第424話 ずらす

 「〈タロ〉様、どうぞ私のお尻を叩いてください」


 〈アコ〉が、僕の目の前で変なことを言っている。

 〈クルス〉と〈サトミ〉は、〈サトミ〉の部屋で順番を待っているらしい。


 「〈アコ〉、本当に叩くの」


 〈アコ〉の言い方では、僕がまるで、変態行為を望んでいるかのようだ。

 僕は、まだピユアな童貞なんだぞ。こんなオプションは、まだ早いよ。


 「はい。お願いしますわ。でも、ちゃんと説明してくださいね」


 説明ってなんだ。今回のダメな点は、自分達でも十分理解しているだろう。


 「はぁー、努力してみます」


 〈アコ〉は、スカートを脱いで、ショーツ一枚になった。

 色は定番の赤だ。〈アコ〉は赤色が好きなんだな。それにしても、エロい格好だ。

 上半身は普通に服を着ているのに、下半身は赤い下着一枚だ。

 倒錯(とうさく)的な、光景だと言えるだろう。


 「〈タロ〉様、下着も脱いだ方が良いのでしょうか」


 〈アコ〉は、顔を真っ赤にして、すごいことを言ってくる。


 「えっ、そこまでは良いよ。ずらすだけで良いと思う」


 「はい。指示に従いますわ」


 〈アコ〉は、ショーツをずらそうとしたけど、途中で手が止まっているようだ。

 やはり、お尻を出すのは恥ずかしいのだろう。もう、止めようよ。


 「〈タロ〉様、上手く出来ませんわ。お尻だけずらそうとしても、前も少しずれてしまいます。お尻を全部出したら、前も見えてしまいそうです。どうしますか」


 どうしますか、と聞かれてもな。

 ショーツが、小っちゃくて、ぴっちりとしているから、生地に余分がないのだろう。

 それに僕は、どうやってお尻を叩くのだろう。

 立っている〈アコ〉のお尻を、屈(かが)んで叩くのか。

 叩き難いし、ちょっと情けない格好だな。


 「うーん、そうだな。それじゃ、僕の膝の上に被(かぶ)さってくれるか」


 「こうですか。〈タロ〉様の足に、お腹をつければ良いのですか」


 〈アコ〉が、椅子に座っている僕の太ももの上に、被さってきた。

 後頭部は僕の左手の方にあって、おっぱいは太ももと膝に当たっている。

 巨乳だから、範囲が広いんだ。

 赤いショーツは、僕の右手の位置にある。


 この体勢なら、お尻を存分に見ることが出来る。

 そうじゃない。お尻を思い切り叩くことが出来るだ。

 それも変だな。


 「〈アコ〉、下着をずらすよ」


 「〈タロ〉様の、したいようにしてください」


 ショーツをずらすと、お尻がペロンとむき出しになった。

 いつ見ても大きいな。ムッチリと柔らかそうでもある。重さも相当なものだろう。


 ショーツは、太ももまでめくれているけど、前は大丈夫なんだ。

 裏側だから見えないんだよ。残念な気持ちにはなるが、今はしょうがない。

 もう一つしょうがないことがある。


 〈アコ〉のお尻が目の前で、丸見えになっているから、あそこが大きく硬くなってしまっている。 

 大事なことだから、二回言うけど、大きくだ。

 おっぱいに当たっているから、〈アコ〉も気づいているはずだ。

 気づかないと、言わないでくれよ。


 「ふふふ、〈タロ〉様。疲れはもうありませんね」


 どういう意味だよ。今から、お尻を叩かれるのに、笑っているぞ。


 「〈アコ〉、今回の反省すべき点は、第一に護衛もつけずに、歓楽街へ行ったことだ」


 「はい。分かっています。もう二度としませんわ」


 「よろしい。第二は、僕を疑っているのなら、まず僕に確かめるべきだ。婚約者なんだから、少しは信頼をして欲しい」


 「はい。分かりましたわ。これからは、直ぐに〈タロ〉様に聞きます。だから、〈タロ〉様も、ちゃんと答えてくださいね」


 「はい。ちゃんと答えます」


 うーん、どこまで答えれば良いのだろう。

 他の女性の胸やお尻を見ていました、まで答えるのか。

 〈アコ〉なら、前を歩く女性のどこを見ているかを、聞いてきそうで怖いな。

 止めてよね。


 「〈タロ〉様、もう説明は終わりですか」


 「うん。終わったよ」


 「それでは、お尻を叩いてください」


 〈アコ〉は、身体を固くして、叩かれる衝撃に備えているようだ。

 僕は、覚悟を決めて、〈アコ〉のお尻を叩いた。


 ― パーン ―


 大きめの音を出したけど、力は込めていない。

 そりゃそうでしょう。本気で叩いたら、〈アコ〉のお尻が腫れてしまう。

 これ以上お尻が大きくなったら、大変なことになる。


 手の平をお椀(わん)のようにして、お尻のお肉の厚いところを、手首のスナップを効かせて叩いたんだ。

 今の場合、良い音を出すことが優先事項だと思う。


 「きゃー、〈タロ〉様、痛い」


 「ごめん、痛かった」


 「ううん。それほど痛くはなかったのですが、音で吃驚したのですわ」


 「〈アコ〉のお尻は肉付きが良いから、良い音が出たな」


 「はぁー、〈タロ〉様。それはどういう意味ですか。私のお尻が大き過ぎると言うのですか。酷いですわ」


 〈アコ〉が、首を曲げて僕を睨みつけてくる。お尻が丸出しなのに、こんなことで怒るんだ。


 「はへぇ、どうして怒るんだよ。僕は〈アコ〉のお尻が、大好きなんだ」


 「肉付きが、良いと言われましたわ」


 「それが良いんだよ。ずっと触っていたいほどだ」


 僕は〈アコ〉のお尻を撫で回した。

 目の前に無防備に晒されているんだ。触り放題じゃないか。そりゃ触るよ。

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