第393話 「止めて」

 僕はくすぐった過ぎて、身体を海老反りにして、悶え苦しんだ。

 これは、立派な拷問だぞ。


 「止めて」と僕が懇願しても、〈アコ〉と〈クルス〉は止めてくれなかった。

 「何を言ってるのですか」と、冷たい目で僕を睨みつけてくる。

 〈サトミ〉も、「やり難いな」と不満顔だ。いったい僕が、何をしたって言うんだ。

 これは完全に、集団暴行事件じゃないのか。


 僕が悶えているから、腰のタオルは、いつの間にかはだけてしまった。

 僕のあそこは、白日の下に晒されている。フルチンだ。


 「〈タロ〉様、そこも洗って欲しいの」


 〈サトミ〉が、少し躊躇(ちゅうちょ)して聞いてきた。

 あそこって、どこだ。ここか。こかんか。ここはあかん。


 「えっ、〈サトミ〉。そこはダメ」


 「でも、皮に泥がありそうだよ」


 皮って言うなよ。


 〈サトミ〉は素直な良い娘だけど、率直過ぎるのはいけない。

 僕の心の防御ポイントが、ガリガリと音をたてて消えていく。


 〈アコ〉と〈クルス〉が、足を洗うのを中止しているようだ。

 くすぐったく、なくなったのは有難い。

 でも、〈アコ〉と〈クルス〉と〈サトミ〉の視線が、僕のあそこに突き刺さっている。


 痛いような鋭さを持った目だ。

 このただならぬ感じは、あそこの性能を鑑定しているに違いない。 

 僕の性能が、丸裸にされようとしている。しょぼいことが、バレてしまう。


 僕は慌てて、タオルで隠そうと試みた。

 しかし、それは間に合わない。信じられないほど、タオルが遠くに離れていたんだ。

 誰かが、動かしたに違いない。僕を追い詰めようとする、犯人は誰だ。


 犯人捜しをしている間に、〈サトミ〉が、僕のあそこをちょこんと触った。


 「うひゃ」


 いやー、何てことを。止めて。何をするんだ、〈サトミ〉。

 そこは、極めてデリケートなんだよ。気軽に触って、良いものじゃないんだ。

 合意もしてないのに、乱暴過ぎるよ。


 僕はあまりの衝撃に、口を「あわ」「あわ」とさせて、ビクンと震えた。

 不意打ちだったんだ。心の準備が、まるで出来ていなかったんだよ。


 「〈タロ〉様のここって、不思議だね。ピクピクしてるよ」


 「ほんとですわ。ここを見るのは二回目ですけど、前とは違っていますわ」


 〈アコ〉にも、ちょこんと触られて、僕はビクンとまた震えた。


 「大変興味深いです。私も触ってみますね」


 〈クルス〉にまで、触られた。僕はピクンピクン震えて、もう涙目だ。


 興味本位で、触っているのか。僕のあそこは、自由研究の題材じゃないぞ。

 大切に守り育てるものなんだぞ。弱弱しい見た目をしているだろう。


 「ちょっと、酷いじゃないか。そこは敏感なんだぞ。恥ずかしいことは、止めてくれよ」


 「はぁー、良くそのお口で言いますわ。散々、私に恥ずかしいことをしたくせに」


 「全く、そのとおりです。〈タロ〉様は、私が止めてと言っても、止めてくれなかったのですよ。忘れたとは言わせません」


 「ほんとにそうだよ。〈サトミ〉の胸とお尻を一杯触ったよね」


 「そ、それは。好きな娘は、触りたくなるんだよ」


 「ふふ、それじゃ私も好きなので、触って良いですね」


 「うふふ、私も〈タロ〉様が好きですよ」


 「〈サトミ〉は、大好きだから、一杯触れるね」


 「えぇー、ちょっと待ってよ。これ以上触られたら、マズイことになっちゃうよ。もう勘弁してください」


 「ふふふ、しょうがありませんわ」


 「うふふ、虐めるのは、もう止めてあげますね」


 「あはぁ、〈タロ〉様、これ位のことで泣かないでよ」


 僕は涙を堪えて、股間を両手で守った。これ以上、弄(いじ)られたら、大爆発してしまう。

 それだけは、どうしても避けたかったんだ。

 あそこを玩具のように触られて、意思に反していくのは、あまりにも悲しい出来事だ。

 もっと、僕に尊厳を与えてくれよ。


 それにしても、許嫁達は、いったいどうなってしまったのだろう。

 あまりにも、身体を触り過ぎた反動なのか。それとも、親密さが頂点近くに達したのか。

 どちらにしても、慣れって怖いものだ。羞恥心が、かなり薄れてしまった感じがする。

 僕は三人と、これからどう接したら良いのだろう。すごく困惑するよ。


 僕が思い悩んでいると、三人がひそひそと内緒話を始めた。

 ただ、お風呂は、とても反響するので、内容が殆ど聞こえてくる。


 〈アコ〉と〈クルス〉が、「大きいね」「あんなになるの」と小声で話している。

 〈サトミ〉も、「ちょっと怖いね」と小さく頷(うな)ずいた。


 これを聞いて、僕は一気に有頂天だ。思いがけない賛辞に、身体中から喜びが沸き起こる。

 交感神経と副交感神経が、沸騰するぞ。


 「接し方で困惑」、何のこと。おっぱいも、お尻も揉んで、揉んで、揉みまくれば良いんだ。

 前から知ってたけど、やっぱり三人は最高だ。僕の素晴らしい許嫁達だ。

 神様、出会いに感謝します。神様印のマッチングアプリは、神がかっている。


 僕は跳び上がりながら、お湯で泡を流した。それだけ、嬉しかったんだ。

 嬉しさの最上級の表現なんだ。どうか分かって下さい。


 それなのに、三人は「あー」って溜息をつき、僕の「ジャンピングお湯流し」をジト目で見ていた。

 お腹にピタピタ当たっている、あそこも見ている。


 とても不思議なことに、呆れているような微妙な顔付だ。

 だけど今の僕は、とっても幸福だから、少しも気にならない。どんな反応でも平気さ。


 お湯で透けた、白と赤と青のショーツも、上下運動をしている。

 いつもなら、ジャンプを止めて、三色をじっくりと観察するところだ。


 ただ今は、ジャンプが止まらない。

 一つの重い悩みが、軽くなった瞬間なんだ。身体も軽いのだ。


 上下に躍動する、白と赤と青も、乙なもんだと思う。

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