第411話 誘惑

 〈クルス〉を《赤鳩》に迎えに行くと、知らない《赤鳩》生に呼び止められた。


 「虫、虫なんです。下着の中に虫が入ったんです。取って頂けませんか」


 涙目になった《赤鳩》生が、制服の胸元を大きく開けて、僕に頼んできた。

 胸元を覗くと、スリップから、半分くらいおっぱいが見えているぞ。

 先っちょも、もうちょっとで見えそうだ。この《赤鳩》生は、どんなスリップを着ているんだ。

 セクシーランジェリーじゃないのか。


 ナイスチョイスだと思う。


 僕は、少し緩んだ顔をしていたんだろう。少しは主観だ。

 いつの間にか、〈クルス〉が横にきて、僕を少し怖い目で見ている。

 ふぅん、怒らないでよ。


 「虫ですか。私が取ってあげます」


 〈クルス〉が、《赤鳩》生の胸に手を突っ込んで、ゴソゴソしている。

 おっぱいを揉んでいるのだろう。これも僕の主観だ。


 おぉ、女の娘同士の絡(から)みじゃないか。これが「百合」と、言われるものなんだろうか。

 いや、《赤鳩》なんだろう。意味は分からないけど、ノリだ。これは、間違った主観だと思う。


 「ちょっと、触らないでよ。あなたには頼んでいません」


 「虫が取れれば、誰でも良いのではないですか。ほら、取れましたよ」


 「ギャー、虫。本当にいたの」


 《赤鳩》生は、〈クルス〉が摘(つ)まんでいる、てんとう虫を見るなり、悲鳴をあげながら逃げていった。

 あれ、虫を取って貰ったのに、お礼も言わないなんて礼儀がなっていないな。


 「〈クルス〉、今のは誰なんだ」


 「三年生の人です。見え透(す)いた色仕掛けですね」


 「へぇー、そうなの。でも、ちゃんと、てんとう虫がいたよ」


 「うふふ、あれは私がさっき、門にいたのを捕まえたのです。下着の中に虫が入ったのは、真っ赤な嘘です」


 「ほぇ、嘘をついてたのか」


 「はぁ、〈タロ〉様は、女性に甘過ぎるのではないですか。そんなことを言っていたら、騙(だま)されてしまいますよ」


 「気をつけます」


 後で考えれば、嘘だと分かるけど、おっぱいが少しでも目に入ると難しい。

 ラッキーおっぱいは、大変貴重なものだ。生涯に二度あれば良い方だと思う。

 つい目で追いかけてしまうのは、しょうがないことだ。


 屋根裏部屋について、部屋着に着替えていたら、〈クルス〉が手招きをしてきた。

 〈クルス〉は、着替えている途中で、スリップ一枚だ。

 〈クルス〉には珍しく、赤いショーツをはいている。


 「〈タロ〉様、お願いがあるのです。背中が痒(かゆ)いので、かいて貰えませんか」


 「おっ、良いよ。この辺りなの」


 僕がスリップの裾から、手を入れて背中の真中をかき出した。

 スリップがまくれ上がって、赤いショーツがむき出しだ。

 あぁ、背中じゃなくて、お尻をかきたいな。


 「んん、〈タロ〉様。今度は、背中じゃなくて胸の方が痒いです」


 「おっ、おおお。それじゃ胸をかくよ」


 僕は、両手を背中から回して、おっぱいを爪でススっとかいた。


 「はぅん、〈タロ〉様。そんな触り方はいけないです。身体の内側が、ゾクゾクして変になります」


 〈クルス〉はスリップの上から、動かせないように、僕の手を押さえてきた。

 僕の手は、〈クルス〉のおっぱいを覆(おお)ったまま、固定されている。

 動かせなくなったので、爪で先っちょをカリカリするしかないな。


 「いゃー、そんなところを、カリカリしないで」


 「でも痒いんだろう」


 カリカリしていると、少し硬くなってきた気がする。


 「はぁん、そこは痒くありません。もう止めてください」


 〈クルス〉は、僕の手から逃(のが)れようと、身体を捩(よじ)っている。

 僕が構わず、さらにカリカリすると、泣きそうな顔を向けてきた。


 「はぁう、もう意地悪しないで。んんう、胸を虐めるのはもう止めて、私を抱きしめてください」


 こう言われたら、抱きしめないわけには、いかないな。

 僕はしぶしぶおっぱいから、手を離して、〈クルス〉を抱きしめた。


 「うふふ、これが良いです。私の言うことを、聞いてくれて嬉しいです」


 〈クルス〉は、満面の笑みで、僕の背中の方へ手を回している。

 僕は〈クルス〉にキスをして、もっと強く抱きしめた。


 「うふふ、これも良いですね。私のして欲しいことを、分かって頂いてとても幸せです」


 それからしばらく、キスを続けた。赤いショーツに包まれた、お尻を触りながらだ。

 プニュってとして触り心地が、最高だと思う。


 「ふはぁ、〈タロ〉様。今は、この位で良いでしょう。〈タロ〉様と、お話もしたいのです」


 〈クルス〉は、微笑みながら僕の胸を押して、部屋着に着替え始める。

 〈クルス〉の言うとおり、二人でいるのに、話をしないのも淋しいな。


 「分かった。僕も〈クルス〉と、話がしたいと思っているんだ」


 「うふふ、同じ気持ちなんですね」


 同じ、と言ってもな。特別なことのように、〈クルス〉は言うけど、ごく普通のことだと思う。

 でも、まあ良いか。指摘するほどのことじゃない。


 

 〈クルス〉は、学舎での出来事を話してくれたけど、最後の方は僕への戒(いまし)めばかりになっていた。

 《赤鳩》では、大蜘蛛を討伐したことが、大きな噂になっているらしい。

 学舎違うこともあって、詳細が不明のまま、僕の活躍だけが注目されているようだ。


 「〈タロ〉様は、多くの女性から狙われています。私はとても心配なのです」


 「えっ、僕が狙われているの。どんな心配なの」


 「決まっています。〈タロ〉様が、誘惑されないかですよ」


 「誘惑って」

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