第611話 頭を突っ込んで

 〈クルス〉の後宮はもう完成しているので、そこで過ごすことは可能だけど、〈クルス〉は結婚していないのに嫌だと言っている。

 なので〈クルス〉との二日間は、主に学校のことを協議しただけだ。

 ちょこっと、結婚式のことも話し合った。

 普通の結婚式だから、直ぐに終わったけどな。


 〈クルス〉は学校の建物が出来るまで、旧壁に造ったアパートの一室を使用して、寺子屋みたいなのを始めたいらしい。


 信じられないほど真面目で、とてもついて行けないよ。

 僕は「はぁ」「あぁ」と生返事を返すので精一杯だ。


 とりあえず、臣下やメイドや兵士の家族に伝えて貰い、口コミで広めることになった。

 領民の反応と子供達への対応を試し、本格的な開校へ備えるためだ。

 プレオープンみたいなものだな。


 おまけにもう直ぐ結婚するのだからと言われて、キスしかさせて貰えなかった。

 結婚式の後に、溜まりに溜まった僕のもので、ニチャニチャのグチャグチャになっても知らないぞ。



 次は〈サトミ〉の番だ。


 〈サトミ〉とは、しばらく離れ離れになるから、せめて今だけは甘えさせてあげたいな。

 小屋の中でずっと〈サトミ〉の話を聞いて、キスやおっぱいを触って濃密にイチャイチャしていたんだ。

 おっぱいやお尻を触られた〈サトミ〉は、赤い顔をしていたけど満足そうにも見えている。

 僕が〈サトミ〉に夢中なのが嬉しいんだと思う。


 でも〈クルス〉との結婚式の前日、〈サトミ〉とデートをする最後の日は、少し涙ぐんでいた。

 午前中は、〈クルス〉の花冠を作るんだと張り切っていたんだけどな。


 一杯キスをしたら笑顔になったけど、一人切りで王都へ戻るのは相当キツいんだろう。

 後半年なんだから、〈サトミ〉には何とか踏ん張って欲しい。



 〈クルス〉との結婚式の当日、僕は白いタキシードみたいな服をまた着さされている。

 何とも言えない刺繍がなくて、太い赤いベルトがあるだけなので、前よりはずっとましだ。


 花嫁の控え室に行って、〈クルス〉の希望を叶えなければいけない。

 トントンとノックをすると、〈クルス〉の妹が扉を開けてくれて、中には〈クルス〉と〈クサィン〉の奥さんが待っていた。

 いや、〈クサィン〉の奥さんじゃなくて、〈クルス〉のお母さんだよな。


 「うふふっ、二人のお邪魔になりますので、私達は外で待っていますね」


 〈クルス〉の母親と妹が、気を利かして二人切りにしてくれるようだ。


 〈クルス〉の花嫁衣装も白色を基調にしている。

 白にしたのは、僕が言ったせいだと思う。

 膝丈でスリムなフォルムに、太めの赤いベルトで変化をつけている感じだ。

 赤いベルトは僕とお揃(おそろ)いだから、ペアルックみたいで少し気恥ずかしいぞ。


 衣装の裾から伸びている細い脚には、白い絹の靴下を履いているから清楚なんだろうが、僕にはエロチックに見えてしまう。

 初夜を意識し過ぎなんだと思う。


 「〈クルス〉、とても綺麗だ。花嫁衣装も素敵だよ」


 「ありがとうございます。すごく不安だったのですが、〈タロ〉様にそう言って貰えますと、かなり自信が出てきました。〈タロ〉様も雄々(おお)しくて素敵です」


 「〈クルス〉、褒めてくれてありがとう。首飾りをつけて良いかい」


 「はい。お願いします」


 〈クルス〉はお色直しをしないので、最初から《赤王鳥》の羽飾りをつけている。

 そのため花冠は、少し横側へ斜めになるように被されているけど、羽飾りと花冠とでとても豪華だと思う。

 黒真珠の首飾りは、衣装や髪飾りと少し合ってない気もするけど、こんなに〈クルス〉が綺麗だから吹っ飛ばしてくれるだろう。

 僕は金具を回して、〈クルス〉の首に首飾りをつけた。

 黒真珠は艶やかに光って、口紅を塗った〈クルス〉の唇をもっと魅力的に見せているぞ。


 そう思ったら止まらない、僕は思わずキスをしようとする。


 「〈タロ〉様、止めてください。口紅が剥(は)がれてしまいます」


 「えぇー、〈クルス〉とキスしたいよ」


 「私も我慢しているのですから、〈タロ〉様も我儘(わがまま)言わないでください」


 「うぅ、そしたら、どこか見えない場所ならどうかな」


 僕はそう言って、〈クルス〉の下半身へ視線を投げてみる。


 「えぇー、見えない場所ですか。まさか、裾をめくれとおっしゃるのですか」


 僕は頷くと〈クルス〉は「ふぅー」と溜息を吐き、真っ赤になって裾をゆっくりとめくり始めてくれた。

 絹の靴下と白いショーツの間にある、絶対領域が段々と露(あら)わになっていくぞ。

 僕は堪らず裾の中へ頭を突っ込んで、お尻を抱きながらその絶対領域にキスを繰り返した。


 「あっ、あん、〈タロ〉様、もう止めて。キスはもうしないで。頭も動かしてはいけないのです」


 頭。

 頭がどこかに触れていたのかな。


 時間をかなり使ってしまったらしく、扉の外でゴソゴソしているから、残念だけどもうお終(しま)いにしよう。

 続きは結婚してから、きっと出来るだろう。


 「〈クルス〉、時間だからもう止めるよ」


 「当たり前です。時間が惜(お)しいから、私は恥ずかしいことに耐えたのですよ」


 あっ、ちょっとマズいな。

 〈クルス〉を怒らせたようだ。

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