第614話 お姫様から人妻に変身
「あっ、いけない。夕食の準備を直ぐしますね」
〈クルス〉は慌てて台所へ行ってしまい、僕はソファーで、ぼーっとするしかない。
一日目から、甘い新婚生活とは少し違っているぞ。
〈クルス〉が作ってくれた、ピリ辛の蒸し鶏を「辛い」「美味い」と食べて、お風呂に入って、またソファーでぼーっとだ。
念入りに洗っているのか、〈クルス〉のお風呂が結構長いんだ。
ようやく出てきた〈クルス〉は、フリルをふんだん使用した、お姫様のようなネグリジェを着ているぞ。
上品で可愛い感じだけど、どう見てもあまりセクシーじゃない。
「旦那様、透けていなくてごめんなさい。ふふ、透けているのはしばらく経ってから着ますので、楽しみに待っていてくださいね」
くぅー、〈クルス〉に心の中を、見透(みす)かされているらしい。
少しマンネリ気味になった時に、セクシー武装を装着するつもりか。
何と深謀遠慮(しんぼうえんりょ)なことか、諸葛孔明もかくあらん。
ただ、脱がして裸にしてしまえば同じじゃんとも思う。
早速それを確かめてみようと、僕は〈クルス〉をお姫様抱っこに抱き上げた。
「きゃっ、旦那様。このまま私を寝室に、さらって行かれるのですね」
〈さらう〉って何だ。
誘拐じゃなくて、運んで行くだけだろう。
「ダメなの」
「ううん、お姫様のように、好きな人に、こんな風にさらわれるのが夢でした」
〈クルス〉は、さらわれるのが好きなのか。
少女時代に読んだ本の、強い影響が残っているのだろう。
「〈クルス〉姫、貴方を魔王の城から、さらっていきますよ」
「あぁ、愛しい私の旦那様、どうぞ私をさらってください」
〈クルス〉は、僕の首に手を巻き付けて、目を瞑っているぞ。
ノリノリだな。
僕も少しのって、〈クルス〉の唇に情熱的な熱いキスをしてあげた。
「あふん、旦那様」
〈クルス〉の身体が熱くなっているし、僕の腕も疲れてきたので、今が潮時(しおどき)だな。
ベッドに〈クルス〉を横たえて、ネグリジェを剥(む)いてしまおう。
〈クルス〉を抱き抱えたまま寝室に入り、ベッドの上に置いて、小さなランプを点けた。
「あぁ、旦那様。さらわれた私は、どうなるのですか」
「ふっふっ、それは魔王に無茶苦茶にされるんだよ」
何が魔王だ。
自分で言って恥ずかしいぞ。
魔王じゃなくて、あほうだよ。
「えぇー、旦那様は魔王なのですか」
〈クルス〉に、もう少し付き合ってあげたい気持ちはあったんだが、小芝居はマンネリを感じてからで良いだろう。
僕は〈クルス〉の台詞(せりふ)を唇と舌で塞ぎ、お姫様から人妻に変身させることにした。
耳をじっくりと舐めたら、〈クルス〉はお姫様らしからぬ、甘い息を吐き出し始める。
ただし、ちょびっとだけお姫様を残すため、ネグリジェは全部脱がさず胸の上まで引っ張り上げるだけにしよう。
首の辺りにネグリジェが、ぐちゃぐちゃに固まって、その下の生おっぱいとの対比がかなり興奮を呼ぶぞ。
純白でお姫様のような上品なショーツは、〈クルス〉の足首に引っかかったままになっている。
これこそが、お姫様がやらしく責められて人妻に変わる瞬間だ。
ほぼ裸の〈クルス〉に、人妻がされそうなことを色々とすれば、息も絶え絶えになったので僕はゆっくりと入ってみた。
「うっ」と僕は、息を直ぐ吐いてもう終了だ。
こんなに早くては、とても魔王は名乗れないな。
配下のインキュバスやサキュバスに、嘲笑されて反乱を起こされるオチしか見えないぞ。
「〈クルス〉、愛しているよ」
「私も愛しています。うふふ、〈クルス〉姫は旦那様に囚(とら)われて、とても幸せに暮らしております」
「えっ、〈クルス〉は僕に囚われているの」
「えぇ、何をされても、もう逃げることが出来ないのです。この首にかかっている寝間着は、降ろした方が良いのですか。それとも」
「うーん、そうだな。首から抜いた方が良いな」
〈クルス〉は自分でネグリジェを頭から抜き取って、「ふっ」と笑いながら僕に抱き着いてくる。
何重ものマフラーみたいになっていたから、首の辺りがかなり熱かったんだと思う。
僕は真っ裸になった〈クルス〉を抱きしめて、お尻をモミモミしてみた。
おっぱいは一杯揉んだけど、お尻を揉むのは少し足らなかったんだ。
「旦那様は、私のお尻を揉むのも好きなのですか」
「うん、大好きだよ」
「うふふ、私は旦那様に触られるのが大好きですよ」
〈クルス〉は背中に回した手で、僕の背骨の辺りを触っている。
尻を揉まれながら、キスを強請(ねだって)って妖しく微笑むのだから、もうお姫様とは言えないぞ。
僕が早過ぎたので、まだ満足していないんじゃないのかな。
結婚式で気を使いもう疲れたから、明日は頑張られて頂きます。
お休みなさい。
〈クルス〉に起こされて、朝の支度を整えたら、もう朝食の準備は整っていた。
目玉焼きを乗せたガレットみたいなものが、温かいままテーブルの上に並んでいる。
それを新鮮な牛乳で食べれば、美味しさに目が覚めて活力が湧いてくるようだ。
一緒にテーブルに置いてあった、ドドメ色の薬の効果ではないと思うな。
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