がそこの主(あるじ)だ。


 少し開いた扉から覗くと、〈アコ〉がメイド達を集めて話をしていた。

 メイド頭の〈ドリー〉と、〈アコ〉付きの〈リド〉と〈クルス〉付きの〈キーレサ〉と〈サトミ〉付きの〈キクレー〉に、後十人ほどいるぞ。

 こんなに大勢いたんだな。


 「メイド頭の〈ドリー〉さんが、この度お目出度になられましたので、新しいメイド頭を任命したいと思います。〈ドリー〉さんには無理のない範囲で、しばらく業務を続けて頂く予定です。それでは新しいメイド頭は〈オクータ〉さんに努めて頂きますので、どうぞよろしくお願いします」


 おぉ、〈アコ〉の女主人は、かなり様になっているじゃないか。

 学舎での勉強の成果か、貴族ってこともあるのかな。


 それにしても、〈ドリー〉は妊娠したのか。

 メイドは全員すでに知っているようだけど、僕に何も報告がないのはどうしてなんだ。

 ちょっと許せない話だぞ。


 夕食の後〈アコ〉の後宮に帰った時に、〈アコ〉を問い詰めてみた。


 「〈アコ〉、〈ドリー〉がお目出度らしいけど、僕は聞いていないぞ」


 「えぇー、〈カリタ〉さんから聞いていないのですか」


 「うん。全く聞いてないよ」


 「うぅ、〈あなた〉、ごめんなさい。誰が報告するかで、行き違いがあったみたいですわ」

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