第471話 粘膜

 「ううん、〈タロ〉様。もうダメです。厚いと言っても、布ですよ。音が外に聞こえてしまいます」


 二人が舌を絡ませる、「ピチャ」「ピチャ」っていう音が、気になるんだろう。


 「うん。分かったよ」


 舌を責めるのは諦めて、次の標的はおっぱいだ。

 僕は、スリップの裾の方から、手を入れて、おっぱいに迫った。


 〈クルス〉のおっぱいは、僕の手の平に、ちょっぴり収まりきらない大きさだ。

 前はぴったりだったので、少し大きくなっているな。


 「んんう、〈タロ〉様、ダメと言ったのに」


 「〈クルス〉、少し胸が大きくなっているぞ」


 「もう、〈タロ〉様は。そんなこと知りません」


 おっぱいを揉んでいると、硬い部分が出てきた。嬉しくなってくるな。


 「はぁん、もうこれ以上は、本当にダメです。直ぐ近くに、人がいるのですよ」


 〈クルス〉は僕の胸を押して、手で胸を隠してしまった。


 〈クルス〉の言うことも、もっともである。

 僕も、いつもより気が乗ってこない。

 人並みの羞恥心(しゅうちしん)は持っているんだよ。


 「〈クルス〉の言うことは分かった。もうしないよ」


 「うふふ、理解頂いて嬉しいです。それでは、少しお話をしてから眠りましょう」


 「お話か。そうだ、〈ドレーア〉さんが、話してた。女性が好む治療法って、どういうの」


 「えっ、それですか。話にくいです」


 「ほぉ、難しいことなの」


 「難しくはないのですが。説明するのが、恥かしいのです」


 「はぁ、恥ずかしい治療法なの」


 「ふぅ、薬草蒸しは、粘膜から薬効成分を浸透させるのです。粘膜の方が、より効果的なのですよ」


 粘膜って聞くと、「ヌチャッ」って感じがするな。それとも、「ヌル」「ヌル」か。

 どっちにしても、卑猥(ひわい)な感じになるな。


 「粘膜なの」


 「女性の下半身にある粘膜です。もうこれ以上は言えません」


 「それって、ここなの」


 僕はつい、〈クルス〉のそこを触ったしまった。

 さっきスリップに手を入れたから、たくし上げられて、ショーツ一枚になっていたんだ。

 手を伸ばせば、直ぐそこにあったから、場所を確認するためだったと思う。

 僕には珍しく、エッチなことじゃなく、触ってしまったんだよ。

 知的好奇心ってやつかな。


 「ひぅ、〈タロ〉様」


 〈クルス〉は、変な声を出して、股間を慌てて両手で押さえている。


 「あっ、ごめん。つい」


 「あぁ、ここは触っちゃいけないのです。最後の最後じゃないですか」


 「まだ、下着越しだよ」


 「そうですけど。そこを触られるのは、恥ずかし過ぎます」


 「分かったよ。今は触らないよ」


 「はぁ、今って、どういうことですか」


 「まあ、良いじゃないか。それより、そこの粘膜であっているの」


 「んん、誤魔化してませんか。概(おおむ)ね合っています」


 「概ねって、どういうこと」


 「もう一つの粘膜は、〈タロ〉様にも、あるものです」


 「あっ、そうか。両方なんだ。女性は二つあるから、効果が二倍なんだ」


 「もお、知りません。ランプを消しますよ」


 〈クルス〉は、少し怒った気もするけど、僕の胸に顔を寄せている。

 手は僕の背中に回して、抱き着いている体勢だ。

 こんなので眠れるのだろうか。


 僕は眠れそうにないや。


 僕は〈クルス〉の髪とお尻をなぜながら、〈クルス〉の気持ちを想像してみた。

 同じテントで寝るのだから、キスされて胸を触られるのは、覚悟していたはずだ。

 軽いキスは全く嫌がらなかったし、胸を触るのも、それほど嫌そうじゃなかった。

 音を聞かれるのは、嫌がっていたと思うけど。


 あそこを触っても、すごく怒ってはいなかった。

 〈クルス〉は、僕がしたいなら、恥ずかしがりながらも、最後は許してくれると思う。

 今も抱き着いているし、僕に触られても、嫌がってはいない。


 「〈タロ〉様、ここが硬くなっていますね。辛いのですか」


 〈クルス〉が、下着越しに、僕のを手でさすってきた。


 「うっ、〈クルス〉、今はダメだよ。そっとしておいてよ」


 「そうなのですか。それでは、私のお尻も、そっとしておいてください」


 「お尻を触られると辛いの」


 「うーん、辛いわけではありません。でも、眠れなくなりそうです」


 「分かったよ。今日はもう寝よう」


 僕と〈クルス〉は、互いに手を離したが、抱き合うことは止めなかった。

 お互いに、離れたくない、と思ってしまったんだと思う。


 「うふふ、こんなに抱き着いていたら、眠れそうにありませんね。〈タロ〉様の身体が熱くて、私の身体まで熱くなってしまいます」


 「えっ、それは違うよ。〈クルス〉の身体がとても熱いから、僕にも移ってしまうんだよ」


 「ううん、〈タロ〉様の方が先なんです。それに私は、そんなに熱いですか」


 「うん、「薬草蒸し」で、治療したように熱いよ」


 「んん、それは〈タロ〉様が、熱いのを押し付けているからです」


 「押し付けるのは、ダメなの」


 「んんん、そんな質問には答えません。今度は本当に寝ます」


 〈クルス〉は、僕を抱きしめている手を解(ほど)き、今度は僕の腕を抱きしめてきた。

 そして、柔らかなおっぱいを、僕の腕に押し当てている。


 これは、さっきの僕の質問への答えなのかな。

 僕は、あれこれと考えながら、ゆっくり目を閉じた。


 〈クルス〉と一緒に寝るのが、これで最後というわけじゃない。

 焦る必要は、ないと思う。

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