第497話 組主導

 「はぁ、それじゃ、班長は〈アル〉と〈ロラ〉と〈フラン〉だ」


 「えぇー、僕は遠慮したいな。軍事的なことには、興味がないよ」


 〈ロラ〉は、選ばれて嬉しそうだ。

 〈アル〉も、満更(まんざら)じゃない感じに見える。

 だけど、僕に振った〈フラン〉が、文句を垂(た)れてやがる。


 「〈フラン〉、僕に言っておいて、どういうことだ。怠(なま)けようとしても、許さないぞ」


 「うぅー、〈タロ〉は、酷いヤツだ」


 お前が、言うなよ。

 でも、顔が良いから、こんなことを言っても、仲間外れになることはないんだ。

 顔が良いヤツは、人生楽勝だな。


 「五月蠅い。諦めろ。それと、《青燕》の方は、良く分からないんだ。自薦(じせん)や推薦(すいせん)が、ないかな」


 《青燕》の学舎生は、四十五人もいるから、とても僕が選べないぞ。

 さすがに自薦はないだろうし、二組が半分入っているから、推薦も厳しそうだな。


 「自薦と推薦は、ないか。それじゃ、組長や役を、やっている人はいるのかな」


 三十人の組なんだから、纏(まと)め役を置いているだろう。


 「三組主導をやっています。〈ラカィサ〉です」


 見た目から賢そうなヤツが、手をあげたな。

 たぶん、学年では三番目に賢いんだろう。

 〈組長〉じゃなくて、〈組主導〉って言うのか。少しカッコいいじゃないか。

 《黒鷲》には、何にもないな。放置されているんだろう。


 「三組主導与力に、任命されています。名前は〈オラィユ〉です」


 「僕も、主導与力です。〈ヤカィム〉といいます」


 この二人は、二組と三組の次点なんだ。

 二組の〈主導〉は、一組の方へ行ったんだな。

 いづれにしても、こいつ等は、学年の十番以内なんだろう。

 キリっとして、自分がエリートだと言う、自身に満ち溢れている感じだ。


 「それじゃ悪いけど、〈ラカ〉は、〈フラン〉の班の副班長をやってくれ。〈オラ〉は、〈アル〉の班の副班長で、〈ヤカ〉は、〈ロラ〉の班だ」


 いきなり省略した名前で呼んだけど、覚えられそうにないから、良いんだ。

 僕は、伯爵で海方面旅団長だから、問題ないだろう。


 《青燕》の三人の副班長は、「はい」と素直の返事をして、使いやすそうだ。


 でも、内心はどうだかな。

 貴族の子弟を、バカにしている気もする。

 まあ、実際バカも多いからな。

 僕は、ちょっぴりエッチなこと以外は、普通だけどな。


 「班長と副班長は、班ごとに距離を空けて立ってくれ。他の人は、ここが良いと思った班の後ろに並んで欲しい」


 周りの友人と、ガヤガヤと話しているな。

 どこの班に行こうか、相談しているんだろう。

 でもな。どうでも良いと思う。本当の戦争じゃないんだから。


 しばらくしたら、皆が一斉に動いて、それぞれ班の後ろに並んだ。


 我が二組の残りのメンバーの、〈ソラ〉と〈ラト〉は、〈フラン〉の班へ並んだようだ。

 何か邪(よこしま)な考えが、あるんじゃないのか。

 この班には、あまり期待したらいけないと思う。


 後二人いる二組の《黒鷲》生は、〈ロラ〉の班に並んでいる。

 確か二人は、宮廷貴族の騎士爵の子弟だから、〈ロラ〉と仲が良いのだろう。


 〈アル〉だけ誰も並んでないな。笑かしてくれるよ。

 「ぷっ」と噴いたら、〈アル〉がこっちを睨(にら)んできたぞ。

 悪気は、たっぷりとあるんだよ。


 《青燕》生も、思ったより上手く人がバラけた。

 《青燕》生の二組が揃(そろ)って、同じ組の〈主導与力〉の班に並んだのが、その原因だ。

 《黒鷲》にはないけど、《青燕》には組の団結があるんだな。


 一組の方を見ると、まだゴタゴタしているようだ。

 班長と副班長を選ぶのに、かなり時間がかかっているらしい。

 どうでも良いのにと思うけど、拘(こだわ)りがある人もいるんだな。


 「早いな。二組は、もう班分けが出来たのか。うーん、それじゃ授業時間一杯、何かしていてくれ」


 僕達のグループは、二組と呼ばれるらしい。

 何の捻(ひね)りも、ないな。

 そのまま過ぎて、反って分かり難いんじゃないかな。


 それと、何かって何だよ。

 適当に時間を、潰せと言うことだろう。

 しょうがないな。疲れることは、したくないな。


 「皆、班長を先頭に、行進の練習をするぞ。ただし、ゆっくりで良いからな」


 僕達二組は、授業が終わるまで、ダラダラと行進を続けた。

 おしゃべりしながらだから、集団お散歩という感じだ。


 授業が終わる頃、一組はやっと班分けが出来たらしい。

 どうして、そんなに時間がかかるのか。

 謎だな。




 授業を終わった後、〈カリナ〉と〈リク〉に、学舎の門へ呼び出された。


 「ご領主様、学舎まで、押しかけてすみません。至急、お伝えしたいことがあるのです」


 〈カリナ〉が、少し難しそうな顔で言ってくる。

 何が、起こったのだろう。心配になるな。


 「どうしたんだ」


 「〈南国果物店〉の周囲を、探っている人がいるのです。ご領主様も、身辺(しんぺん)に、お気をつけください。それと、許嫁様にも、注意して頂きたいのです」


 「おぉ、不審者(ふしんしゃ)が、いるってことか」


 「その通りです」


 「分かった。〈カリナ〉と〈リク〉も、気をつけろよ。もうしていると思うけど。再度、従業員にも、注意喚起(ちゅういかんき)しておいてくれ」


 「分かりました」


 

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