第613話 学校の構想

 水色のスカートは、かなり短いプリーツスカートでフワリフワリと揺れて見えている。

 たぶんこの服が、僕だけに見せる〈クルス〉のお色直しなんだろう。


 大切な服だから、大きめの黄色いエプロンをつけて、ウエストを白のリボンで結んでいるのがとてもキュートだ。

 〈クルス〉が動く度に、〈クルス〉のお尻がフルンフルンとなるから、目が離せない。


 今直ぐスカートをまくりあげて、ショーツのデザインを確認したいところだが、〈サトミ〉が今船に乗って離れて行くと思うと躊躇(ちゅうちょ)してしまうな。

 ここは大人しく夜になってから、初夜を満喫(まんきつ)しよう。

 ただ満喫するほど持たない気もするな。

 

 「旦那様、お昼が出来ましたので食べてください」


 あれ、〈旦那様〉って誰だ。

 へっ、僕かな。

 おっ、呼び方を変えたんだ。

 うぅ、ちょっと照れるぞ。


 「旦那様、大丈夫ですか。ふふ、反応がありませんね」


 「えっと、〈クルス〉、呼び方を変えたの」


 「えぇ、もう妻になったのですから、色々と娘時代とは違ってきます」


 「そうか。慣れるように努めるよ」


 「ふふ、そうしてください。それより冷める前に食べましょうよ」


 「美味しそうだな。頂きます」


 〈クルス〉が作ってくれたのは、スープパスタのような麺料理だ。

 玉ねぎと香草が入った、あっさりとしたものだから、すぅーと食べることが出来た。


 「どうでしたか。式でお疲れでしょうから、量は少なめにしたのですが、足りました」


 〈クルス〉が心配そうに聞いてくるから、ここはドーンと褒めるところだな。


 「うん、量は丁度良かったし、とても美味しかったよ。これからも〈クルス〉の料理が、食べられると思うとすごく嬉しいな」


 「ふふふ、良かったです。朝食は私が作ろうと思っていますので、期待しておいてください」


 結婚式の前に怒らしたようだけど、もう機嫌は直っている感じだな。


 「旦那様、お茶をまだ飲まれますか」


 「うん、欲しいな」


 〈クルス〉が黄色いエプロンを外して、僕の隣でお茶を飲んでいる。


 「旦那様、式の前に睨みつけてごめんなさい。母と腕を組まれたのが許せなかったのです。私の結婚式なのに、どうしてと思ったのです」


 えぇー、〈クルス〉の方が、先に父親と腕を組んだんだろう。


 「僕は怒ってないし、釣合いを保つために、お母さんと腕を組んだだけだよ」


 「うぅ、そうですよね。私が父と腕を組んだのが原因です。もう私の腕は、塞(ふさ)がっていましたからね」


 「でも良かったと思うぞ。〈クルス〉がああしたので、〈クサィン〉は色々と救われたんじゃないのかな」


 「ふぅー、どうでしょう。何かしなくてはと思って、咄嗟(とっさ)な行動だったのですよ」


 「ははっ、参列者も好意的に見てくれたようだし、〈クルス〉とはこれから、何回も腕を組めるじゃないか」


 「ふふ、そうですね。腕はいつでも組めますよね。だけど今は組まないで、腕に絡みつくんです」


 〈クルス〉は両手で僕の腕にしがみついてきた。

 当然ながら、おっぱいはモロ当たりだ。

 僕は〈クルス〉を、覗き込むような体勢になって長いキスをした。


 「んんう、妻になって最初のキスは、とっても甘いです」


 「僕も甘く感じるよ」


 僕はもう一度キスをして、ブラウス越しに〈クルス〉のおっぱいを揉んでみる。

 このブラウスはどうして脱がすんだ、どこにボタンがあるのだろう。


 「あっ、旦那様。それ以上は夜まで待ってください。それより、お薬がまだでしょう」


 あっ、覚えていたか。

 僕はすっかり忘れていたぞ。


 〈クルス〉はソファーから立ち上がり、ドドメ色の薬と水を持ってきてくれた。

 飲まないわけには、いかないようだ。


 「旦那様、このお薬は疲れを取り払い、滋養強壮(じようきょうそう)の効果も期待出来るのですよ。毎日服用すれば健康間違いなしです」


 はぁ、飲めと言われれば、可愛い嫁が勧めるんだから、そりゃ飲みますよ。

 でも僕は、まだ中年のおっさんじゃないので、栄養剤は早い気がするな。


 「うん。分かったよ。毎日飲むよ」


 「はい。それで良いです。それと学校のことなのですが。女子修道院の院長さんにお話を伺ったところ、修道院では産婆(さんば)や女性特有の病(やまい)の治療師の育成も行っていたらしいです。今直ぐは無理ですけど、ゆくゆくはそういう方面も取り入れて行きたいですね」


 はぁー、〈クルス〉はクソ真面目だな。

 結婚式直後に、する話じゃないと思うな。


 「男の子はどうするんだ」


 「ん、旦那様が剣術教室を開かれるのでしょう。それに成績優秀な男の子は、王都の学舎へ行けば良いと思います。女の子の場合は、王都で暮らすとかなり危険な面があります」


 まあ王都は、都会だけあって犯罪者や変な人も多いし、舞踏会で腰を押し付けるようなスケベがいるから安心出来ないわ。

 〈クルス〉自身が、卒舎前に妊娠するようなことをやられた、実体験からそう思うのだろう。


 「そうか。駆け落ち夫妻の例もあるしな」


 「えぇ、女性はいつも割を食うのです。私は違いますけど」


 うーん、〈クルス〉は得をしたってことか。

 違うだろう、損得じゃなくて、後悔していなってことにしておこう。


 〈クルス〉が、この後も延々(えんえん)と学校の構想を話すもんだから、もう夕方になってしまった。

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