第552話 屋根裏部屋に行きましょう
「今回の任務で〈海方面旅団〉の諸君は、期待を裏切らない働きを見せてくれた。両王子からもお褒めの言葉を頂いているし、特別な手当ても後日支給されるはずだ。ただ一番素晴らしいのは、誰も欠けることなくここに帰って来れたことだ。〈海方面旅団長〉として誇らしく思うとともに、心からお礼を言いたい。〈海方面旅団兵〉の活躍がなければ、今回の戦いは敗れ去っていただろう。君達は王国を救って〈海方面旅団〉に栄光をもたらしたんだ。王国の歴史にその名を残したという気構(きがま)えで、これからも精進(しょうじん)して欲しい」
〈海方面旅団兵〉は、真面目な顔で僕の解散の挨拶を聞いている。
「ごほん。要は、良くやった、お前らはすごい、ありがとう、ってことだ」
「よっしゃー」
「ひゃっほー」
「生きて帰ってきたぞ」
「特別手当が楽しみだ」
喜びが爆発した〈海方面旅団兵〉が、帽子を空に放り投げて歓声をあげている。
その後は、出迎えの家族とあちらこちらで抱き合ってやがる。
〈副旅団長〉に、奥さんと子供が嬉しそうに抱き着いているのも見える。
僕と〈リク〉に近づいてくるのは、駆け落ち夫が一人だけだ。
駆け落ち夫も嬉しそうにしているけど、もちろん抱き合ったりはしない。
いくらイケメンでも、僕の守備範囲ではないんだよ。
あぁ、周りに見える光景が、生きているってことなんだと思う。
僕の生き甲斐である、おっぱいとお尻はいずこに。
《アンサ》の町でその日は泊まり、翌早朝に王都へ向けて出発した。
〈リク〉と駆け落ち夫も一緒だ。
後のことは、〈副旅団長〉と奥さんに丸投げしておいた。
特に奥さんに、くれぐれもよろしくとお願いをしておいたから、何も心配はいらない。
ただ今日の奥さんは、少し機嫌が悪いようだった。
どうも〈副旅団長〉が子供と一緒に早々と寝てしまって、夫婦の時間がなかったらしい。
ふぅー、〈副旅団長〉も疲れていたんだよ。
奥さんのような、スーパーな体力を求めないでやって欲しい。
〈海方面旅団長〉からのお願いだ。
それじゃなくても、どでかいお尻で潰れそうなのに、マジで〈副旅団長〉が潰れたら僕が困ってしまうよ。
王都の〈南国果物店〉へようやく帰り着いた。
もう、心も身体もヘロヘロだよ。
だけど、店の入り口で待っていた許嫁達を見た瞬間に、僕と僕のあそこはマックス元気になってしまった。
許嫁達は、冬休みに《ラング領》に帰っていたから、帰ってきていない可能性も大きかったんだ。
「おぉ、帰ってきたぞ」
「お帰りなさいませ」
「お怪我はありませんか」
「〈タロ〉様、〈サトミ〉は待ってたよ」
許嫁達は、僕に抱き着いて涙を流してくれている。
柔らかくて暖かい身体を感じて、あぁ、生きているなと思ったよ。
僕のあそこが、柔らかくて暖かい許嫁達の身体に当たって、生を実感出来たよ。
〈リク〉と駆け落ち夫も、奥さんと抱き合っているけど、〈リク〉と〈カリナ〉は良いとして、駆け落ち夫は物資とかの後方支援で戦場には立っていないぞ。
感動的な再会は、ちょっと違うんじゃないのか。
まあ他人それぞれだから、良いけどさ。
やっと許嫁達に逢えたと思ったら、信じがたいことになってしまった。
あり得ないことだと思うけど、何と僕は直ぐに溜まっていた執務をやらされたんだよ。
長い間、そりゃ執務はしてないよ。
だけど戦争から帰ってきたばかりなのに、これはあんまりだと思う。
僕も色々と溜まっているんだ。
それはどうしてくれるんだよ。
〈ソラィウ〉が泣きそうな顔で「重要案件で至急のものが複数あるのです」と言うもんだから、人の良い僕は負けてしまったんだ。
許嫁達も「執務が優先です」と言うもんだから、味方は誰一人いない。
すごく可愛そうな僕。
執務の書類には、点々と涙の跡が残っていたはずだよ。
翌朝起きたら、もうお昼前になっていた。
戦争の疲れと執務の疲れで、身体が休息を求めていたんだろう。
遅い朝食というか、早昼(はやびる)というか、よく分からない食事を食べていたら、〈アコ〉が学舎を早退して逢いに来てくれた。
「〈アコ〉、学舎を休んで良いのか」
「ふふ、〈タロ〉様より大切なものはありませんわ」
「ふへぇ、それはありがとう」
「ふふ、どういたしまして。〈タロ〉様、今日は何をされますか」
「何ってか。〈アコ〉は、したいことがあるの」
「ふふふ、それはもちろん。〈タロ〉様のしたいことですわ」
うーん、僕のしたいことか。
それはアレだな。
僕は〈アコ〉の耳元で「〈アコ〉の胸を触りたい」って頼んでみる。
〈アコ〉は僕の耳に顔を近づけて、「屋根裏部屋に行きましょう」と真っ赤な顔で答えてくれた。
ただ、〈アコ〉の昼食がまだだったので、〈アコ〉が店の賄い飯を食べ終わるまでお茶を飲んで待つことした。
おっぱいを待ちながらお茶を飲むのは、とても乙(おつ)なもんだ。
心が逸(はや)るような、心が沸き立つような、心が気恥ずかしくなるような、独特の味わいがある。
後にご褒美が待っているんだ、決して嫌いな感情じゃない。
舐(な)めるように味わっておこう。
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