第532話 脅威の〈アコ〉越え

 「〈タロ〉様、忘れていらっしゃるようですので、もう一度紹介しますわ。同じ組の〈ヨー〉で私の親友なんです」


 「あ、あ、あの、よろしくお願いします。〈ヨーコラワ・サドカリ〉です。〈アコ〉さんに親友になって貰っています」


 「《ラング伯爵》の〈タロスィト〉だ。よろしくね。〈アコ〉と友達でいてくれてありがとう」


 あっ、この娘は、新入生歓迎舞踏会で一度踊った人だ。

 脅威の〈アコ〉越えおっぱいを、お持ちの主(ぬし)さんだ。


 ドレスの胸の所に、前へ突き出た大きなリボンの装飾があるので、思い出せなかった。

 一番の特徴が隠されていたからだ。


 良く見るとリボンは薄っぺらくて、リボンがでっかく見えるのは胸が吃驚するほど大きいからだ。 

 これほど偉大なおっぱいを忘れるなんて、僕は万死に値するぞ。

 それにしても、リボンで上手く隠していると思う。

 これだけ大きいと、隠したくなる気持ちも良く分かる。


 僕もこの娘のおっぱいから、視線を外すのにかなり苦労しているよ。

 意識して見ないようにしないと、直ぐに目がいってしまう。

 しょうがないので、〈アコ〉と〈クルス〉と〈サトミ〉の胸を順番に凝視することにした。

 許嫁達のおっぱいなら、いくら見ても良いはずだ。


 だけど弊害(へいがい)も出てくる。

 ずっと見ていると、触りたくなってきたんだ。

 だって、プルプルして見えるんだもん。

 隅っこだから、ちょっと触ってみようか。


 「あっ、〈タロ〉様、めっだよ。〈サトミ〉の胸を触ろうとしたでしょう」


 「はぁ、本当に、しょうがない人ですね。このような場所で、触ろうと考えるとは。頭が痛くなります」


 「ふぅー、〈ヨー〉を見ないように、こっちを見たのですね。そこは評価しますわ。でも触るのはここじゃいけません」


 〈ヨー〉は、僕達の会話を聞いて真っ赤になっている。

 あれ、〈ヨー〉のおっぱいを触ろうとはしていないのにな。


 「あ、あ、あの、先ほどの綺麗な方は〈サヤーテ〉先生ですよね」


 「〈ヨー〉そうよ。信じられないと思うけど、本当のことだわ。〈サヤーテ〉先生は、〈サトミ〉ちゃんのお姉さんなのよ」


 「あ、あの、その、〈ガルスィト〉先輩と親しく話されていましたが、そう言うことなのでしょうか」


 「たぶん、そう言うことなんだと思うわ」


 「あぁー、やっぱり」


 どうもこの〈ヨー〉って娘は、近衛隊のエースである〈ガルスィト〉に憧れていたらしいな。

 淡い恋心が〈サヤ〉によって、可哀そうに粉砕されてしまったんだな。

 教え子の思い人を強奪するなんて、なんて酷い先生だ。


 〈サヤ〉は僕の脇腹も含めて、猛烈な自己反省が必要だと思うよ。


 「《ラング伯爵》は、四人も女を侍(はべ)らせて良いご身分だな」


 少し悪酔いしたのか、隅っこに立っていた〈先頭ガタイ〉こと〈バクィラナ〉が僕に絡んできた。

 良いご身分と言っているけど、親は《アソント》公爵だから、そっちの方が身分的には上なんだけどな。


 「はぁ、四人じゃないぞ。三人だ。この胸の大きな娘(こ)は許嫁の友達だよ」


 「えっ、〈タロ〉様、その紹介はどうかと思いますわ」


 〈アコ〉は目を点にして非難してきた。

 どの部分に引っかかったのだろう。

 たぶん大っきいから、おっぱいだと思う。


 「はぁっ、胸」


 〈先頭ガタイ〉、〈ヨー〉の胸を見る。


 「おぉ、確かに」


 〈先頭ガタイ〉は一瞬、コイツは何を言っているんだという顔をしたが、〈ヨー〉の隠されたおっぱいを見て驚愕したようだ。

 初見で男なら、そりゃそうなるよな。


 絡むつもりだったのかも知れないが、唖然と〈ヨー〉の胸を見続けているぞ。

 これはセクシュルハラスメントだよ。

 〈ヨー〉が〈アコ〉の後ろに隠れてしまったぞ。


 「〈タロ〉君、今のお嬢さんを紹介してくれないか」


 はぁー、急に〈タロ〉君って、かなり気味が悪い言い方だ。

 速攻の手の平返しか、コイツは巨乳好きだったのか。

 おっぱいに顔を埋(うず)める願望を持っているに違いない。


 うんうん。

 それは分からないでもない。

 僕も〈アコ〉でやるつもりだ。

 埋まらないと思うが、〈クルス〉と〈サトミ〉でも試してみよう。

 不公平はいけない。


 〈ヨー〉は人見知りが激しいし、おっぱいをガン見されたから既(すで)に怖がっているぞ。

 この状態で紹介してもな。


 「一応紹介するけど、脅(おど)したらいけないよ。《白鶴》に在舎中の〈ヨーコラワ・サドカリ〉嬢だ。確か騎士爵のお家だったと思う」


 「こっちの体格の良いヤツは、《黒鷲》の二年生で、《アソント》公爵の息子さんだよ」


 「初めまして〈ヨーコラワ〉さん、私は〈バクィラナ〉と申します。ぜひ〈バクラ〉とお呼びください」


 「えーっと、あの、その、〈バクラ〉様。私は〈ヨーコラワ〉〈ヨー〉です。初めまして」


 〈ヨー〉は、〈アコ〉の背中から顔だけ出して挨拶をしている。

 初対面でも挨拶程度は出来るんだ。

 この娘もずいぶん成長したな。

 ただこの後、〈先頭ガタイ〉が〈ヨー〉に話しかけても、会話が続かない。

 〈ヨー〉が成長したのは、挨拶だけだったようだ。


 「そうだ。少し待っててください。珍しいお菓子を持ってきます」


 〈先頭ガタイ〉は、控室にお菓子を取りに行ったらしい。

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